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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第2章 王立学院

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127.練習

お昼投稿できなかったので…夜に



 魔術大会はその名の通り、魔法を使った戦いだ。

 選択科目である魔術を履修している学生で争う競技で、トーナメント方式で戦う。


 対戦相手は完全ランダムとなるため、相手によって運不運があるがそれも大会の醍醐味だ。

 学院にある競技場で行われる大会は、主催は王立学院だが、王族や高位貴族さらには魔術塔からも人が来るのでみんな本気だ。


 ルールはいたってシンプル。競技場の中央に設けられた30mほどの円形の台の上で初級魔法のみを使って争われる。

 相手が降参と言うか、対戦が続行不能と審判に判断されるか、台から落ちたら終わりだ。


 この大会は継ぐ領地のない貴族の子息子女にとっては将来の就職先につながる可能性もある。

 もっともすでに婚約者がいる人も多く、結婚して領地を継ぐ子息子女に就職先は必要が無い。


 それでも伴侶となる子息子女については就職する場合もあり、むしろ推奨されるほどだ。

 なので、いい成績を残しまたは印象を残し、声を掛けられることを夢見る者が多いのだ。


 選択とはいえ、ほぼ全員が選択する科目である魔術。

 各人が腕を磨くために放課後も残って訓練をしていた。


「カスミ、少し練習しないか?」

 ミロが声を掛けてくれる。補修はかなり落ち着いてきた。やはり少しは魔法の練習をした方がいいだろうか。

 ただ、遅くなると双子が突撃しかねない。そこが難しいのだ。


 本来なら練習なんて必要がないと分かっているから。カエサル導師たちにもぐれぐれも本気は出すなと言われているくらいだからな。

 ひとまず短時間だけでも練習に参加するか。


「そうだな、少し参加してみようか」

 ミロは嬉しそうに笑う。貴族なのに裏が無くて本当に気持ちのいい少年だ。


 最近は過保護の上にたっぷりと砂糖をかけてその上からさらにハチミツを掛けた如く甘々で過保護な従者たちも、ミロには好印象があるらしく行動を共にすることを許容している。


