第二章 時の果てに浮かぶ創世海
旅の船は、アカシアが用意した特別な宇宙船だった。
その名は「四季彩号」。
船体には春夏秋冬の四つの紋章が刻まれ、中央にはニジとルミナの光を受け止める透明な結晶が埋め込まれていた。
四季彩号は、星々のあいだを抜け、銀河の果てへと進んでいく。
やがて、いつも見慣れていた星空が遠ざかり始めた。
星と星を結ぶ光の道が消え、時間の流れさえも曖昧になっていく。
窓の外には、過去の星の姿と、まだ生まれていない星の姿が、同時に浮かんでいた。
「なんだか、不思議な景色だね」
ルミナがつぶやいた。
「昨日と明日が、一緒に見えているみたい」
アカシアは静かに説明した。
「ここは、時空の境界です。時間が始まる前の世界に近づいているのです」
そのとき、船の前方に巨大な光の海が姿を現した。
創世海だった。
その海には、数えきれないほどの光の粒が浮かんでいる。
一つ一つの光は、まだ生まれていない星の種。
淡い緑の光は、いつか森になるもの。
青い光は、未来の海になるもの。
黄金色の光は、まだ名もない命の鼓動になるものだった。
春の守護戦士が、そっと窓に手を触れた。
「ここには、すべての始まりがあるんだね」
夏の守護戦士は、輝く海を見つめながら言った。
「ぼくたちが守ってきた星も、ここから生まれたのかな」
アカシアはうなずいた。
「そうです。宇宙のあらゆる命は、この創世海の恵みを受けて生まれました」
しかし、創世海には異変が起きていた。
本来ならば美しい波紋を広げるはずの光が、ところどころ黒く濁っていたのだ。
星の種は輝きを失い、命の鼓動は弱くなっている。
「これは……」
クロノスが眉をひそめた。
「何かが、創世海の力を吸い取っている」
その言葉に呼応するように、海の奥から巨大な影が現れた。
影は星の種を包み込み、次々と闇へと変えていく。
そして、低く冷たい声が響いた。
『創世の時は、もう終わった』
『これ以上、新しい命など生まれる必要はない』
四季彩号の船体が激しく揺れた。
ニジは仲間たちを見渡した。
「みんな、気をつけて! この海には、ぼくたちの知らない敵がいる!」




