150.休暇はレナン湖で
俺は湖畔に置いたツリーハウスのテラスから湖を見ている。季節はやっと初夏。まだ寒いが、ここは温室だ。
テラスに屋根を付けて透明な膜を下ろしている。陽がさすとぽかぽかする。
子供たちはリクやイナリたちと外を走り回っている。念の為、各自に結界付き。万が一湖に落ちても大丈夫だ。
両隣にはルキとロキ。穏やかな時間だ。
休日に合わせて王都の屋敷からモスシティへ向かい、まずはお父様たちに会った。
お母様は泣きながら俺を抱きしめ、セシア兄様も頷きながら何度も良かったと言う。そしてお父様が号泣していた。意外だ。
そんなこんなはありつつも、新しいハンバーグを振る舞うとみんな泣き笑いの顔で食べた。
なんか本当の家族みたいでほっこりした。本当に有難い。で、一泊して惜しまれながらレイラシティに向かった。
ニア兄様には羽ペンを10本渡したぞ!
レイラシティに着くとシュプール商会で布を買った。レナン湖までは近いので、泊まらずに出発して今だ。
俺は子供たちを見ながらデザインのイメージを詳細に紙に描く。
ルキとロキは俺の色を差し色に、俺には紫を差し色に。セイは…まぁ青系統で纏めたらいいか。
だいたい描き終えたな。
俺の手元を覗き込んだ2人は
「素敵」「カッコいい」
「俺のルキとロキが着ればなんでもカッコイイだろ!こんなにきれいなんだから」
「もう」「ズルい」
相変わらず可愛いらしい反応をする。
片マントのスケッチもして、と。やっぱりカッチリなトレンチ風かな。で、俺はショートトレンチ風だ。色は濃紺で、裏地にはエンジと紺のストライプ。
俺はベージュで内側には同じエンジと紺のストライプだ。
ボタンには拘ろう。よし、ラフ画を描いた。
春だし少し艶のある生地にして、と。まだ肌寒い日もあるから、インナー付きにしよう。もちろん、リクの毛を使う。
よしよし、いい感じだ。
おっ、そろそろお昼ご飯の用意だな。
タウロスも来ているから、厨房に向かう。2人で作れば早い。
「カスミ坊ちゃん、お昼ご飯ですな」
「うん、作ってくれた?」
「はい、言われた通りに…」
オーブンから取り出したそれは、うん、いい感じだ。
「じゃあ後はベーコンを焼いて…オニオン揚げは…あるね。フライドポテトも…あるね」
2人でさっさと作ってお皿に盛った。ふう、やり切ったぞ!
もちろん、味見は欠かせない!
「味見だな?」
「はい!」
4分の1に切ってかぶり付く。美味い!最高だよ。チェダーチーズがいい感じだ。
タウロスは残りを食べて
「いや、本当に美味しいですな…」
ふふふっだよね?
いい匂いに釣られてみんながツリーハウスの食堂に集まって来た。
「腹減った」「いい匂い」「すぐ食べる」
子供か!?
お皿に乗ったものを見てロキが不思議そうな顔をする。ちゃんとカトラリーもあるぞ!
「これな、かぶり付くんだ!こうっ」
ガブリッと。おぉ、美味い!味見はしたが、やはりこのサイズだよな。
みんなも食べ始める。
生粋の貴族であるルキとロキは戸惑っているか。席を立つとハンバーガーを手に持ってロキの口元に運ぶ。
「こう持って、ほら口を大きく開けて…」
「あーん…」
恥ずかしそうに目を伏せる。
カプリッ…
目を開いて俺を見る。もぐもぐしてるな。
「美味しい…」
…でおい、なんでまた口開けてんだよ!
仕方ない、その可愛らしい口にハンバーガーをまた運ぶ。もぐもぐ可愛いぞ、おい。ツンツンされる。振り返るとルキだ。俺とハンバーガーを見る。あーこっちもか…ルキにハンバーガーを食べさせると次はロキだ。
せっせとお世話する。
するとまたツンツンされる。振り返ると…だよな?
唯一ハンバーガーが食べられるルイスだ。はいはい、お口開けて…あーんと。
ほっぺに手を当てて喜ぶ。可愛いな、もう。他の子はまだ柔らかいじゃがいもと肉団子だ。
鼻を膨らませながら必死にもぐもぐ。こっちも可愛いぞ!
