第十六章 三時間目②
俺達は体育館裏の目立たない場所で奥村の治療(応急処置)にあたっていた。
「大丈夫?」
今日子がハンカチで奥村の出血している手を押さえた。
「だいぶ出血は収まったようだから、そろそろいった方がいいんじゃないのか?」
浩二がそう言った瞬間、右の方からコツコツと足音がした。
「おい、この足音、こっちに向かってるぞ」
俺達は急いで箒とナイフを構えた。
「お願いだから、生徒でいてね…」
今日子が呟いた。俺もそうであってもらいたい…
すぐにその足音が誰の物か分かった。
「なんだ生徒か…」
たしかに冥王小学校の男子生徒であった。おそらく五年生くらいだろう。だが、なんとなく様子がおかしい。足取りはふらつき、まるでゾンビみたいだ。
「おい、どうしたんだ?」
俺は試しにその生徒を呼んでみた。すると突然、その生徒がバタリとその場に倒れた。
「キヤァァァァァ!」
俺も今日子のように叫びたかったが、恐ろしさの余り、声が出なかった。
男子生徒の背中は、刃物か何かでメッタ切りにされていて、陰でよく見えなかったが、腸が脇腹から飛び出ていた。
すると、男子生徒が出てきた所から、日本刀を持ったヤツが出てきた。
顔が不気味に白い。いや、顔を白いマスクで覆っているのだ。
「オヤ、コンナトコロニモセイトガイタノネ…」
声からして女のようだが、俺達の命を狙う殺人者には変わりはない。
「逃げるぞ!」
俺はそう叫んできた道を戻ろうとした。
「さっきはまんまと逃げ出しあがって…」
俺の前にさっきまいた奥村の手をすっ飛ばした少年二人が現れた。
「クソッ!」
俺達は挟み撃ちにされてしまったのだ。
「どうすれはいいの…」
「ドウシヨウモコウシヨウモナイデショ」
「黙れ!」
右には日本刀を持った少女、左には人の腕を軽くふっ飛ばしきれる少年二人…もう終わりか…
「うらあああああ!!」
「浩二!」
浩二が俺の脇を通って、二人の少年に向かって走り出した。
「くらえ!」
浩二が少年一人の顔面を拳でぶん殴った。
「ぎゃあ!」
浩二に殴られた少年は、空いている手で顔を押さえた。
浩二は振り向いて俺達に小声で叫んだ。
「コイツらは俺が食い止めるから、お前らは逃げろ!」
どうやら浩二は自分が囮になって俺達を逃がす作戦らしい。
「いくぞ!」
俺と今日子、奥村は少女の脇を通り抜けようとした。
「ニガサナイ」
少女が日本刀を振り上げたその時、少女の体が宙を飛んだ。浩二が足で少女の顔(顎)を蹴り上げたのだ。
「俺が相手になってやるぜ!このゴムマスク!」
浩二が少女の腹を蹴り上げようとした時、竹ヤリを持った少年が後ろから浩二の腹を思いっきり突き刺した。
「中島君!!」
今日子が叫んだ。
「ぐ…ぐあああああああああぁぁぁ!!!」
浩二は口から血を嘔吐しながら少年の首根っこを引っつかんだ。
「浩二!」
俺は浩二のもとへ行こうとした。
「くるな!バカ!」
俺に対して浩二がそう叫んだ瞬間、浩二の背中から血が思いっきり噴出した。少女が日本刀で浩二の背中をぶった切ったのだ。
「ドウヤラアナタハワタシタチヲオコラセタヨウネ…」
その場にぶっ倒れた浩二の首を切りつけた。
「死ね!」
パチンコの少年が弾を浩二の頭に飛ばした。
浩二の頭がはじけ飛び、赤い血と黄色い脳みそがあたりに飛び散った。
浩二は死んだ。
「いくぞ!三堂!」
奥村の声で俺達は走り出した。
俺は走る途中、浩二の死体をチラリと見た。
死んでいるのにもかかわらず、三人は問答無用に浩二の死体を切り刻んでいく。
「さよなら、浩二…」
そういえば浩二は俺にとって、初めての友達だった。そう、あの一年生の九月の日のまだ残暑が厳しい時の事だった…




