第三十四章 五時間目③
俺と今日子はほとんど誰もいなくなった校舎の中に入り、教室の壁にもたれ掛かって座っていた。
隣で今日子が静かに泣いていた。
先生まで死んでしまった…それも、こんな俺を庇って…
「三堂君…」
今日子が俺の方をチラリと見た。
そういえば、俺の服や顔は先生の返り血を浴びて、赤く染まっていたんだっだ。
「今日子、俺ちょっと顔洗ってくるから…」
せめて顔に付いた血だけでも洗い流したいと思った俺は、その場に今日子を置いて顔を洗いにいこうとした。
「ダメ…」
立ち去ろうとする俺の腕を今日子が痛いほど掴んだ。
「怖いよ…」
「………」
ちょっと考えてみると、こんな状態で今日子一人を置いていく訳にはいかなかった。
俺は我慢して、今日子から離れない事にした。
長い沈黙があった…
「…どうしてなんだろうね…」
いきなり黙っていた今日子が口を開いた。
「どうして人は平気で人を殺せるんだろうね…」
色々と何時間目からか、ヤツらに対して疑問を投げかけていた今日子だったが、今度は本格的に語り始めた。
「殺される人がどんなに悪い事をしていても、その人の命を奪ってもいいなんて事、絶対にないよ。
殺す方も、たとえ誰かのために人を殺したとしても、その誰かは皆が皆その人に「アイツを殺せ」なんて頼んでないだろうし、全然喜ばないだろうと思うよ」
今日子は語り終えると、フッと鼻で笑った。
「ごめんね三堂君、いきなり変な事話し始めて…」
「いいよ、別に…お前はだだ単に正しい事を言っただけだ」
世界中の人間に尋ねて、今日子の言っている事が正しいか、正しくないか聞けば、全員が正しいとは言わないだろう。
ただ、俺の中では、今日子の言っている事は正しい事であると思う。
「それと…三堂君、こんな時に変かもしれないけど私ね…」
「ギャァァァァァァ…」
「いこう」
遠くで悲鳴が聞こえてきたので、俺は今日子を立たせると、他の場所にいく事にした。