やっと自分の分を食べ始める。うん、このガツンと肉はお高いハンバーガー屋さんの味だ。フライドポテトも美味い!次はハンバーガーチェーン風のアレにするかな。
たまにあの柔らかいハンバーグも食いたくなる。
細いフライドポテトもな!
食べ終わると子供たちはお昼寝タイムだ。俺は衣装の作成に亜空間に行くから、そこはルキとロキと…リクと白玉、イナリにコハクに任せる。
ふかふかともふもふともさもさに囲まれたらすぐに眠れるからな。
「子供たちをよろしくな!」
ルキとロキに声をかけて亜空間に入った。
ふぅ、ここは緑が濃いな。
深呼吸してから家に入る。
自分の部屋に入ると作業机を作った。
買った布を取り出して、まずは染色だな。鮮やかな青い布は藍で染める。本当はすごくたくさんの工程が必要な藍染。俺は時短アンド手抜きでちゃっちゃとな。具現化万歳!
程よく濃い色に染まる。
セイの服には銀糸でピンストライプを、ルキとロキにはウインドウペン風にやはり銀糸で模様を付ける。
後は裁断と縫製。仮縫いで形を決めると次は裏地。こっちはエンジと紺色でストライプに。染色なので、具現化で…ほいっ。
裁断すると、仮縫いの表地と合わせて後はひたすら縫製…。ミシンとか使えないからちくちく手縫い。
肩が凝るので、休憩を挟みつつ…形にしていく。
ふう…だいぶ進んだか。時間遅延にしてるから、作業に入ってから…えっ?
ありゃ、どうりで腹が減った訳だ。
すでにぶっ通しで10時間も作業していた。一旦戻るか。
チーズとかつまみながらやってたが、そりゃ腹も減るわな。
シュン
自分の部屋に戻って倒れるようにベッドに転んだ。
「…ミ、…スミ…」
ん、眠い…。
「カスミ…」
体をゆすられる。ん…もう少し寝る…
むにゅっ
ん…?
目を開ける。どわっ…びっくりした。ルキか?目の前にきれいな顔がドアップだ。ぼやけるほど近い。
「もう、起きて…夕食だよ」
背中に手を当てると抱き起こされる。ボーッとする。
俺の顔を覗き込んだルキが
「抱っこする?」
いや、流石にそれは。立とうとしてふらついた。
…恥ずかしいぞ?
「嬉しいけど、無理はダメ。カスミはまだこんなに細い」
まぁだよな…気を付ける。
食堂に入ると…
なんかいつもと違う、か?
みんなが一斉に俺を見ると
「「「「お誕生日おめでとう!!!」」」」
へっ…?
「やっぱり忘れてる」
「だと思った」
「カスミ16才」「おめでとう…」
「「今までもこれからも大好きだよ!!」」
そうか、今日は3月3日か…すっかり忘れてた。俺の誕生日だ。
「きっとお忘れだと思って…腕によりをかけて、作りました!」
タウロスとヒルガ、クリスにトーカ、リグが料理を運んでくる。
確かに豪華だ。
それは和食だった。
白いごはん、お刺身、天ぷら、お漬物、青菜のおひたしに煮物、味噌汁。
まさかの純和食。俺は泣きそうになる。
バンッ
扉が開く。
「はぁはぁ、間に合った!」
「ふぅ、ギリギリだな…」
そこにいたのはセイとカゲツだ。
2人は呼吸を整えると
「カスミ、誕生日おめでとう」
「カスミ、16才だな、おめでとう」
そう言ってくれた。兄ちゃん…流石に堪えられなかった。俺は兄ちゃんに抱きついて泣いた。
「兄ちゃん、あ、ありがとう…ぐすっ」
すると横からセイが、後ろから双子が抱きついて来た。こちらの世界で、大切な人と出会って…そして今がある。その幸せを噛み締めた俺だった。
その後は夕食を堪能したのだが、兄ちゃんが大変だった。白いご飯に感動し、刺身に歓喜、天ぷらで泣いて味噌汁で号泣した。
だよな?分かる…それほどなんだよな。転生の兄ちゃんとは違うけどな、やっぱり恋しいよな。
その夜はもちろん、酒だ!
純米酒がちょうど出来上がってな?試飲会も兼ねて。いや、美味い。芳醇な香りがして、飲めば喉の奥からじわじわと熱くなる。
「これはヤバいな」
「美味しい」「止まらない」
くぴくぴ飲む双子には
「おい、結構強いんだから気を付けろ!」
その後カオスなことになったのは…まぁ想像通りだった。
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