崖登り
「やっぱり少しでも早く前世の水準に追いつくためには実戦経験を積むのが一番だと思うんだよな。けど死にかける修行方法は全てアリスに禁止されてしまった。
――と言うわけで俺は今からこのドラゴン共の巣である崖を武器なしで駆け下りてここまで戻ってくるから、現し身は俺の命が危なかったら助けに入ってくれ。分かったか?」
『……いくら死ぬ危険性が少ないとはいえ、バレたらアリスにまた怒られるぞ。いいのか?』
「平気平気! アリス宛てに今言ったのと同じ内容が書いてある手紙を残しておいたから大丈夫だと思うぞ!!」
『……やれやれ』
現し身は丸腰で崖の上に立っているデュランをなんとか説得しようとしたが、準備運動までしているしこれは止めるのは無理だなと悟って説得を諦めた。
現し身はデュランから預かった天晴と脇差しを腰に差し、助ける準備を終わらせた。
デュランは準備が終わったのを見届けるとドラゴンの群れの真横を駆け下り、崖下の地面まで辿り着くとそのまま崖を駆け上ろうとしたが。
怒り狂ったドラゴンの群れが放ったブレス攻撃が近くまで迫っていることに気がつき、崖を蹴ることで回避することは出来たが状況は最悪だった。
四方八方をドラゴンの群れに囲まれて武器も持っていない子供、こう書けばこの状況の最悪具合とこれを狙って創り出したデュランのイカれ具合がよく分かるだろう。
……こいつ、本当に頭おかしいわ。
「アハハッ、楽しくなってきたァッ!!!」
そう叫んだデュランは光属性の魔力で創り出した強烈な光でドラゴンの群れの視界を潰すと崖登りを再開した。
しかしドラゴンは目が見えなくても鼻と聴覚も発達しているため、状況はよくなってはおらず。
ドラゴンがばらまくようにブレス攻撃をするようになったため、むしろ悪化していたが。デュランにとっては予定通りである。
――そうデュランの修行とはこの状況で崖上まで辿り着くといものなのである。よい子のみんなは真似しちゃダメですよ。
「――今最高に生きてるって感じがする、くぅ~やっぱり修行は楽しいぜ!!!」
そう叫びながら自身を食おうとしてきたドラゴンの頭を踏み台にして跳躍し、別のドラゴンへ対しても同じような対応で崖上近くまで登ってきていたが、群れのボスと思わしき巨大なドラゴンがデュランを睨みつけており。一筋縄ではいかなそうだった。
「……アイツ強ぇな、流石に丸腰じゃ勝てねぇ。
――だが! 今はアイツに勝つための修行じゃねぇ!! 悪いが素通りさせてもらうぞ!!!」
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
デュランは近くのドラゴンを踏み台に飛び上がると空中で体をひねりそのまま魔力で創り出した足場を蹴って更に加速し、群れのボスの鼻先に全力のキックをぶち込んだ。
そして群れのボスが上げる怨嗟の声を無視してその背中を踏み台にして飛び上がり、なんとか崖上に辿り着くことが出来た。
「現し身! 武器を返してくれ!!」
『……なるほどここからは実戦経験を積むための修行を怒り狂ったドラゴン達相手にやるのか、正直あのドラゴン達には同情してしまうな。クハハッ』
現し身はそう嗤いながら武器をデュランへと返すと、自身の体を構成する魔力を使って刀を一本創り出した。
現し身は群れのボスのブレス攻撃をそのまま返して見せたデュランの姿にこれはもう手助けはいらんだろ、と思いながらも万が一デュランが怪我をしてアリスが泣く姿を見たくなかったので真剣にデュランの修行を見守った。
そして闘いが始まってから三十分後。現し身の予想通り、群れのボスを含めたドラゴンの群れは半壊していた。
デュランはこれ以上ドラゴンを殺すとこの山の生態系が崩れてしまうため、ちょうどいいところで闘いを止めた。
その後は下に降りて大量のドラゴンの死体を解体し、今日の晩飯が豪華になるな。と暢気なことを考えながらデュランはクラインハルト邸へと帰ったが。
現し身の予想通り激怒していたアリスにボコボコにされ、顔を真っ赤に腫れ上げさせながら正座をさせられることになるのでした。
「こ゛へ゛ん゛な゛さ゛い゛、こ゛は゛ん゛く゛た゛さ゛い゛。……はら、へった」
「絶対にダメ! 丸一日そこで反省していなさい!! このおバカ!!!」
……私はバカですww、顔に直接書いてあって草。




