第一章 星のない原初銀河
扉の向こうに広がっていた世界は、これまでのどの銀河とも異なっていた。
そこには、星がなかった。
空も大地もなく、上も下も、遠いも近いも分からない。
ただ、無数の光の粒が静かに漂っていた。
それぞれの光は、まだ何の形にもなっていない。
あるものは、未来の星になるかもしれない。
あるものは、命の輝きになるかもしれない。
あるものは、誰かの夢や願いになるのかもしれない。
「ここが……原初銀河?」
ユイが、光の糸を伸ばした。
しかし、糸はどこにも結ばれず、静かに宙を漂っている。
「不思議。つながりがないわけじゃないのに、まだ何にも結ばれていない」
ハジメは、白紙の本を開いた。
すると、ページに見たことのない文字が現れた。
『ここは、すべてが生まれる前の場所。』
アマネは、周囲の光を見つめた。
「創世銀河では、すでに生まれた命や星を守った。でも、ここは違う。まだ生まれるかどうかさえ決まっていない、すべての可能性が眠っているのよ」
「では、ここにある光は、未来そのものなのか?」
クロノスの問いに、トワが答えた。
「未来だけではないわ。過去も、現在も、まだ生まれていない時間も、ここではひとつの可能性として重なっている」
そのとき、遠くに小さな光が見えた。
光はゆっくりと近づき、三十人の前で人の姿へと変わった。
長い銀白色の髪。
星明かりを映す深い瞳。
そして、胸元には、円環の中に小さな始まりの光を抱く紋章が輝いていた。
その人物は、穏やかな声で告げた。
「私はセレス。この原初銀河で、最初の約束を守り続けてきた者です」
ニジが尋ねる。
「最初の約束って、何ですか?」
セレスは、遠くの光の海を見つめた。
「それは、宇宙がまだ何も持たなかったころ、すべての存在が交わした約束。けれど今、その約束が失われようとしています」




