第3星 僕はただ『はい』と答えた。
授業後。
いや、正しくは学校を抜け出しただけなのだが僕は霧ヶ岬公園に来ていた。
もちろん自称天使を名乗る女の子に会いにきたわけなのだが・・・僕が来ることを予想していたのか、それとも朝から待っていたのかは分からないが公園のブランコに座っていた。
ここの公園は意外とでかく、遊具というよりも自由に遊べる大きい広場がうりだったりするわけだが・・・さすがに昼ちょい前。あまり人はいなかった。
いるのは親子連れの子供。
小学生前ぐらいの子ばかりだった。
「待っていました」
「・・・で、お前はここらへんに住んでいるやつなのか?」
殺人事件といい行方不明事件といいここらへん、または日本に住んでいないと分からないだろう。
どれも日本限定でおこっていることなのだ。
ただし、殺人事件は別だった。
殺人事件が話題になったのはここらへんに住んでいるところのみ。
ニュースでもやっていただろうが、殺人事件なんてこの物騒な世の中かなりの量が報道される。
だから明確に覚えている人はここらに住んでいる人だけだった。
さらにその中から僕と殺人事件が絡んでいることを知っているのはかなり絞られる。
だが僕はこんなコスプレ女子を知らない。
では、誰なのか。
誰でもない。
天使らしい。
羽が生え、白いワンピースを着た。
天使らしい。
「お前、殺人事件の謎がどうのこうのって言ってたよな。あと行方不明についても」
「えぇ、はい」
「お前は何を知っている」
「何も」
と区切り。
「私はサポートのみと言いました。私は何も知りません。解き明かすのはあなたです」
「じゃあ、僕は何をすればいいんだ」
「天使の奇跡に挑戦すればいいのです」
急に胡散臭くなる。
「あのなぁ、僕だってその手のことに憧れたこともある。いや現在進行形で憧れている。中2病だかなんだか知らないが授業中にクラスに悪者が来てそれを颯爽と僕が助けるという痛々しい妄想だってする」
けれどという。
けれどと区切る。
「僕は信じていない。所詮妄想だとそう思うしかないんだよ、この世界ではな」
続けて僕は軽く慰めとはやくそのコスプレをやめるよう言った。
「次は2次元の世界に生まれ変われるといいな」
「この世界では・・・ですか」
天使(仮)もけれどと言う。
「ですが3つのセカイではどうでしょうね」
「3つのセカイ?なんだそれは?そういう設定なのか」
「あなたは気付きませんか。このような羽が生え、私も一応子供。中学生ぐらいに見える私がなぜこの学校がある時間帯に堂々と公園に来れるんですか?」
いいえと続けて。
「公園に来れるまではいいです。しかしここにとどまっておくことなどできないですし、まわりは親子連れの子供ばかり。そんな中、このように常識から外れた私がなぜここにいれるのか」
確かに不思議だった。見た目が明らかにまだ義務教育中なのに警察もこなければ親だって気付かない。まして羽が生えているのだ。
普通ならおかしいと感じなんらかの行動をとるかあからさまに避けるはず。
しかし、周りは避けているのではなく気づいていないようなそぶりを見せる。
よくある僕以外には見えないという設定か?と軽く妄想に浸りつつ思うが朝、内野には見えていた。
なら・・・。
「簡単なことです」
と天使(仮)は息をすることと同じように答えを述べた。
「私の外面存在感と内面存在感を消しただけです。いわゆる、透明人間のようなものですよ。姿が消えてるわけではありませんが。もちろん近くに来られたら気付かれますが遠ければ気づきません」
朝のあなたの隣にいた人には見えてしまったようですね。と無表情で言う。
しかしこの天使(仮)は表情を変えない。
感情も変えない。
声も平坦だった。
顔は可愛いのにな、なんて思うのは高校生の性だ。
「でも・・・だ」
と僕は笑う。
「お前のその言葉には【精神的証拠】も【物的証拠】もない。僕にはお前が消えて見えてないしな」
前にこいつに言われた言葉を代用ししてやったり顔をする。
「それを詳しく教えるにはあなたには『天使の奇跡』に挑戦してもらいませんと」
「それは僕の質問に答えられないと同義じゃないのか?」
「・・・・・」
勝ちを確信する。
論破!と叫びたいくらいだ。
僕のこの推理というよりへりくつに異議はあるまい。
しかしなぜだろうかこの虚しさは。
こんな虚しさは近所の小学生、舞ちゃんに算数で計算勝負をして思わずムキになり勝った瞬間高笑いをしてしまった時以来だ。
「では、あなたが『天使の奇跡』に挑戦しない限りは私の負けではないのでは?」
「ふっ・・・じゃあ、挑戦するさ。お前のその戯言がどれほど残念かきっと数年後に分かるだろうがその前に僕が教えてやる。中2病の先輩としてここでその妄想を砕く。仲良く天使の挑戦ごっこをして恥ずかしさに気付くがいい」
「はい、か、いいえ、でお答えください」
「・・・・・」
怒られた。
年下に怒られた。
「あなたは『天使の奇跡』に挑戦しますか?」
「はい」
その瞬間僕は無重力だと感じた。
体が浮く感じがする?
感覚がおかしい?
どれも違う。
だって気づいたら僕の目の前にあったのは・・・
「地球・・・だって・・・・・?」
僕の目の前には1つの球体があった。
青く、鮮やかで、写真で見たことのある球体。
まぎれもなく地球だった。
それはまだいい。
よくはないが、僕が目の前にしている残り2つよりはマシな問題だ。
そう残り2つ。
「なんだ・・・この白い球体は・・・?」
地球の左右に白い球体があった。
大きさは地球と同じ。
そんなものがあった。
「ってか僕、普通に息できてるし、圧でつぶれてもいない。なんだ?ここは?」
「ようこそ」
後ろから女の子の声がした。
ここまで来る直前にも聞いた声。
感情がなく、無表情で。
痛々しかった。
そんなはずの声が。
「3つのセカイへ」
白い、白い女の子が。
(仮)の外れた天使がそこにはいた。
久々の更新です。
ようやく入口。ようやくスタートしました、この作品。
今後もどうぞよろしくおねがいします。
では。




