136.休日2
亜空間で双子によろしくされて、少し眠ったようだ。目を覚ますと珍しく双子が目覚めていて、俺の顔を見ていた。なんか恥ずかしいぞ?
ぐぅ
腹が鳴った。今日は2回も荒ぶって魔法連発したからかな…その後にもまぁな、頑張ったし。
「くすっ凄い音がした」「した」
「腹減った…」
でもなんかこの温もりを手放したくなくて、ルキにすりすりする。
「可愛いけど、ダメ」「また後で…」
優しく微笑まれた。まだやるの?
触り…おうふっ。
「欲しいの?」「今がいい?」
違う、手が当たっただけだ。勇ましかった…でやっぱり
「夫婦は仲良しがいいからね」
「溜めるのはダメなんだよね」
両側から目を潤ませた双子に迫られて…はい、また頑張ったぞ!
腹減ってヘロヘロになって、先に戻っていたセイとクリス、リグに呆れられた。
「わざとじゃ無いのが不思議なほどルキ様とロキ様を煽りまくりますね…」
「むしろ的確に煽りに入ってるよな」
「ある意味天才ですね、煽りの」
口々に言われた。
ヒルガが夕食が出来たと呼びに来てくれた。助かった。マジで腹減った。
ルキとロキに挟まれて食堂に向かう。
すでに前菜とスープは用意されていた。
ぐぅ
また腹が鳴った。
ふぅ、食った。俺にしては珍しいくらい食べた。
腹がぱんぱんだ。あれだけ食べてるのにセイも双子も腹が膨れない不思議。
ソファに座ったセイににじり寄り、腹を撫でる。
ペタンとしてる。何処に行ったよ?夕食は。
「カ、カスミ…」
セイの顔を見たら真っ赤だった。
「どうした、疲れたか?」
顔を覗き込むとさらに赤くなった。
「こほん、主。座った状態でお腹をさするのは…よろしく無いかと」
セイの顔を見て腹を見て顔を見る。
パッと手を離した。なんかセイとそっちの欲があまりにも結び付かなくて。
「ふぅ、カスミは本当に。私にだって欲くらいあるぞ!」
確かに、一緒に寝た朝とかはまぁアレだがそれは単なる体の構造だからな。と思っていたが、そうかあるのか。
マジマジと見つめたら
「ダメ」
ロキに拉致られた。
「主はルキ様とロキ様にしか反応しませんが、それは珍しいんですよ。年頃なので、本来なら意識とは関係なく反応するんですが…」
「私の時も…凄く頑張ってしたって感じでしたし。本当にお二人以外には無反応ですよね」
リグにも言われた。
俺ってディスられてる?草食系は人気ないのか?
「それでいい」「僕たちも同じ」
そうなのだ、双子もどうやら俺が絡まないと反応しない。なんだろうな、これ。
「セイは誰にでも発情するのか?」
と聞けば
「っ誰にでもはないぞ!あぁルキとロキには反応しないからな」
なんか深掘りしちゃいけない気がする。ルキとロキから冷気が漂って来たから。
雰囲気を変えるためにコーヒーを淹れて飲む。
ふう、いい香りで落ち着く。
「ベルナ商会のコーヒーも順調に売れてるようだな」
当初は豆を売ろうとしたんだが、諸々の手間とかを考えて挽いた粉を販売している。
入れ物は瓶だから、少量ずつの販売だ。フィルターも作ったものを売っている。フィルターをセットする道具もだ。
道具は外注ではなく、やはり理由があって引退した鍛治師を雇った。仕事があるだけ有難いと頑張ってくれている。フィルターは木から作るが、こちらは採取と皮の剥ぎ取りは冒険者ギルドに、繊維をほぐすところからは自前の工房でやっている。
外部に流出しない為の措置だ。
そんなこんなで商会はとても順調だ。
そんな話をセイから聞き、リヴ兄様の愚痴をルキとロキから聞いた。
子供たちは夕食を食べてすぐに寝たようだ。今日はアマランとトーカが一緒に寝てくれている。
コーヒーの後にヒルガが淹れてくれた紅茶を見てふと、酒が飲みたいなと思った。セイもなんか紅茶を見つめている。
心得ているヒルガがそっと酒を取り出した。
「おほん、ほどほどに…」
そう言って退がった。
セイが
「大会も終わったからな?」
言い訳のように言った。
「だよな?慰労会だ」
「うん」「いいね」
クリスたちも「そうですね」
と言ったのでセイが酒の蓋を開ける。芳醇な香りが立つ。ゴクリ、誰かの喉が鳴る。
クリスが全員の紅茶にブランデーを落とす。ふわりと香りが漂った。
こくん…美味い!口の中に爽やかな香りが広がる。そして喉の奥が熱くなる。
紅茶のふくよかな香りと相まって美味だ。また一口…。
ん、あれ?俺、飲んだ…か。何故かカップが空だ。無くなってるぞ。
「もう無いな」
「溶けた」「消えた」
「…無い」
「淹れなおしましょう!」
クリスが言う。全員が高速で頷いた。
芳醇な香りが…
それをお酒がなくなるまで繰り返した懲りない面々。
目が覚めた。う、重い。目を開けるとセイのきれいな顔が目の前にあった。ん、何が?
