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北風より太陽

 ホテルの入り口から離れたところまで心配顔のカトリを連れて行き、隼人は話を始めた。


 「あの建物の中で入口から真っ直ぐ行った奥の方の部屋に大量のAK-47が隠してあったのを見つけたんだ」


 「ヨーコのくれた情報は正しかったんだ… それでハヤトはどうしたの?」


 「エマには気づかれないように注意して銃は元のままに戻しておいた。そしてエマを引っ張って急いでここまで引き返して来たところなんだ」


 「つまり銃はそこに隠したままにしてあるってことね」


 「ああ、下手に置き場所を変えたりすると他人が入ったことが分かって警戒されるだろ。ただ、慌てていたから動かしたテーブルを元にあった左の壁に戻すのと、肝試しの目印を持って帰ってくるのを忘れてしまったんだ」


 「じゃあ、テーブルの位置を戻したりするためにそこまで戻らないといけない訳ね…」


 「カトリ、誰があの場所に戻しに行くのがいいと思う?」


 「本当は、ハヤトとワタシが一緒なのがいいと思うけど…」


 「そうなんだが、それは竜崎が許してくれないだろ… やっぱりオレが一人で行ってこよう。ここらにバベルの奴らが近くにいるかも知れない。早くみんなを連れ帰るためにはすぐにでもこの用事を済まさないと」


 「そのテーブルは一人で動かせるの?」


 「それは大丈夫だ。カトリは竜崎と一緒に福本と東条を捜してきてくれ。エマにはここで待っててもらい、みんなとの連絡役になってもらおう」


 隼人との話し合いが終わったカトリは剛介のところへ小走りで向かっていった。隼人はエマのところへ駆け寄って行く。


 「エマ、今からカトリと竜崎は東条と福本を捜しに行ってもらって、オレは忘れ物を取りにもう一度建物の中に行ってくる。すまないが、エマはここでみんなの連絡役をやってくれないか?」


 「私はこんな所に一人で残されるなんてイヤよ! それにカトリと二人でこっそり決めちゃって! 私と剛介には何も教えてくれないのね!」


 先程のように、怒ることが珍しいエマだけに怒った時の勢いは激しかった。隼人もすっかり気合負けして身じろぎいだ。カトリの方を見ると、カトリもダメのハンドサインを出していた。隼人はカトリと剛介を手招きをして呼び寄せた。


 「自分たちは楽しい思いをして、俺とカトリは志織と陽二のお守に行くだけだなんて、いい加減にしろよ」


 剛介も怒り心頭だったが、今度は隼人に対して乱暴な態度はとらず、にらみつけるだけだった。


 “エマや竜崎の身の安全をコッチは一番に考えているのに、二人にはわかりそうにないな… 上手いウソもつけそうにもない… とにかく早くみんなをここから連れて帰るにはどうすればいいか…”


 隼人は考えてエマと剛介への説明のしかたを変えることにした。


 「さっきは勝手なことを言って悪かった、エマ、竜崎」


 謝っている隼人は二人に深々と頭を下げた。


 「竜崎はカトリと肝試しに行ってくれ。エマ、君はオレと一緒に福本と東条を捜すのを手伝ってくれないか」


 「もう、わかればいいんだから、そんなことしないでよ、赤城! 見ていられないでしょ! 私は一人にされなければそれで良いんだから! 剛介もこれならいいでしょ?」


 先ほどとは違う、隼人の真摯な謝罪と真剣な依頼をする姿を見ることで、いたたまれなくなったエマは剛介にも同意を求めた。


 「俺もカトリと一緒に予定通りに肝試しできれば別にかまわないがな」


 自分の思いどおりになった剛介は自分の満足した様子を隠すことはなかった。


 「志織たちを捜しに行くよ赤城! もう、早く頭をあげなさいよ」


 エマと隼人は二人して志織と陽二を捜しに行った。その時に隼人は離れたところから、カトリに向かって急ぐようにクチパクで話しかけ、カトリもわかったとクチパクで返事をした。


 「ゴースケ、ワタシたちも肝試しに行きましょう」


 カトリは剛介を伴って廃ホテルの中に向かった。



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