第三十八章 五時間目⑥
今日子まで死んだ…
俺はガックリと床に膝を着いた。
コツッ…
突然俺の後ろで足音がしたかと思うと、俺の頭にガーンという、物凄い衝撃が走り、俺は横に吹き飛んだ。
誰だ…
俺は殴られて血が垂れているこめかみを押さえて、殴ったヤツの顔を見た。
コイツは…
三時間目の終わりに俺を追っかけまわしてくれた、あの少女だった。バッジにはDと書かれている。
Dはさっき俺が殴り倒した少女を立たせていた。
「ほら、手を貸してあげるから…」
「う…うん…」
少女がそう言った時、Dは俺が起き上がったのに気付き、溜息をついた。
「アンタは起きなくていいのに…」
そう言われた瞬間、自分は今度こそ殺されるかもしれないという、恐怖心が俺を覆った。
ほんの少しの沈黙があって、D再び口を開いた。
「この子…アンタの事が好きだったんじゃない?」
チラリとDは今日子の方を見た。
「どういう事だ?」
思いがけないDの一言に、俺は戸惑った。
「私、少し離れた所でこの子が死ぬのを見てたんだけど、この子、死ぬ直前にアンタに何か言おうとしていたじゃない」
そうか…
俺は昨日の放課後の事や、ちょっと前の二人だけの教室での事を思い出した。
あの時も今日子は俺に何かを言おうとしていた…
まさか…それが俺に対する告白だったなんて…
俺の両目が熱くなり、そこから生暖かい液体がこぼれた。
「女の子に手を上げたり、心が分からなかったり…アンタって男として最低よね」
そう言って、驚いた事にDは、クルリと背を向けてこの場から立ち去ろうとした。あれっ?
「俺を…殺さないのか?」
「フッ…」
Dは軽く鼻で笑うと、廊下に響く様な大きな声で叫んだ。
「私はね、人を殺すのが楽しいんじゃないの!人を苦しませるのが楽しいの!
早くいくわよ!F!」
Dが歩き始めたため、Fと呼ばれた俺が殴った、今日子を殺した少女は、急いで彼女の後を駆け足で追った。
Fがいってしまったのを見届けると、俺はゆっくりと今日子の亡骸にかがみこんで静かに泣いた。




