第十章 まだ書かれていない未来へ
交差銀河に戻った三十人を、忘れられた物語の村の住人たちが迎えた。
村の図書館には、新しい本棚が作られていた。
そこには、まだ題名のない本が並んでいる。
誰かが書き始めた物語。
誰かが途中で止めてしまった物語。
誰かが心の中にしまい込んでいた物語。
そして、これから生まれる物語。
ハジメは、その一番手前に、白紙の本を置いた。
「この本は、ぼくひとりのものじゃない。まだ自分の物語を見つけられない誰かのために、ここに置いておきたい」
ノエが、優しくうなずいた。
「きっと、いつか誰かがこの本を開くね」
ユイは、光の糸を本棚に結んだ。
「その人がどこにいても、物語はきっとつながるよ」
ルミナは、本の表紙にそっと手を添えた。
「どんな色を選んでもいい。どんな形の物語でもいい。あなたの色は、あなたの宝物だから」
アマネは、創世の光を小さく灯した。
トワは、永遠の記憶を本棚に刻んだ。
ニジは、三十人の仲間たちを見渡した。
「ぼくたちの旅は、まだ続く。けれど、これからは、誰かの物語を守るだけじゃない。誰かが自分の物語を始められるように、そばにいることも大切なんだね」
そのとき、図書館の窓から、やわらかな風が吹き込んできた。
白紙の本のページが、一枚だけめくられる。
そこには、まだ誰も知らない文字が浮かんでいた。
『次の物語は、あなたが選ぶ未来から始まる。』
三十人の光が、静かに輝いた。
そして、交差銀河のさらに遠い彼方に、見たことのない扉が現れた。
その扉には、過去でも未来でもない、不思議な紋章が刻まれていた。
ハジメが、そっとつぶやく。
「ねえ、みんな。あの扉の向こうには、何があるんだろう?」
ニジは、仲間たちと顔を見合わせた。
「それは、行ってみないと分からないね」
三十人は、笑顔でうなずいた。
新しい旅が、また始まろうとしていた。




