第七章 最初の約束を結び直す
名を持たぬ者の周囲に、無数の黒い文字が浮かび上がった。
それは、彼が長い間抱えてきた言葉だった。
『誰も私を選ばない』
『誰も私を必要としない』
『私は、存在しないほうがよかった』
その文字が、原初銀河全体を覆い始める。
セレスは、悲しそうに目を閉じた。
「彼は、自分自身の存在を否定し続けてきたのです」
ニジは、ゆっくりと歩み寄った。
「君が何者なのかを、ぼくたちが決めることはできない。君の名前も、君の未来も、君自身が選んでいい」
名を持たぬ者は、震える声で問いかけた。
「もし、私が誰かと出会って、また傷ついたら?」
「そのときは、また一緒に考えよう」
「もし、誰にも理解されなかったら?」
「それでも、君の存在がなくなるわけじゃない」
「もし、私が間違えたら?」
クロノスが答えた。
「間違いを認めて、そこから歩き直せばいい。私たちもそうしてきた」
バラグも、静かにうなずく。
「物語は、最初から完璧である必要はない」
名を持たぬ者の黒い文字が、ひとつずつ光へ変わっていった。
そして、セレスが最後の言葉を告げた。
「あなたは、最初の約束の外にいたのではありません。あなたこそ、約束を完成させるために必要な存在だったのです」
名を持たぬ者は、長い沈黙のあと、初めて自分の胸元に手を当てた。
「私にも……光があるのか?」
「あるよ」
ニジが微笑む。
「まだ見つけられていなかっただけだ」
その瞬間、彼の胸元に、小さな銀色の光が灯った。




