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中央区エルデン商街道②

 お爺さんの誘いを断り、人の流れに乗っかってさらに進む。


 お爺さんは流れのフリーマーケターだろう。この商街道では中央区にお金を払うことで、小規模な商売を行うことができるのだ。


 魔本産業、おろしの中心地であるこの商街道は、国内に限らず他国でもその存在が知られている。よって、魔本師が集まる商売どころの一面に加え、一種の観光地にもなっているのだ。


 あのお爺さんのような店無し商人、持ち店魔本師の卵たち、そして魔本師と商売をしたい商人など、多くの人々が商機を求めて集っている。そしてその存在を当てにする魔本師や、観光客が訪れる。その逆もしかりだ。


「サリー殿、さっきまでの空き具合はどこに行ったんだ……」

 商街道を進む中、エレンは中々にか細い声で私に問いかけてきた。


 さすがのエレンも疲労を隠せていない。そして、その声は喧騒に包まれて聞こえずらい。ここでは会話も難儀である。


 エレンは先ほど私たちが降り立った馬車乗り場のことを言っているのだろう。確かに、乗り場は空いていて余裕があった。そこに着くまでもしかり。エレンが疑問に思うのも無理はない。


「みんな、ここを何周もしてるの。一周じゃ全部見切れないから!」

 できる限り声を張って答える。後で水分補給をしないと喉がやられそうだ。


 ちなみに、この通りでゆっくり水を飲めるスペースは存在しない。フリーマーケットの前は暗黙のルールで空間があるが、そこはお客専用である。


 転ばないよう、後ろに迷惑をかけないよう、手早く歩きながら飲まなければならない。


「す、すごいな……」

 エレンは若干引き気味のようだ。口の端をぴくぴくとさせ、人の波を見通すように目を細めた。


「終わりが見えないでしょ」

 私の乾いた言葉にエレンは「あぁ……」とうなづいた。


 私はあらためて中央区エルデン商街道に集う彼らを見回した。何人もの人が布を広げて自分のスペースを作っている。


 この商街道で人一人が借りられるスペースは大きくない。しかし、規模はある。そしてすべてのスペースが連日借りられているのだ。


 ここには途方もないほどの出店があり、到底一周で見切れるものではない。一日中回る者もいれば、泊り掛けで散策する者もいるのである。


 なお、それでも見切ることはできないだろうが。


 ちなみに、商街道は四つに分かれていて、私たちが入ったのは東口。四つの経路が同規模で存在する。


 中央区エルデンに行くのにはここを通るしかないので、人にもみくちゃにされながら進むしかない。


「エレンさん、あともうひと頑張りだよ!」

 私は励ますようにエレンに声をかける。エレンは「う、うむ。承知した……」と力なく答えた。

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