128.念話
(聞こえるか…ルキ、ロキ…いつも心配かけてごめんな。大好きだぞ)
目を開けるとなぜか目を潤ませて両側から抱き着かれた。
「僕も大好き」「僕も大好き」
(離れていても、気持ちが伝わるように…練習しないか?俺からは伝わるから、ルキとロキの気持ちが伝わるように。いや、違うか。俺に見せてくれ…心の中を。全てじゃなくていいから)
「全部見ていい」「隠すことない」
この2人は本当に純粋だ。俺に抱き付いたまま肩に顎を載せる。横を向くと形のいい耳が見えた。そっと耳たぶに唇を寄せると軽く触れる。
色白の頬がさらに赤くなった。どれだけそばにいて肌を触れ合わせても、変わらずこういう反応をする。
なんというか、ほんと可愛いな。
「ズルい…」「無自覚」
ん?双子の頬がさらに赤くなった。
「聞こえた」「心の声」
えっとマジで?うわぁ、恥ずかい。中身のおっさんが右往左往してるぞ!知られて困るわけじゃないが、小っ恥ずかしい。
俺まで顔が赤くなった。
(…て)(…いが…)(…き)(いつ…大好…)
途切れ途切れなが双子の思念というか、想いが伝わる。
(ゆっくりでいい…俺は俺に触れてるセイが感じ取ってくれるのがとても嬉しい。口下手だから、多分…想っていることがうまく伝えられない。気持ちが伝わるのなら、俺のこの想いも伝えられるだろう…)
(…からズルい)(僕た…ばっかり貰ってる。沢山…げたいのに)
本当になんて可愛いんだろうな。
その柔らかな髪に頬を寄せる。ジャスミンの香りがした。俺と同じ香り、でも俺とは違う匂いとして感じるそれは、俺にとって離したくない大切な香りだ。
沢山貰ってるのは俺の方だ。素性のハッキリしない俺を慕い、結婚という人生での大きな選択をしてくれた。それは俺に取って、この世界に確かな居場所が出来たことでもある。
家族に迎えてくれたセイも、もちろんだが愛しみ慕ってくれた2人はまた特別な存在だ。
おっさんの俺を見ても、事実を知ってもなお変わらず慕ってくれた2人。いや、変わったか。より強く慕ってくれた。感謝しかない。
もちろん、それだけじゃない。人が苦手なのに、全身全霊で俺を真っ直ぐに見て、寄り添ってくれる。
こんな最愛に出会えた事が、俺の最高の幸せだと伝えたい。
(…伝わった、とても)(そんな風に想ってくれてたんだね…)(どうしよう、嬉し過ぎる)(カスミは言葉が足りな過ぎ…こんなに想われてるなんて…泣いていい?)
泣かせたくはないんだけどな。でも1人で泣くくらいなら俺のそばで泣いて欲しい。そうしたらずっと泣き止むまでそばにいられるから。誰にもこの位置は渡したくない。俺だけの特権だ。
(ダメ…好き過ぎて)(カスミが欲しい)
いや、流石にそろそろ屋敷に着くだろ。
…あれ?
(気を利かせた御者が最大限遠回り中です。ご安心ください)
おい、クリス。どこに安心する要素がある?毎日使う馬車だぞ?
顔を起こした2人の目は潤み、頬が紅潮していた。
「カスミが悪い」「いつもそうやって煽る」
(隠蔽と防音魔法をかけたので、ご安心下さい)
クリス、お前な…どこに安心する材料があるんだよ!ただでさえ2人のことを考えて授業に身が入らないのに、これ以上どうしたらいいんだ!
毎日登下校に使う馬車だぞ。思い出すだしたらまた愛おしくなるじゃないか。離れたくなくなって授業どころじゃねーよ。
(カスミってやっぱりわざとか?)
トーカ何がだよ!
(煽りまくってるだろ)
ぴょっ
「そんなに僕たちのこと」「もう待てない」
「うわぁーーー」
俺は今、ルキの膝枕で馬車に揺られている。どんだけ遠回りしたんだよ。腰はロキの上。2人に優しくなでなでだ。
「煽るのが悪い」「カスミは確信犯」
「違うわ!」
「もうすぐ着く」
やっと屋敷に着いた。俺は力が抜けてしまい、颯爽とルキに横抱きにされて屋敷に入った。
ヒルガが恭しく迎えてくれる。
「…お帰りなさいませ、カスミ坊ちゃん」
何故一拍置いた?
「こほん、ご健勝で何よりです」
ルキに横抱きにされてる状態を見てどこがご健勝だよ?
