第八章 白紙銀河・無限初光
ノクスの影は、まだ完全には消えていなかった。
それは、ハジメの心に残る恐れが形を変えたものだった。
「私は、まだ消えていない……」
影は空白の亀裂の中で、最後の力を振り絞った。
「希望を持てば、また傷つく。物語を書けば、また終わりが訪れる!」
ハジメは一歩前へ出た。
「終わりが来ることは、怖いよ。ぼくも、まだ怖い。でも、終わりがあるから、今の一ページを大切にできるんだ」
影が大きくうねる。
「ならば、すべてのページを白紙に戻してやる!」
その瞬間、ハジメの背中にある光の羽が大きく広がった。
白紙の本が空へ浮かび上がり、ページが一枚ずつ開いていく。
そこには、二十九人が歩んできた物語が映し出された。
四季彩星で色を取り戻した日。
虹色銀河でニジが仲間になった日。
時空銀河で過去と向き合った日。
幻色銀河でルミナと出会った日。
創世銀河でアマネが生まれた日。
永遠星でトワが約束を受け継いだ日。
交差銀河でユイと出会い、バラグが再び物語を書き始めた日。
それらは、ひとつひとつ異なる色を持ちながら、互いに響き合っていた。
ハジメが両手を広げる。
「ぼくは、まだ何者でもない。だからこそ、どんな未来にも向かっていける!」
ニジが虹色の光を重ねる。
ルミナが透明な光を広げる。
アマネが創世の力を注ぎ、トワが永遠の記憶をつなぐ。
ユイが二十九の光を結び、二十四人の四季の力が、その中心を支えた。
ノエとバラグ、クロノスも、それぞれの想いを重ねる。
そして、三十の光がひとつになる。
「白紙銀河・無限初光!!」
まばゆい光が、ミライアの空を包み込んだ。
それは、過去を消す光ではなかった。
誰かの悲しみを塗りつぶす光でもなかった。
何もないところに、新しい一歩を描く光だった。
黒い亀裂が、ゆっくりと閉じていく。
空白の闇は、柔らかな星屑へと変わり、ミライアの大地に降り注いだ。
白い草原に緑が戻る。
灰色の空には青が広がり、透明だった川は水色に輝き始めた。
そして、雨の音が好きだと言った住人の胸元に、小さな水色の光が再び灯った。
「……私、覚えています。雨の音が好きだということを」
住人は、初めて笑った。
その笑顔を見て、ハジメも微笑んだ。




