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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第2章 王立学院

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134.表彰式

 今日は魔術大会4日目、そう表彰式だ。

 そして、エキシビションで魔術師の戦いも見られるらしい。

 今日聞いたんだが、セイもやるとか。カエサル導師と対戦だって。まぁ余興だから本気じゃ無い。技を見せることに特化した戦いだ。


 俺は朝食の席で、腕にロイスを抱えている。

 ぷくぷくした子供は可愛い。その温もりに癒されながら朝食を食べた。


 表彰式にはパルシェンの両親とシュプラールの両親が観にくる。あとはニア兄様とリヴ兄様だ。


 当たり前だが俺は優勝した。

 しかし、少し釈然としない。そもそも、クリスにしろリグにしろ、全力を出していない。その中で相手にケガをさせないよう立ち回って逆にケガをした。


 だから決めた。

 来年はそもそも魔術の授業を受けないと。受けたら大会に参加しなくちゃならないが、こんなにハンディを背負わされるのはもうごめんだ。


 目隠しして手を縛られて戦ってるようなもんだ。いくら実力差があるとはいえ、攻撃禁止はやり過ぎだと思う。

 だから本当は表彰式にも参加したくなかった。


 それでも参加することに決めたのは、両親たちとルキとロキの存在があるからだ。

「僕たちも持ってるトロフィー、お揃い」

「同じ舞台で表彰されるカスミが見たい」

「私たちの自慢よ」

「胸を張って行きなさい」


 逃げるなとか、そんな言葉は言わない。言わないが、行きなさいと言う言葉だ。俺を尊重しつつも諌めている。その気持ちが分かるから諦めた。

 はぁ、本当に嫌だ。


 ルキとロキは俺にフード付きのローブを着せた。

「これでいい」「誰にも見えない」

 確かに目立つのも嫌だが、なんかある意味やらせな戦いに嫌気がさしている。


 表彰式には生徒は全員参加が基本だから、顔を包帯でぐるぐる巻きにして腕を布で釣ったリグと、足に包帯を巻き、杖をつくクリスとトーカ、セイで馬車に乗る。


 もう治ってるから自分たちでスタスタ歩けるけどな、演技は必要だ。

 リグとクリスは今回のケガで明日から学院をしばらく休む。と言っても2日は学院が休みで、10日後から期末試験だから休めるのは8日だけだ。


 今日は表彰式だから、生徒も家族も同時に学院に向かう。俺たちはかなり遅く出た。どうせ混んでるし、俺たちの後は王族だけだ。

 3台の馬車が到着した。アマランとウルグも護衛としてついて来ている。

 そのまま、みんなはVIPルームに向かった。


 なんのつもりかナリウスが馬車に近寄ろうとしてウルグに威圧されていた。本気だな、あれは。

 俺たちはナリウスを完全に無視したぞ!


 俺は控え室に通された。

「職員が呼びに来ますので、ここでお待ち下さい」

 1人でソファに沈み込む。

 表彰されるのは優勝者だけだ。別の部屋にも2学年と3学年の優勝者が待機しているんだろう。


 俺は昨日の夜のことを思い出していた。




 俺は自室のソファでルキに膝枕をされている。

「良い子良い子」

 甘やかしてくれるルキの少し冷たい手が心地よい。

 柔らかい太ももにすりすりしたら

「今はダメ」

 下から見上げる。困ったような顔でルキが俺を見た。腰に抱き着いて目を瞑った。


 膝枕をするのはルキ。ロキは俺の体ごと膝に乗せている。だから腰やお尻はロキが撫でていた。

「良い子良い子」

 なんだろうな、これ。


 2人なりに俺の気持ちに寄り添ってくれてるんだろう。

 人を傷付けることがこんなに気持ちを重くするとは思わなかった。

 後悔はしていないが、やはりもやもやはある。それを分かっていて2人は寄り添ってくれているのだ。

 本当に俺には出来すぎた伴侶だ。


(そばにいてくれてありがとな)

(当たり前)(いつだってそばにいる)

 その言葉に安心して、俺は目を瞑ってどうやらそのまま寝たようだ。



 *****



 俺の展開した防御と言う名の暴風は、ガイの利き手の指先と左足を膝下で切った。切断まではしていないが、神経と靭帯を切った。

 もうまともに剣も握れないだろう。まぁ、金を出せば聖女や神官が治してくれるかもな?

