表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/43

カフェにて①

 少女の後をついて離れに入る。こちらは本館と違って紙の匂いはしない。その代わり、コーヒーの良い香りが空間を満たしていた。


 どうやら一階がカフェのようだ。カウンターとテーブル席が配置されており、カウンターにはグラスを磨く店員がいた。

 

 本館と同じ暖色のランプが釣り下がっており、店内を優しく照らしている。大きな窓があるが、カーテンが閉められている。


 少女に案内されたのは奥の二人席だった。


 少女からの「座って」という言葉にうなづく。腰かけた椅子は厚いクッションが敷いてあってふかふかだ。クッションはしっかりと腰を沈めて離さない。


 ……ついてきてしまった。 


 一瞬の攻防。少女の衝撃的なセリフを聞いた私は少しの間固まってしまった。その隙をつかれ、半ば強制的にカフェへ連れてこられた。


 ニコニコとした笑顔で座っている少女を見る。視線が合った。彼女が考えていることが分からない。


 一体、何をしゃべればいいのか……。


 いや、なぜ私はしゃべる方向で考えているのだ。


「いちごパフェとホットコーヒー、二セット頂戴」

 沈黙を破ったのは少女の方だった。しかし、それは私への言葉ではなくカウンターに控えている店員への注文。


 ほどなくしてパフェとコーヒーが届いた。


「私はエヴァリット。エヴィと呼んでほしいわ」

 少女――エヴァリットはそう名乗ってコーヒーに口をつける。そして「あなたは?」と続けた。


「私はエレン・フォ――エレンという」

 フォーディンの姓は捨てた。未練がないと言ったらウソになる。あの経験を乗り越えたというつもりもない。しかし、今はサリー殿の魔本屋のお手伝いだ。


 仕事を全うしなくてはいけない。やはりすぐに帰らなくては。


「エレンちゃんかぁ。いい名前だね」


「エヴァリット殿」

 私がそういうと、「エヴィって呼んで?」と返ってきた。それを無視して言葉を続ける。


「私は今、買い出しを頼まれていてな」

 地下売り場から持ってきた素材を見せる。


「痛んだりしてしまうとよくない。ここまでついてきておいて申し訳ないが、帰らせてもらいたい」

 我ながらいい理由づけではないだろうか。これなら席を立つ理由としてそれほど違和感はない。


「では、失礼する」

 エヴァリットに挨拶をして立ち上がる。しかし、「待って」と彼女から声がかかった。


 エヴァリットが笑みを浮かべる。しかし、その笑みは今までとは違うしたり顔に思えた。


「エレンちゃんが持っているその素材、全部日持ちするやつなんだよねぇ」

 そして、エヴァリットは素材を指さし、「それは数年、これは十数年も保存できるね」とも続けた。 


「……なに?」


「ウソでしょ、その言葉」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