「仲のよろしい事で…ほっほ」
くそっ、バレてるみたいだ。恥ずかしい。思春期なんだぞ、俺は。
(大丈夫、中身はおっさん)(気にしない…)
くっここでおっさんを引き合いに出すか!?耐えろ、俺。諦めてルキの胸に頭を預けた。
その日はタウロスが作ったシチューを食べて子供たちを俺たち3人とセイの4人でお風呂に入れて、その後3人もお風呂の世話してから寝た。
何故子供の風呂の世話は出来るのに自分の風呂の世話は出来ないのか謎だ。
目が覚める。
うん、今日もぎゅうぎゅうだ。子供たちは毎日一緒に寝てるわけではない。2日に1回はリュカとコハクが、たまにアマランとウルグ、セイが一緒に寝てくれている。
生まれた時から一緒に住んでいて、俺が行方不明の時も双子共々面倒を見ていた彼らは子供にとって最早家族だ。
だからなのか、俺たちから時々離れても大丈夫だ。
転移で抜け出すと、恒例のリクたちの朝散歩からの朝食だ。朝は苦手なルキとロキは少しぼーっとしながらご飯を食べる。
俺は子供たちと双子を世話しながら食べる。時間には余裕があるから問題ない。
食べ終わって双子が抱き付いて来てキスをしてから俺たちは学院に向かうための馬車に乗った。
(ルキ、ロキ、行ってくる。気を付けてな!)
(行ってらっしゃい)(カスミも気を付けて)
なんかそこばゆい。
(主、気持ち悪いのでにやけないで下さい)
(それでも他人からは儚く見える謎)
(でもそんな緩んだ顔を見られたら、危ないです)
なぁ、お前らって主を敬う気持ちあるか?
(一応)(なんとなく)(そのつもり)
ディスってるよな?それは無いのと同義だぞ。
(冗談はさておき、儚く見えるのは謎ですが見えるものは仕方ありません。ちゃんと不機嫌そうにしててください)
(見た目は儚げなんだからな。声をかけらるぞ)
(緩んだ顔でも切なげに見えるんです。危険ですよ)
まぁ言い方はアレだが心配してくれてるんだろう。確かに気を付けないと顔が緩む。なんせ俺の双子はやたらと可愛いからな。
学院に着くと当たり前みたいにセイのエスコートだ。なんかこの時間、馬車寄せからエントランス、そして廊下は結構混み合う。下位貴族はかなり前に登校してるのに、不思議だ。
クリスたちの会話
(おい、主って…ド天然か?)
トーカがクリスに聞く。ちなみにトーカもカスミの前以外では主呼びだったりする。
(天然ではなく鈍感、でしょうか)
(この時間に混み合う筈が無いってなんで分からないんだ?)
重ねてトーカが聞く。
(それは多分、主の自己肯定感の低さ故でしょうね)
(自分は地味な中年のおっさんだという思いが強いですね)
とリグ。
(…おっさんっ、てほどくたびれてないし、顔立ちは整ってるよな?)
(そうなんですが…ね。だからきっと自分を見に来る人が居ると思っていないんですよ)
(セイルールは美形だと思ってるんだろ?)
(もちろん、だから見られたとしても自分以外を見てると思っています)
(セイルール含め、カスミもだよな?)
(はい、どうやら我々も含め…派閥があるようです)
(…何のだ?)
(ファンクラブ)
(はっ?)
リグは少し呆れたように
(我々は主のいわば分身です。顔立ちは違いますが、顔のレベルは我々もそこそこなんですよ)
トーカが驚いている。
(俺もか?)
(我々と言いましたよ?もちろんトーカもです)
そんな会話をクリスたちがしてるとは知らずに、今日も混んでるなぁと思っていたカスミだった。
教室に着くとミロが
「カスミ、おはよう」
いつも通り挨拶をする。
「おはよう、ミロ。あの後どうだった?」
「うん、凄くいい感触が掴めたよ!」
カエサル導師が入って来るまで嬉しそうに話をしていた。双子にもこんな学院生活が有れば良かったのに、とふと思った。
カエサル導師が
「いよいよ魔術大会が5日後となった。通常の授業は明後日まで。大会の前日は各自魔法訓練に費やしていい。土の日に魔術大会だ。各自、ルールの再確認を行うように。トーナメント表は前日の昼に張り出される」
その後は歴史の授業。
この世界のことは何も知らなかった。入学前の勉強や、公爵家の書庫、広辞苑。その辺りから過不足のない知識は身に付けたが、やはり話を聞くのは面白い。
俺はそれなりに知識欲があるようだ。この大陸の話、魔大陸の話。探したら日本に近い文化の大陸もあるのかな?
まだ先のことは分からないが、子供たちが成人したら放浪してみたいもんだ。
今日からは午後の授業が無い。
青い稲妻も今日明日は1泊で討伐依頼をこなす。だから俺はセイの補習を受けて帰宅する。家だと授業にカウントされないから仕方ない。
公爵家の個室で、周りを従者に囲まれながら勉強した俺だ。
魔力と体の関係とかはなかなか興味深い話だった。
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