 もっともそばに自分たちがいることが条件ではあるが。

 特にリグがその傾向が強い。よほどあの時のことが堪えたらしい。


 あの海の事件後、物理的な距離が離れていても意思疎通が図れるようにクリスと考えた。

 スイの分身のイメージだ。だから人のリグがそばにいなくても実際には問題ない。今は離れてても回帰が使える。


 俺の髪の毛の中にチビクリスとチビトーカ、チビリグとさらにはスイまでいる。

 うまいいこと隠れているもんだ。


 で、ミロと練習場に行く。そこはミロが予約した個室だ。個室といっても10m四方はあるから狭くはない。

 ここで練習をするのだ。といっても俺には必要が無い。ないがフリはしておく。なんせ弱い魔法しか使えない体裁だからな。


 それを聞いたロキが珍しく鼻で笑った。有り得ない、と。双子は良くも悪くもとても無垢だからこういう仕草は本当にレアだ。

 呼吸するように魔法を使う俺はロキから見ても異端らしい。


 で、指先に炎を灯す。今は威力が必要ないので炎の色を変える練習だ。

 これは単純に楽しい。当たり前だが赤より青が火力が強いわけで蒼炎とか厨二チックでカッコいい。


 中身はおっさんでも今は夢見る少年だ。

 赤からオレンジ、また赤そして紫から青へ。夢中で遊んでいたら

「え?カスミそれはなに?」


 あ、ヤバい夢中でミロのことを忘れていた。

「ん、あぁ威力はさておき色って変わるかなって思ったら変えられた」

「…凄いよ!たしか蒼炎は赤い炎よりも強いって魔法の教科書にあった」


 …マジで?知らんかった。前世界知識だからな。

「へー知らなかった」

「カスミって時々すっごい抜けてるよね」

 反論できない。リグが隣で冷たい目で見ている。傷つくからやめてくれ。


 その後はミロの魔法を見る。火を灯せるのに飛ばない。

「ミロ、どうやって飛ばそうとしている?」

「えっ?火を前にって…」

 それは無理だろ。指方性を持たせないと進まない。そもそも火を押し出す力が必要だ。


「ミロ、これを転がして…そうだな、反対側まで」

 小さな丸い魔石を出して言う。

 首をかしげながら俺が机に置いた玉に手を添えてそっと押し出す。


「玉は置いた状態で安定している」

 当たり前って顔だな。

「それはこの玉がここに留まっているからだ。それを動かすためには、何がいる?」

「えっ?それは力」


「そうだな。より具体的に言うなら玉を押す力。推進力だな」

 ミロは真剣に聞く。

「魔法だって同じだ。現象として存在してそこに安定しているなら、変化を与えるためには力が必要だ」


 そこでようやくあっという顔をする。

 そして手の上に炎の玉を出すとそれはぎゅんと前に進んだ。壁に当たると霧散する。この部屋が結界で覆われているからだ。


 呆然とするミロ。そしてしばらくしてから振り返ると半泣きで俺の手を握ってぶんぶん振った。

「凄い!見た?僕の火が…あんなに」


「見たぞ!魔法の使い方は繊細な操作は別として考え方ひとつで変わる。どうして風が吹くのか、それを考えれば風の刃だって飛ばせる」

「カスミって凄い!なのにどうしてあんなに魔法の威力は小さいんだろうね?」


 …抑えてるからだ。カエサル様にもロイナス様にもそしてセイ、ロキにもくれぐれも軽々しく使うなと言われている。

 それでも当たり前に使ってしまう俺用にロキとクリスが開発した魔力を抑え込む魔道具型の腕輪。


 効きすぎるんだ、これが。もっとも俺が本気で魔法を使ったら壊せるけどな。

 そうするとロキが悲しむから、使わない。俺が誘拐されたあの時を思い出すんだと。

 腕輪にしたのは俺があの時、首に魔力吸収の道具を付けられていたから。


 ミロの言葉に苦笑いしながらまた続きを練習していた時、ゾワっとした。トーカが青ざめる。

「ミロ、今日はそろそろ帰る。がんばりすぎるなよ。また明日」

「ありがとうカスミ!また明日」


 手を振って外に出る。人がいない場所に急いで向かう。ヤバイヤバい。

「クリス急ぐぞ!」「はい!」


 隠ぺいを掛けると大急ぎで馬車に向かう。クリスが扉を開けると中から腕が伸びてきた。

 俺の腕を掴むと馬車に引き込まれる。


 後ろで馬車の扉が閉まった。待て、おい、クリス、トーカ、リグ。俺だけを馬車に乗せるな!

 無情にも馬車は俺だけを追加で乗せて動き出した。やられた。


「カスミ、遅い」「手に着いた魔力は誰?」「浮気駄目」

 ルキとロキが迎えに来た。馬車の中で合流できてよかった。もう少し遅かったら学院に入ってくるところだった。


 白いシャツにグレーのベスト、黒いスラックス。すらりと長い脚にさらりと流れる淡い金髪、紫の目。冒険者仕様じゃないあたり、双子の本気度が伺える。

 俺の双子が麗しい。


 いや、今はそれどころじゃないか。

 ルキが俺の左手を、ロキが俺の右手をすりすりとしながら浄化している。とても丁寧に。

「誰の魔力?雄でもダメ」「お触り禁止」

 真剣な顔で言っているから怖い。本気だ。


「ちょっと魔法の使い方を教えただけだ。そしたら喜んで…手を」

「僕も教えて欲しい」「教えてもらったことない」

 確かにないかもしれない。でもそもそもがかなり使えたし、見ていたら習得していたしいらないだろ!


「二人の能力が高いから教える事も余りなかったんだよ。特にロキは見たらある程度使えただろ?」

「むう、でも教えて欲しい」「ほかの人にしてるのに僕たちにしないのはダメ」


 双子にとっての俺は適当にいい条件の相手だった。それがいつの間にか唯一無二の存在となったようだ。

 それは俺も同じで、気持ちは理解できる。

 過保護なのはやっぱり死にかけたり攫われたりと様々あったので心配させているようだ。


 双子と一緒にいないときにいろいろ起きているから余計みたいで、できれば学院にも行ってほしくないと思っているのも知っている。

 我慢させてるんだなと改めて思う。もっと条件が会う女性がいたかもしれないのに、俺を選んでくれた。


 大切にしたいのは俺も同じだし、何か考えないとなぁ。学院はあと1年あるんだから。

 さりとて、セイみたいに学院に来させると彼らが危ない。難しいな。


 あ、なら、これだとどうかな。

(クリス聞こえるか?)(はい主)

(逃げた罰だ。俺とクリスたちが会話しているこれを具現化しろ)


(畏まりましたってか今更ですね。多分、主なら使おうと思えば使えますよ。でも問題はルキ様とロキ様ですね)

(そうだ、双方向で使えないと意味がない。もう一つ、視界と音を共有する方法。これはスイの分身を参考に)

(畏まりました)


「ルキ、ロキ、目を瞑ってくれるか?」

 2人は何を誤解したのか頬を染めて目を瞑るとそっと口を突き出した。

 違うんだが、ここで応えておかないと色々と支障が出るのでそっと唇を合わせた。

 満足そうにふにゃりと笑う双子。可愛いだろ!


(聞こえるか…ルキ、ロキ…いつも心配かけてごめんな。大好きだぞ)

 目を開けるとなぜか目を潤ませて両側から抱き着かれた。

「僕も」「僕も」




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