取り敢えず、自分の体に触る。ほっ服を着てた。よし、セーフだ!
実際はギリギリアウトだったが、クリスとトーカがフラフラしながらもカスミに服を着せただけだった。
ナニがあったのか、誰も語らなかったが。そして幸運なことに双子は先に寝ていた。
セイから抜け出して(ガッチリ抱き付かれていた)自分で回帰をすると(リグはアマランと抱き合ってまだ寝ていた)リクを走らせに自室に戻った。
いや、ナニがあったんだろうな?クリスがロキと、ルキはウルグに抱きついて寝ていたが。
ちなみにリクたちは夕食後、俺の部屋で寛いでいるから宴会には参加していない。
まだ早い時間、朝日を浴びて走り回って満足したリクにもたれて座る。膝にはイナリとコハクだ。カラスとスズメにトンビは近くをココココ言いながら歩いている。
気持ちのいい朝だ。休日は今日まで。
さてと、何をして過ごすかな。
*****
俺は今日も今日とてセイに手を引かれて教室に向かった。短い休みはすぐに終わってしまった。
レオとブラン以外はすでに教室に居た。
エルサダもガイも普通に登校しているから、治してもらったのか、ポーションで全快したようだ。
血は戻らないから、ガイはまだ顔色が悪いが知らん。
俺は窓際の席に着く。
「あ、カスミ…その、お、おはよう」
ミロが何やら緊張して俺に声を掛けた。
「おはよう、ミロ。何をそんなに緊張してる?」
と聞けば
「私はその…何も知らなくて」
あぁ、魔術大会のことか。気にしなくていいのにな。
「言ってないから気が付かなくて当然だ」
それに、俺の中では終わったことだ。
俺は立ち上がるとナリウスの前に行く。机にトンと指を乗せて
「俺のリグに婚約を打診するためにケガをさせたんだな、最低なヤローだ。心底軽蔑する。アイツにはお前なんかより遥かに頼りになる強い婚約者がいる。どのツラ下げて厚かましい…」
ナリウスの髪の毛を摘むと
「恥を知れ!リグは俺の大切な従者だ」
摘んだ髪の毛を弾いて席に戻った。
俺の言葉でナリウスが何をしたのか察した他のメンツは流石に引いている。とはいえ、今までも無いこともない。ただ、相手が悪かったのだ。
ナリウスとユリウスは俯いたまま何も言わなかった。
そこにレオとブランが入って来た。変な空気に気が付いたようだがいつも通り
「みなさん、おはよう」
「やぁ、おはよう」
ブランが俺を見て
「珍しくカスミが喋っていると思えば、リグの件ね」
レオも
「来年からは色々と見直すそうだぞ」
と言った。もう関係ないけどな。
俺は肩をすくめて
「どうでもいいけどな。来年は出ないし」
2人は驚いた。俺こそなんで驚くのかとびっくりだ。あんなことになってブーイングの嵐の中で戦うのがどんなに疲弊するか。
「魔術の授業は?」
「受ける意味ないだろ?」
そう、魔術大会に出るためだけに受けてたからな。
そこでカエサル導師とセイが教室に入って来た。
「先に着きなさい」
立っていたレオとブランが席につくと
「来週から期末試験が始まる。それに合わせて今日から授業は午前までだ。期末試験の最後にある野外実習は、前にも説明した通り、森に向かい魔獣を討伐する。4人1組でチームを組む。チーム分けはまた後で発表される」
ざわざわとした。魔術大会に次にこの野外実習が大きな行事だ。
討伐レベルの低い魔獣になるよう、予め教師や魔術塔の魔導師が狩をする。当日はその森に他の人が入らないよう制限を掛けて研修をするのだ。
俺たちみたいに冒険者活動をしているものもいるが、少数派だろう。




