第五章 進藤英助
冥王小学校校長、進藤英助は一人で一階の廊下を歩いていた。
進藤は日本生まれのアメリカ育ちで、アメリカのエリート達にもまれて暮らしていた。進藤は大学卒業後、教師になるために日本に帰って来た。彼が教師になりたかった理由は、自分の手で未来のエンジニア達を育てていきたいと思ったのである。
だが実際に教師になって彼は日本の子供にひどく落胆した。
彼がどんなに厳しく教えても、どんなに優しく教えても、日本のほとんどの子供は学習能力に欠けていたのだ。
この国の教育は終わった…
そう思いながら彼は教師として生き、気付けば校長という地位に立っていた。
そんな中、校長である進藤は、この冥王小学校にやってきた。そこで、ようやく進藤は長年思ってきた自身の考えを改めた。
冥王小学校の生徒はアメリカのエリートとの…いや、世界エリートの子供達との差がほとんどなかったのだ。
彼はこんなすばらしい子供達に出会った事を、何よりも神に感謝した。
それにしても何だアイツらは…
進藤が悪態をついているのはもちろん、A達、SCYのメンバーである。
「あんな連中に殺されてたまるか…!」
進藤はそう叫んで一年二組の教室に入った。
何か…何か武器になる物を持たなくては…
進藤は側にあった机の引き出しを開けた。教科書やら筆記用具などがきれいに収められている。
よし…
進藤は引き出しから小型のハサミを取り出した、武器としては頼りないだろうが、脅しにはなる。
進藤は左と右を見ながら慎重に教室からでた。外の方では悲鳴が大量にするが、ここはまだ無事のようだ。
「どこに行こうか…」
やはりこんな時は、あまり出歩かず、どこかに隠れた方がいいだろう。
そうだ!!
進藤は絶好の隠れ場所を思いついた。
進藤は急いでその隠れ場所へと向かった。
その隠れ場所とはトイレである。ここなら内側から鍵を閉めてしまえば入るに入れなくなる。
進藤は急いで一番奥のトイレの扉を開けて、扉を閉じて鍵を閉めた。
「ふぅ…」
進藤は溜息をついて、小さな便器に腰掛けた。このまま、誰も来ないのを祈るしかなかった。
進藤がトイレに入った数十分後…
コツ…コツ…
トイレの入り口から足音が聞こえてきた。
「生徒か…?」
そうであってもらいたかった。ドクドクと心臓の鼓動が早くなった。
キイィィィ…バンッ!
一番手前のトイレの扉が開いて、勢いよく閉じた音が聞こえた。その音はだんだん進藤が隠れているトイレに近づいてくる。
キイィィィ…バンッ!
キイィィィ…バンッ!
その音はとうとう進藤の隠れているトイレの隣にまできた。次は進藤のトイレの番である。
ドクドクドクドク…心臓の鼓動がもっと早くなってきた。
ガタ…
進藤が入っているトイレの扉がガタリと揺れた。その音で進藤は飛び上がる。
「フンッ」
進藤の耳に外にいる人物が鼻で笑った。
ドオン!!ドオン!!
鼓膜が破れると思うくらいのすさまじい音がトイレに鳴り響いた。拳銃で進藤が入っているトイレの扉の鍵を壊したのだ。
銃声がやみ…
キイィィィ…
進藤が入っているトイレの扉が開いた。
トイレの外には、無表情で拳銃を進藤に向けている少年(B)が立っていた。
ドオン…
ドサ…
バタン…
トイレの個室には、進藤の死体だけが転がっていた…




