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カフェにて②

「その綺麗な赤毛はどうやって手入れしているの?」

 エヴァリットはテーブルに手をついて身を乗り出すと、顔を近づけてきた。


 ふわっと花の匂いが広がる。香水でもつけているのだろうか。


「エヴァリット殿、近いぞ」

 彼女の肩に手を置いて押し返す。「いけずぅ」と漏らしてこちらを睨んできた。ちなみに、ぷくぅと頬を膨らませている。


 私はそれを無視してコーヒーを飲んだ。


 素材の鮮度を理由にした退出は失敗してしまった。エヴァリットは私が持っている素材の保存年数を知っていたのだ。サリー殿のメモにあった情報とも齟齬はないので、嘘を言っているわけではない。


 というか、先に気づくべきだった。魔本屋にいる少女という時点で、ただの少女の可能性は低い。それに、本館での足取りも軽かった。足しげく通っているのかもしれない。


 作戦は失敗し、立ち去る理由がない。仕事中ということで押し切ろうかとも思ったが、サリー殿に気分転換も大事といわれている手前、無理やり納得することにしたのだった。


「エレンちゃんは演劇は好き? 私はねぇ――」


 しゃべっていて感じるが、エヴァリットは外見に似合わず大人のように思う。言葉遣いやしぐさはおかしいが、黙り気味のこちらを気遣うようにして話題を振ってくる。


 話題は幅広く、昔の物から流行物まで詳しいように思う。半分以上、私にはわからないものだ。


 気遣いと知識にあふれた人、そのように感じた。


 それに比べて私はどうだ。モノを知らない、常識を知らない、剣しか知らない。エヴァリットとしゃべっていて、改めて自分の不安定さを実感する。


 ここに来る途中、振り払ったと思っていた不安が再び、私の心に靄をかけていた。


 そんな私がサリー殿の役に立てるのか。負担になっていないか。


 役に立たなければ、サリー殿の助けにならなければ、私はまた、


 ――居場所を失ってしまう。


「エレンちゃん?」


「!?」


 いつの間にかエヴァリットは私の横にいたようである。覗き込むようにして私を見つめていた。彼女は目が合うと「ん?」と首をかしげた。「近いぞ」と発したつもりが口をパクパクしただけに終わる。


「エレンちゃん、悩みとかあったりするの?」


「何のことだろうか。――ほら、エヴァリット殿、コーヒーが冷めてしまうぞ」

 声が震えないように気を付けて否定する。さらにコーヒーに話題を移す。エヴァリットの視線を避け、「私も」と自分のコーヒーに手を伸ばした。


「ウソ、だよね」

 エヴァリットは私がコーヒーに伸ばした手を、小さい両手で優しく包み込んだ。


「話してごらん?」

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