第五章 断章王バラグ
交差銀河の中心に近づくほど、周囲の光は弱くなっていった。
道標の文字が消え、星々のつながりがほどけていく。
遠くに見えた銀河が、少しずつ紙片のように裂け始めた。
そして、空から無数の黒いページが降ってきた。
そのページは地面に触れると、黒い霧となって広がっていく。
「これは、何なの?」
ルミナが尋ねた。
司書は、深刻な表情で答えた。
「断章です。物語を途中で切り離し、つながりを失わせる力です」
そのとき、黒い霧の向こうから、一人の王が現れた。
身体は破れた本のページでできているようだった。
頭には、黒い文字が絡み合った冠を戴いている。
「私は断章王バラグ」
王の声は、古びた紙を裂くように乾いていた。
「物語など、すべて終わらせてしまえばよい」
ニジは前に出た。
「どうして、そんなことをするんだ!」
バラグは、冷たい笑みを浮かべた。
「物語は、誰かを喜ばせる一方で、誰かを悲しませる。出会いがあれば別れがあり、願いがあれば失望がある。ならば、物語そのものを断ち切ればよい」
ルミナは、首を横に振った。
「悲しい出来事があっても、物語には優しい時間もあるよ」
「優しさなど、いつか忘れられる」
「それでも、誰かの心に残ることがある!」
ノエが叫んだ。
バラグは、ノエを見た。
「お前は、忘れられた物語の残りかす。誰にも覚えてもらえなかった存在だ」
ノエの身体が震えた。
「わたしは……」
「お前に続きなど必要ない。物語は終わったのだ」
その言葉とともに、黒いページがノエを包み込もうとした。
しかし、ニジが飛び出し、ノエの前に立った。
「ノエの物語は、まだ終わっていない!」
二十八の守護者たちが、一斉に構えた。
バラグの背後には、巨大な黒い本が浮かび上がっていた。
その本の表紙には、こう記されていた。
『終わりのない断章』
そして、戦いが始まった。




