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魔本市場の日陰者①

 魔本屋。この国のどこにでも存在するそのお店は、魔力を流すことで魔法を発動することができる、魔本というものを売っている場所だ。


 魔本は便利な役立つ道具、人生の相棒、お守り、さまざまな形で人類と共存している。


 魔本はどこにでもあり、国内で手に入らない場所はない。ただ、産業の中心地が二つ存在していた。


 東部ストリートと西部の魔本街である。


 東部と西部を中心にして、この国はあらゆる魔本、あらゆる技術、あらゆる魔本師が集まって大きな市場を形成しているのだ。


 その影響はとてつもなく大きい。この国には魔本関連の仕事があふれており、その数は数えきれない。


 貴族のような社会的地位が高い人から、ごくごく普通の一般人、男性女性、犯罪者、魔本関連の仕事に携われない人はいないと言えよう。


 それが仮に、身寄りのない少年少女であっても。



「「いらっしゃいませ~」」

 ミミズク型の釣り鐘が来店を知らせる。エレンは品出しを一旦中断し、お客対応のため入り口に向かった。


 混んでいる時はできないが、余裕がある場合はお客への声かけを行っている。買い物中、話しかけられたくない人もいるかもしれないがご容赦願いたい。大きなお店と違い、小さいお店は待っているだけではお客が来ないのだ。


 こういったことも大事なのである。


 時刻は正午前。向かいのお店の開店セールも落ち着き、お客の勢いは数日前と比べて衰えていた。


 世間ではお昼ご飯前。この時間に来店する人は少なく、細々とした事務作業を行うのに適した時間。


 例えば掃除がそうだ。お客がいないときにした方がよい仕事の筆頭。掃除を見られつと、「ここは汚いお店なのか?」とか、「掃除を怠るお店だ」とか言われる。


 理不尽である。


 ちなみに、こういったいちゃもんまがいのクレームを入れるのはほとんどが主婦かお爺さんだ。


 決して偏見ではない。店先に立ってきた経験から言っていることである。


 あぁ、そういえば。


 師匠からこの店を継ぐことになる前。あれは修行中のことだった。やってきたお客がずいぶん横柄な態度で私に接してきたのだ。


 高圧的で文句ばっかり。当時魔本の査定を任されるようになっていた私は、査定の際にごねられた。やれ「こんな子が査定できるのか」やら、「もっと高く買い取れんか?」やら。


 やはり見た目が幼いとお客に舐められる傾向があると思う。


 その点エレンは素晴らしい。凛々しい雰囲気に引き締まった体。未だに身に着けている騎士服は、本人のまっすぐな感じをさらに引き立たせている。舐められることもなく、防犯という面でも心強い。


 強そうな人がいるだけで防犯になるのだ。


 というか、男性さえいれば犯罪は減る。それが仮に師匠のような老いぼれであってもだ。


 エレンが来る前は私一人でお店を動かしていた。そこがこのお店のウィークポイントだったと思う。


 人手、防犯、魔本師がそろった。後は売り上げを伸ばすだけである。品揃え充実とマーケティングを考えていく必要があるね。


 頑張るかぁ!


「買取をお願い」

 気持ちを新たに、昼休憩前の業務をこなそうと立ち上がる。それと同時、カウンターにドサッと魔本が置かれた。

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