 あ、教会の上級ポーションでも治るかもな。


 大量の出血で倒れたガイを見てロイナス魔導師が俺を止めた。

 俺は彼らにも怒っている。彼らはリグやクリスの試合を止められたのに、止めなかった。明らかに負けると分かっていても、ケガをすると分かっていても試合を止めなかった。


 だから今も止めさせなかった。俺の風魔法は初級魔法だ。しかも防御であって攻撃ではないから、違反はしていない。

 ほんの少し腹いせいに、観客席とフィールドを隔てている結界を壊した。


 俺が展開した風が観客席へと舞い上がる。ただの風だから問題ないだろう。

「し、勝者パルシェン公爵家令息!」

 VIPルームから大歓声が聞こえた。


 ルキとロキがフードを取って身を乗り出して俺に手を振る。目は髪の毛で隠しているが、麗しの双子だと気が付かれただろう。

 わざと、だな。あれは。俺は手を挙げてそれに応えた。



 二人の口が動く。



 ―あ・い・し・て・る―



 全くな、本当に敵わない。



(俺も愛してるぞ!)



 その言葉を感じて、双子は抱き合ってへなへなと崩れ落ちた。ふっ…と肩の力が抜けた。ありがとう、ルキ、ロキ。




 とそんなことがあったのだ。

 職員に呼ばれたので部屋を出る。俺の前には他の学年の優勝者がいた。

 薄い金髪に緑の目の男性と、水色の髪に青い目の女性。


 少し待つように言われてフィールドに続く扉の前で待っていると、女性の先輩が

「ジョセフィーヌ・ネブラスカ」

 と名乗った。

 ネブラスカは侯爵家だな。


「カスミ・ド・パルシェンだ」

「私はアラシハル・リュ・ルクセンだよ、カスミ君」

 ルクセンって学校長の姓だな。なら校長の息子か。


「1学年の大会は酷かった…目隠しをして縛られて、魔法を禁止されてるような戦い」

 ジョセフィーヌ先輩が言う。


 アラシハル先輩も頷きながら

「私も父上に訴えたが、魔術師塔の思惑らしくてな。魔術師を派遣してもらう学院としては強くは言えないようだ」

 と肩をすくめた。

「だとしても、許されることだとは思わないが」


 そうか、分かってくれる人がいたんだ。ほんの少し、報われたような気がした。


「君はとても強い。誇りに思っていい」

 真摯な目でそう伝えてくれるジョセフィーヌ先輩。

「その通りだ。君は魔術師塔には入らないんだから…好きにすればいいさ」

 アラシハル先輩は片目を瞑ってそう言った。


 どうやら来年以降の魔術の授業の事らしい。

「そうするさ、先輩方。ありがとう!」

 そう言えば2人ともやさしく微笑んで髪の毛をくしゃりとされた。


「カスミはとても儚いのに、強い意志を持っている。そのままのカスミでいて」

 ジョセフィーヌ様だ。しっかりと頷く。

「本当に見た目はとてもな、強そうじゃないが…。あのセイルール兄様が教師を務めてまで守りたいのなら、それが答えだろう」


 そうか、セイたちとは従兄弟か。

「君もだよ、カスミ。血族なんだから」

 あ、そうか。俺も従兄弟になるのか?なんか照れくさくて顔を赤くすると

「その顔もいい。カスミはまだ子供。もっと子供らしくしていい」

「そうだ、早く大人になる必要はない」

 2人ともいい人だ。

「でも、恥ずかしいから」


 そう言えば2人とも驚いてから

「ふふっ、そうか。思春期だな、男の子は」

「あぁ確かに、15才だもんな」

「もうすぐ16才だ!」

 優しく微笑まれてほんの少し居た堪れなかったけど、心の中がホッコリとした。



 声を掛けられた。

「入場です。教師に続いて下さい」

 扉が開く。さぁ、表彰式だ。




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