142.感動の再会
「兄ちゃん、ぐすっ、気がつかなくてごめん。魔力枯渇だな」
俺は身体を起こすと青ざめて震える兄ちゃんを見た。
リグを使うのは不自然過ぎるし。
(魔力超回復スキルを具現化…)
ふわっと光ると白い髪に緑の目の小さな子がいた。白い服に白いパンツ、腰に緑のサッシュ。パタパタする羽が可愛い。
(ご主人様ーよろしくなの)
俺は指で小さな頭を撫でる。
(兄ちゃんの魔力を回復させてくれ)
(はぁいなの)
ふわりと兄ちゃんの頭を上を回ると白く光った。
目をパチパチさせた兄ちゃんは
「カスミ…魔力が」
やっぱりスキルは見えていないようだ。
(ご主人様、名前欲しいの)
回復は英語でリカバリー。リカは流石に人形みたいだしな。リリーだな。
(リリー!)
嬉しそうだ。
(リリーを見える化)
ふわんと光って、顕現したようだ。俺には初めから見えてるからな。
「えっ、えっ…カスミこの子は妖精か?」
「違うんだが、まぁそんな感じだ。兄ちゃんの魔力を回復させた」
ふよふよ飛ぶリリーを見て兄ちゃんは手のひらを出す。
そこに止まったリリーをそっと指で撫でるとリリーは嬉しそうに兄ちゃんの指に抱き付いた。兄ちゃんの顔が真っ赤になる。
こんなちびっちゃい子に照れるのか?
「か、可愛い…どことなくカスミに似てるな」
そうなのか?
クリスもトーカもリグも、他から見るとなんとなく俺に似てるみたいだ。パーツは似てないんだけどな。
クリスは大きな目だし、トーカは俺より斜に構えた感じだしリグはそもそも女だし。
リリーもちまっこいおっぱいがあるから女形だな。
ツンツンしたら空気砲で殴られた。
「兄ちゃん、ひとまず腹減った。飯食おう」
兄ちゃんは困ったように
「俺は携帯食しか無いんだ」
俺は胸を張って
「大丈夫だぞ、沢山ある」
その後はちょっと大変だった。
俺が出したトルティーヤもどきを食べて感動し、コーンスープを飲んで泣き、クレープで号泣した。
俺に抱き付いてわんわん泣く兄ちゃんはなんか小さな弟みたいで、その髪の毛を梳きながらずっと抱きしめていた。
やっと泣き止むと
「俺、騎士やめてカスミの護衛になる」
笑ってしまった。
「簡単にやめられないだろ?それに王族の血を引いてるんだから」
「王位の継承権は持ってないし、俺は単なる騎士爵だ。
今回のことでブランを守ってケガをして引退って流れがベストだな。そうしたら婚約の打診も無くなるだろ」
「そうかもだけど、上級ポーションで治せんじゃないのか?」
「ケガはな。死ぬようなケガをすると、精神的に続けられなくなることが多いんだよ」
「覚えてるのか?」
俺の頬を撫でながら
「カスミが俺を必死に守ってくれたことはな」
そうか、なら
「痛みもか?」
「そうだな、痛くて治って痛くて治って…最後は体が引きちぎれるかと思った。そこで気を失ったな」
兄ちゃんは分かってたのか。
「カスミが弟じゃなくても、何も言わないさ。カスミだって死にかけただろ?」
それから兄ちゃんには転移してからのことを話しした。泣きながら、時に笑いながら。静かに聞いてくれた。
結婚もして子供がいると聞いて流石に驚いていたが
「会いたいな…」
嬉しそうに笑った。
兄ちゃんと離れたく無い。ならばリリーを、いや早まるな。兄ちゃんだって色々考えてるだろうし。
あ、ルキとロキに連絡しないと。
「兄ちゃん少し待っててくれ」
テントの外に出る。
(ルキ、ロキ…聞こえるか?)
(カスミ?!)(カスミ…良かった、ぐすっ心配した)
(ごめん、ちょっと疲れてて寝てた)
(ケガは?)
(少しだけだ)
(本当に?)
(…少しだけ)
(…戻ったらお仕置き)(覚悟して)
(心配かけてごめん)
(分かってるなら無事に戻って)
(分かった。しばらく動けなさそうだが、また連絡する)
(1人じゃ無いって聞いた)(大丈夫な人?)
(それは大丈夫だ。安心してくれ)
(待ってる)(早く帰って来て)
(そうだな、大切な2人のそばに早く戻らないとな)
(…もう)(…もう)
(可愛いな、また連絡するぞ!)
