第七章 桜の花びらが教えてくれたこと
迷宮の闇が少しずつ薄れていった。
エターナスの前に、リリアの幻影が現れた。
少女は、昔と同じように微笑んでいた。
「お父さま」
その声を聞いた瞬間、エターナスは膝をついた。
「リリア……」
「どうして、ずっと泣いているの?」
王は答えられなかった。
「わたし、桜が好きだったでしょう?」
リリアは、空に浮かぶ花びらを見上げた。
「桜は、咲いて、散って、また咲くからきれいなんだよ」
「でも、散ってしまえば、もう戻らない」
「ううん。散った花びらは土に帰って、次の花を育てるの。わたしも、きっと同じだよ」
王の瞳から、涙があふれた。
「私は、お前を忘れたくなかった」
「忘れなくていいよ」
リリアは優しく笑った。
「でも、わたしのために、みんなの時間を止めないで」
その言葉に、王の心を縛っていた最後の鎖がほどけた。
エターナスは、少女を抱きしめようと手を伸ばした。
しかし、リリアの姿は淡い光となって、ゆっくりと消えていく。
「ありがとう、お父さま」
それが最後の言葉だった。
王は、長い間、声をあげて泣いた。
やがて、彼は顔を上げた。
「私は、もう一度、時間を流そう」
その瞬間、ロストの身体に大きな亀裂が走った。
「やめろ! 悲しみを受け入れるな!」
ロストが叫ぶ。
しかし、エターナスは静かに立ち上がった。
「悲しみは消えない。だが、それでも私は生きていく。リリアと過ごした日々を胸に刻み、これから生まれる命を守るために」
王の胸から、黄金色の光が広がった。




