表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/22

魔道具師全体の課題三つ目・①

 魔術師が核に魔術を施してくれないということ。


 この難問の課題をどうするのか。

 ルーノとダンと顔を突き合わせて早々にサイは切り出した。


「それは魔道具師がみぃんな思っていることだけど、魔術師はこっちを落ちこぼれ扱いしてくるからなぁ」


 貴族出身のルーノでさえ、その扱い。平民の魔道具師は言わずもがな。


「俺は魔術師だけど、平民出身ってことで何を言っても鼻を鳴らす、嘲笑する、無視するのオンパレード。一応貴族と平民の身分差なんて無い、と表向きは言ってるが、そんなわけないのは平民出身の魔術師どころか貴族の魔術師も分かってる。抑々、教え導く立場の魔導師がそれだからな。魔導師長が貴族出身だが、平民のこと毛嫌いしてるし。だが、平民でも魔力は多いし、祝ぎ詞もきちんと扱えるのなら魔術師として採用は出来るからな。毛嫌いしている平民でも採用しなくてはならないほどに魔術師は少ない。国を守るための結界を一人で、張れるほどの魔術師は、今は居ない。魔導師長ですら他に誰か居ないと結界を張る魔術を扱えない。仕方なく、本当に仕方なく、平民でも魔術師に採用してる、と俺たち平民出身の魔術師に言い切っているからなぁ」


 トップがそんなんだから、ダンが変にサイに執着して魔術師勧誘をしてくるのもなんだか分かった。別に分かりたくなかったが。


「それこそ結界が張れる魔道具でも作れたら魔術師の魔力があまり減らないから負担減りそうなのに」


 サイがそんなことを言えばルーノとダンが口を大きく開けて放心する。

 何か変なことを言っただろうか、と不安になったサイに二人は同時に言った。


「その考えは無かった!」


 いや、なんで。


「なんでそんな考えが無かったのか不思議なんですけど」


 今度はサイが唖然とする。


「いや、結界は魔術師の仕事だと思い込んでいて」

「結界が張れるような魔道具なんて考えたこともなくて」


 ダンとルーノが同時に言うから何を言ったのか分からず、もう一度それぞれに言い直してもらう。


「つまり、ダンさんは魔術師の仕事だから結界を張る必要がある、と考えていて。ルーノ師匠は結界を張れる魔道具という発想が無かった、と」


 サイが確認すると二人が頷く。

 いや、思い込みということなのは分かるが、発想力が柔軟では無いとしたら、じゃあ電話に冷蔵庫に洗濯機はどうすんのさ。あれも発想力が必要だよね。と呆れた。一体、誰が考えたんだ。魔術師でも魔道具師でも無いと言うつもりか。


「え、それじゃあ風音具とか冷水箱とか洗浄箱とか、画期的な魔道具はなんなんですか。発想が無いとあんな画期的な魔道具が生まれるとは思えないんですが」


 サイが突っ込むとルーノが首を傾げた。


「画期的な魔道具ではあると思うが、発想というか、アレらは古代の魔道具を元に改良されただけだろう」


 なんだって?


 気付いたら存在していたから知らなかったが、電話も冷蔵庫も洗濯機も古代の魔道具だったらしい。


「初めて知りました」


「ああ、まぁ坊主が生まれる前からある魔道具だからなぁ。古代の魔道具だと知られていないよな。元は古代の魔道具だ。古語が使用されていたのと同じくらい古い時代だと思うぞ」


 ルーノが知らなくて当然、と首肯する。


「古代の魔道具、なんですか」


「ああ。古代魔道具帳という名前の魔道具全集があるだろ」


「ああ、ありますね」


 中々手に入らない本のようで、サイは実物を見たことが無い。ただ魔道具師を目指す者なら一度は耳にする機会がある名前とざっくりな内容を知っている。


「あの本は魔道具師長が持っていて」


 ルーノがあっさりと実物の在処を喋る。


「え、実在するんですか、あの本」


「実在する。確かに実物は出回らないもんな。というか、この国では魔道具師長が持っているだけかもしれない。分からんが。坊主の母上が王城の図書室勤務だったはずだろ? そこにあるかもしれんが、分からんってとこだな」


 サイがその本が幻だと思っていたのに実際にあることを知って驚くと、ルーノが抑々冊数が少ないことを話す。ローゼリアが王城の図書室勤務だったことをルーノは知っているらしく、魔道具師長以外が持っているのなら、そこくらいなものだ、と口にした。


「そうか。母さまならご存知かもしれないのか」


 後で母に確認してみようと思いながら先を促す。


「魔道具師長は、先代の魔道具師長が古代魔道具帳を持っていて、と言ってたが、代々受け継がれてると言った方がいいな」


「代々」


 つまり、古代の魔道具師が書いた本が次々に魔道具師に渡り、いつの間にか魔道具師長が受け継ぐことになった、ということだろうか。サイの疑問にルーノが頷く。


「まぁそれで、あの本に風音具や冷水箱なんかの原型があってだな。魔道具師長が言うには原理が書いてあったそうだ。そうだな、例えば冷水箱は箱の扉を開けると上下に分かれていて上に氷。下に冷やす物を置いて扉を閉めると全体が冷えるという仕組みだ」