よし、取り敢えず大丈夫だろう。あの2人が暴走すると何するか分からんからな。
テントに戻る。
「兄ちゃん?」
床に倒れていた。
「兄ちゃん…」
「ふう、大丈夫だ。魔力酔いだな。ここは魔素が濃い。ふう…」
どうしたら?
広辞苑をカバンから出して広げる。
―魔力酔い 魔素の濃い場所で感じる酔ったような状態。強い魔素に晒され続けると最終的には神経が破壊される―
それは…せっかく再会出来たのに。どこかに移動したら?
(ここ自体が魔素が濃いので意味がない)
そんな。対処法は?なんで俺は大丈夫なんだ。
(魔力耐性が強いからだな)
―魔力酔い対処法 強い魔力を循環させる―
魔力循環は魔石で出来たな。
―魔力循環 粘膜の接触または魔石から取り込む―
なら魔石だな。
(強い魔力酔いには魔石からだと時間がかかる。粘膜の接触がいい)
う、これは仕方ない。蹲る兄ちゃんを簡易ベットに横たえる。
「兄ちゃん、その…このままだと危ないから俺に任せてくれ」
苦しいのに笑って頼むと言った。やっぱり兄ちゃんはこんな時でも兄ちゃんだ。
俺は兄ちゃんのおでこにキスをしながら服を脱がせた。自分も脱ぐと身体をピタリと触れ合わせる。
「兄ちゃん…」
「カゲツと、兄ちゃんは、背徳感が、ヤバい」
こんな時なのに、全く。苦しそうに俺の髪の撫でる。
「カゲツ…」
「カスミ…」
どれくらいそうしていたか、どうやら寝ていたらしい。
優しく髪の撫でる手に目を覚ました。
「カスミ?」
「兄ちゃん?」
「カゲツだ、くすっありがとうな。なんか変な感じだな」
照れくさそうな兄ちゃんに目を開ければ…確かに。
「体調は?」
「万全だな。カスミ、ありがとう。こんなことをさせて済まなかった」
俺は首を振ると
「役得だ」
と言えば一瞬ぽかんとしてから
「あははっカスミは全く…」
髪の毛をくしゃりと撫でられた。
「起きるか?」
なんとなく恥ずかしくて、いそいそと起き上がって服を着ると兄ちゃんが見ていた。
「何見てんだよ!」
「いや、お前ほっそいな…」
「色々あって痩せたんだ。なかなか戻らなくてな」
「そうか」
兄ちゃんも服を着る。その身体はとても引き締まっていてカッコよかった。体型的にはセイみたいだ。
「腹減ったな…」
あぁ、俺も減ったな。魔力の受け渡しは体力を使うんだ。
「しかし…魔力を貰うのはなんて言うか…エロいな」
俺はセイからもらった時は覚えてないから分からないんだ。
「性的なことをしてる気分になるらしいな」
顔を赤らめるのはやめてくれ。俺も居た堪れない。
「飯作る!」
気分を変えて言う。ここはやっぱり海鮮丼か?いやうなぎか…。うん、両方だな。
テントの外に出て台を出すと手早く刺身をカット。ご飯は炊いて常備しているのを丼にいれる。
その上に刺身を並べて海苔を散らして醤油をかけた。
うなぎは焼いたものを出して、うな丼だ。
味噌汁と漬物を添えたら出来上がりだ。
兄ちゃんはこぼれ落ちそうなほど目を開いて見ていた。
それから
「カスミ、これは…」
「海鮮丼とうな丼だ!さぁ食べよう」
俺用に作った箸を添えれば兄ちゃんは恐々と刺身を口にする。
「!!」
そこからは早かった。バクバクと食べる。その目からはとめどなく涙が溢れていた。
「美味い、な…ぐすっ」
海鮮丼と食べ終わると次はうな丼だ。こちらも兄ちゃんの口に吸い込まれていく。
じっと見てたからか
「カスミも食えよ」
頷いて食べる。うん、美味いな。俺は少しだけでいいが、兄ちゃんが切なそうに丼を眺めているのでおかわりを出したらまた猛然と食べ出した。
「はぁ、美味かった。俺はもうカスミに一生ついて行くぞ!」
キリッとトンデモ発言だ。
「残念だが既に結婚しているぞ」
と言えば朗らかに笑って
「2番目でもいいぞ!」
既に2人いるわ。
「残念だが双子と結婚したな」
「むっなら3番目か?」
なんで俺と結婚すること前提なんだよ。
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