第十七章 浩二との出会い
「チクショウ!ふざけあがって!」
家に帰る途中、俺は足元にあった小石を蹴飛ばした。その時、俺は何で苛立っていたのかというと今日の二時間目の算数の時間に当時の俺の担任が何の予告もなしにいきなり算数のテストを俺達にさせ始めたのだ。
それだけなら俺はここまで苛立たなかった。なのになぜ俺がこんなにも苛立ったのかというと、まだ授業で習っていない所まで出してきたのだ。
もしも予告の一つしてくれたのなら、予習でも何でもしただろうが、予告もなしにテストをされたのならいい点がとれる訳がない。
そのおかげでテストの点数は四十点だった…
俺が担任から答案用紙を受け取った時、担任が俺に言った言葉がこうだ。
「こんな簡単なテストでこんな点数なんか取ったら人間として失格だよ」
その言葉を聞いた時、俺は始めて皆の前で泣いた。その日は皆、俺に話しかけてこなかった。
「ああああああ!」
俺は頭を掻き毟り、ランドセルを放り出し、その場に倒れこんだ。
人は俺以外いない感じがした。
「はあぁぁぁ…」
俺は大きく溜息をついた。
人間として失格だよ。
人間として失格だよ。
人間として失格だよ。
…先生は間違っていない。
日頃から予習をしていなかった俺が悪いのだ。
そんな人間として失格なヤツがこの世に生きてていいのだろうか?
俺はランドセルを開き、筆箱をだした。
筆箱を開き、カッターナイフを取り出した。
カチカチカチカチカチ…
カッターナイフから刃を出す音が辺りに小さく響く。
俺はそのカッターナイフの刃を自分の手首にあてた。
最悪の人生だった…
俺は静かに目を閉じた。
「おい!!なにやってんだよ!!」
その声と共に、俺は一メートル位突き飛ばされた。
カッターナイフが地面を滑る。
「ふざけんじゃねえぞ!お前!」
誰だ?コイツは?
俺は俺を突き飛ばしたヤツの顔をよく見ようと、顔を上げた。
「お前は…」
同じクラスの中島浩二だった。
「一人でコソコソ何をやっているのかと思えば…こんなバカな事をしていたのか!」
浩二はしばらく俺を黙って睨みつけると、口を開いた。
「…たかがテストで悪い点取ったて…いくら先生に「お前は人間失格だって言われても、絶対に大切な命だけは粗末にしちゃいけないぞ」
そう言うと、浩二は片手をスッと俺に差し伸べた。
「ほらっ、俺がお前の家まで送ってやるよ」
俺は黙って浩二の手を握ると、その場に立ちあがった。
「それじゃ、いこうか」
家に着くと、母さんは先生からテストの結果を聞いたのか、俺はバツとして一カ月間トイレや食事、学校にいく以外、自分の部屋から出る事を禁止された。
次の日、俺は学校に着き、机に座ると、誰かが俺の机の前に立った。
中島浩二だ。
浩二は少し俺の顔を見ると、すぐに口を開いた。
「昨日はすまないな…」
はっ?
俺は一瞬自分の耳を疑った。
すまないな…?
謝るのはこっちの方だろう。なにせ俺のふざけた行動でコイツの大切な時間を割いてしまったのだから。
「いきなりお前を突き飛ばしてしまって…」
そんな事で俺に謝ってきたのか!
「い…いいよ、もうそんな事…」
「本当か!?」
曇っていた浩二の顔が太陽の光を受けたように明るくなった。
「それにな、お前は謝る方じゃなくて、感謝される方だろ。俺の命をある意味で救ってくれたんだから」
俺はそう言って浩二に頭を下げた。
「ありがとう」
「あ…ああ…」
浩二は初めて人に感謝されたように恥ずかしそうに薄く笑った。
俺達の出会いはあまり人に言えるものではなかったが、俺達は学校生活でじょじょに友情を深めていき、いつしかお互いにとって、なくてはならない大切な存在となった。
そんな浩二が今日、その友人達を助けるため、かけがいのない自分の大切な命を犠牲にして、この世から消えた…