 それはサイが前世の理科の時間に勉強したのと同じ仕組み。その辺りは前世もこっちも変わらないのか。でも確かに発想としては大きく変わることはないのかもしれない。


「なるほど。それを魔術師が魔術を使って核に魔術を施して冷水箱として売り出した?」


 サイがさらに尋ねると今度は魔術師視点でダンが答える。


「そうだな。冷水箱や洗浄箱は魔術の構築が比較的楽なんだ。風音具は小さい道具だけど、魔術の構築が意外と難しくて魔術師から見ても楽ではない」


「構築が難しい?」


 言っている意味が分からずサイは首を捻った。魔道具の説明にあたるため、再びルーノが答える。


「冷水箱や洗浄箱は、簡単に言えば水の魔術だからその魔術だけを道具に掛ければ良い。あとは核の魔力そのものと、水の魔力と魔術師の魔力も多少必要。壊れた魔道具は核そのものに魔力が無いから壊れるから、捨てるしかない。でもそれなりに安価だ。魔術が一つ或いは二つだから。風音具は、風の魔術を元に音を集める魔術と声を届ける魔術が組み込まれる。風の魔術を変化させて、音を集める。声を届ける。さらに風音具を使いたい相手ではなく別の相手に届けることになってしまうと困るから、それを防止する魔術だ」


 つまり、電話をかけて話すことと聞くことの魔術だけじゃなくて、電話番号を間違えないようにするということか。いやでも、間違った相手に届かないように防止する魔術ってなんだ?


「最後の魔術って、例えば私がルーノ師匠に風音具を使いたいのに、間違ってダンさんに使ってしまうことを止める魔術ということでいいんですか?」


 サイの確認に、ダンもルーノも頷く。


「坊主は頭が良いな。やっぱり。それで合っている。その間違い防止の魔術が結構難しいらしくてな。ダンは腕のいい魔術師だが、ダンでも神経を使うらしい」


 ルーノが肯定するとダンが補足する。


「あの魔術は色んな相手に間違わないように、特定の人に風音具が使えるように魔術を施している。その魔術は特定する関係上、使う人の魔力が必要なんだ。だからさっきの例え話で言うと、サイ君が風音具を使うのに、サイ君とルーノの魔力を風音具に込める。同時にその魔力を元に魔術を施すから、結果としていくつもの魔術が施される。そして、込められた魔力の持ち主にしか、風音具は使えない。だから間違った相手に使えない。つまり防止になる」


 それって、サイとルーノの魔力を使用した魔術を風音具の核にも使っているということで。互いの魔力が込められた風音具を使わないと使えないってことでは無いのだろうか。


「それって、込められた魔力以外の人とは使えないってことですよね」


「そうなるな」


 サイの考えを即答でルーノが肯定。


「つまり、私の場合、ルーノ師匠だけじゃなくダンさんにも風音具を使いたいと思ったら、さらにもう一個風音具が必要になる?」


「そういうこと」


 こちらはダンの即答。


「それって、人によってはいくつも風音具が必要になりませんか」


「なるな」


 二人共に即答する。

 ただでさえ高価な風音具を、使用したい相手の分だけ購入するって、平均的な平民だと一個も買えない風音具。子爵や男爵では一個持つくらい。伯爵以上で二個か三個。五個以上は相当お金に余裕がある家じゃなければ無理ではないのか。


「えっ古代魔道具帳だと風音具って、どうなっているんですか」


「紙を丸めて糸を通した形だな」


 サイは古代魔道具帳に電話はどういう風に登場しているのか、とても気になった。ルーノの説明に、それは糸電話じゃないか! と突っ込みたくなった。でもそうか。こっちってどう見ても電気無い気がするもんなぁ。電線も見当たらないし。仕組みの説明って糸電話が分かり易そうだよな。紙コップ作って糸張って、糸は弛ませないで、とか説明されているんだろうな。そりゃあ、そんな小難しい魔術が張り巡らされた魔道具が爆誕するわけだ。


「例えば、なんですけど。風音具の核に番号を付けるとか出来ないんですかね」


 電話番号付ければ混線、つまり掛けた相手と違う相手に繋がることが無さそうだよな。前世はそうして相手を特定していたわけだし。


「核に番号? どういうことだ」


 ルーノが前のめりになって尋ねてきたので、核に一番二番三番、と番号を割り振って、一番の風音具を持つ人が、五番の風音具を持つ人の番号を呼び出せば五番に届くみたいな、とサイが説明すれば、今度はダンが前のめりになった。


「えっ、そのやり方は良いな! それならかなり魔術の構築が楽になるし、他の人の魔力も不要だから、その手間が無くなる! そうか、言われてみればその方が楽なのに、全く思い浮かばなかった! 確かに番号を付ける案は大賛成だ! 風音具も安くなるぞ!」


 前のめりどころか大興奮である。


「言われてみれば簡単な発想なのに、元からそうして作られていたから、そう作らなければならない、と思い込んでいてそれ以外の考え方が無かったな。俺は面白い弟子が出来たみたいだ」


 子どもらしい柔軟な発想だ、とルーノも手放しで褒めてくれたが、どちらかと言えば、前世の記憶万歳なんだよな、とサイは困惑しつつ、弟子認定されたし褒められたからまぁいっか、と受け流しておいた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