第二章 終わらない幸福
セレスは、二十七人を時計塔の奥へ案内した。
そこには、星の歴史を映し出す巨大な水晶があった。
水晶に手を触れると、かつての永遠星の姿が浮かび上がった。
昔、この星は美しい四季を持っていた。
春には白い花が咲き、夏には透き通る海が輝いた。
秋には黄金の果実が実り、冬には雪が静かに降り積もった。
人々は互いを思いやり、限られた時間の中で喜びを分かち合っていた。
けれども、ある日、大きな災害が星を襲った。
多くの命が失われ、人々は深い悲しみに包まれた。
星の王は、愛する家族を失った。
彼は二度と大切な人を失いたくないと願い、永遠の力を求めた。
その願いに応えたのが、永遠星の古代装置「エターナル・コア」だった。
王は装置の力を使い、星全体の時間を止めた。
人々は老いることも、別れることもなくなった。
花は枯れず、海は荒れず、星の光は変わらない。
しかし、同時に新しい命も生まれなくなった。
人々は笑わなくなり、語り合わなくなり、やがて心まで止まってしまった。
「それでも、王は幸福だと信じていたのです」
セレスは静かに語った。
「大切なものが変わらない。それこそが永遠だと」
ルミナは、街の人々を思い出した。
「でも、みんなの時間が止まってしまったら、新しい思い出も生まれないよね」
「その通りです」
セレスはうなずいた。
「永遠星は、失うことを恐れるあまり、生きることそのものを忘れてしまったのです」
ニジは水晶に映る王の姿を見つめた。
「王様は、悪い人だったのかな」
セレスは首を横に振った。
「いいえ。愛する人を失いたくなかった。それだけだったのです。ただ、その願いが、いつしか星全体を閉じ込めてしまいました」
アマネは小さくつぶやいた。
「大切だから、変わってほしくない。でも、変わらないと、新しい命も生まれない……」
その言葉に、アカシアは深くうなずいた。
「命とは、変化を受け入れながら歩むものなのです」




