第四十八章 病院
「目が覚めたようね…」
気付いたら俺はベットに寝かされていた。清潔そうな白い部屋…横には父さんと母さんが座っている。何十年かぶりに会った様な気分だ。
「ここはどこ?」
俺は父さんに聞いた。
「病院だよ。それより、具合はどうだ?」
俺は笑ってみせた。
「そうか…」
どれだけの時間眠っていただろうか?
Aが投げた十円玉が落ちたのは何となく覚えている。
父さん達に心配させない様に笑ってみせたが、やっぱり体中が痛い…
だが、今俺はこうして生きている。
勝ったのだ。
あの悪魔の化身どもに…
ガチャ
突然、扉が開き、三十代半ば辺りかと思われるガッチリとした体格の男性が入ってきた。
「あ…どうも…」
父さんと母さんは立ち上がって、その男性に会釈をして、部屋から出ていった。
「具合の方はどうだい?」
男性は穏やかな口調で俺にいった。
「私は杉下司場井。警察関係者の者だ。
私がここに来たのは、君に話しておきたい事があってね。あの戦場を生き残った君に…」
「話したい事…ですか?」
杉下さんは父さんと母さんの方を向いて、席を外すように伝えた。
父さん達が部屋から出ていくと、杉下さんは椅子に腰掛けた。
「本当は上の命令で、この事は伏せておくようにいわれているんだけど…」
上からの命令…とんでもない機密なのだろうか?
「…それで、僕に伝えたい事ってなんですか?」
杉下さんは息を一度吸い込んでいった。
「君達の通っていた小学校を襲撃して、沢山の命を奪っていったあの子達の事だよ」
俺の背筋にゾワッと何かが走った。それは、あの殺戮の際に味わったものよりも大きなものだった。
「彼らはSCY…正式名は【少年少女 犯罪者 養成施設】のメンバーだ」
「犯罪者…養成施設…」
「親に捨てられたり、預けられたりされた子ども達で構成された犯罪組織だ。彼らはそこで多くの悪を学び、社会へと送り出されていく…」
「それで、危険な連中とはいえ、なぜ警察は学校の外で、僕の友達が殺されていく様を黙って見ていたのですか?」
杉下さんはまた息を吐いて、少し黙ると、再び話し始めた。
「君…漫画は好きかい?
普通では考えられないような技が沢山出てくる様なバトルが出てくる様なやつ…」
そういう事か…
「要するに、自分達が彼らの使う普通では考えられないような技の餌食になりたくなかったから、僕達を見捨てたんですね!」
俺はバッとベットから起き上がり、杉下さんを睨みつけた。
「…君の気持ちはよく分かる…私達警察は沢山の命を見捨てるという、彼らと同じ位、許されるべきではない事をしてしまった…だから私は今こうやって生き残った君に彼らの正体を話しているのだよ」
「……すみませんでした…」
「別にいいよ」
そう言って、杉下さんは椅子から立ち上がった。
「私が知っているのは全て君に話した。私はこれで失礼させてもらう。
この事は、誰にも話さないように」
最後にお大事にと言って、彼は部屋を出て行った。
「SCY…か…」
俺の心の中で何かが少しづつ吹き出てきた。




