闇夜の誘い
「なるほど、確かにこれは不気味な世界だ。生き物のいない影の世界――裏世界とでも呼ぶか。
デュラン、裏世界は現実世界と比べて闇属性の濃度が高い。気をつけろよ」
「……言われんでも分かってるってぇの。ナハトの方こそ久々の実戦で鈍ってないか? 無理しなくてもいいんだぞ??」
「そんな柔な鍛え方はしていない! 心配無用だ!!」
「分かってる、冗談だっての。怒るな怒るな、腹が減るだけだぞ?」
「ハァッ、まったく」
デュランはナハトが久々な実戦で緊張気味だったので緊張をほぐしてやろうと思って少しからかったのだが、逆効果だったようなので軽口を叩きながら探索に戻った。
それからしばらくの間は前と同じで収穫がなかったが、アイの探知へ引っかかっても反応が消えない存在がいることに気がついて全員で急行した。
するとそこにいたのは人族で――ナハトと同じ黒髪黒目で宇宙服のような機械も身につけていなかった。
「お前は何者だ! なんでナハトと同じ色をしている!! 答えろ!!!」
「貴様、剣神の生まれ変わりか。俺様の名前は地崩だ。
お前の天晴と同じく、付喪神になっただけのただの刀だ」
「……な~るほどね。ナハト、コイツの存在を知ってたか?」
「いや、私も今始めて知った。通りで見つからないわけだ。
まさか付喪神になっていたとは……闇竜ファフニールの爪を材料にしたのが原因かもな」
デュランは相手の正体がナハトの相棒だと知ると最大限の警戒をしたが、地崩は争う気はないようで「ジュースでも飲むか、何もない世界を探索して疲れているのだろう? 遠慮せずに呑め。
俺様は貴様のことが大嫌いだが、戦争する気はない。信用するかは貴様次第だがな――剣神」と言ってきた。
「あっそ、じゃあもらうわ」
「デュラン!!?」
「――ほう」
デュランは地崩の『俺様は貴様のことが大嫌いだが、戦争する気はない』という言葉を信用したわけではないが『今の俺は弱いし、毒物だったところで大して戦力は低下しないだろ! それで敵かどうか分かるのならもうけもん!!』と考え、すぐにジュースを飲んだ。
……勿論、この後アリスがボコボコに伸しました(笑)
「――それで地崩さんがこの世界を創ったの? なんの目的で??」
「ああ、俺様がこの世界を創った。目的はそこで倒れているアホが我が主から託された恒久的な世界平和という夢を見守るためにこの世界を創り出した。
外側から見ないと分からないこともあるからな。社会のはみ出しものなどを気まぐれでこの世界へ招き、出入りするためのパスポートを渡したりもした。
恐らく貴様らはそいつらが結成した闇夜の誘いとかいう組織を調べにきたのだろう? 必要な数のパスポートは渡すから俺様の邪魔をするなよ」
「分かった、またね地崩さん――デュラン! いつまでも倒れてないの!! 調査を再開するよ!!!」
「前が見えねェ」
デュラン達は地崩から必要な数のパスポートをもらってからその場を離れて調査を再開したが、一定の距離まで近づくと何らかの方法で気がつかれて相手に逃げられてしまう。
そこで作戦を変更することにし、スペースファルコンを裏世界へ呼び出した。
そして上空一万メートルからしばらく地上を索敵し続けていると、闇夜の誘いの構成員と思われる相手を見つけたので直ぐさま急降下し。スペースファルコンで押し潰して捕まえた。
同様の方法で三十人ほど構成員を捕まえて尋問したが全員口が硬く、情報を一切漏らさなかった。
なので――
「アリス、次はコイツを洗脳してくれ。コイツも口が硬い」
「うん、分かった!! じゃあ今までの自分にバイバイしようね~~」
「――止めろォォオオオオオオッッッ!!!!!!!!!」
「……ステラ、なんか明らかにこっちの方が悪者じゃないか? 罪悪感がすごいのだが」
「そうですね、でも犯罪者に人権はないので別にいいのでは? 人様に迷惑をかけることしかできない害虫のようなものですし」
――一人一人洗脳して闇夜の誘いの情報を奪ったが、相当に大きい組織なようだったのでこれ以上は手に余ると判断し。デュラン達はここらで手を引くことにした。
幸いなことに捕まえ方は確立できたので全員をスペースファルコンに乗せて現実世界まで運んでからホスピタル王国の騎士団へ受け渡し、天狐と狼鬼に別れの挨拶をしてからホスピタル王国を旅立つことにした。
約束通り少数精鋭の特殊部隊へ医者兼剣士として入ることになった空狐は、十年後の決戦までデュランが弟子として育てることが決定したので旅へ仲間として同行することになった。
「じゃあね母さん! 土産話をたくさん持って帰るから、それまで元気にしててね!!」
「妾はまだ三十五歳じゃ。年寄り扱いするでない」
「三十過ぎたらみんなおばあちゃんでしょ? 母さんは若作りだけどね」
「空狐! デュラン殿に失礼なことはするなよ!! お前は我ら獣人族の代表なのだからな!!!」
「言われなくても分かってるよ、父さんはうるさいな~」
デュラン達はそんな親子の会話を温かく見守り、話し終わってからデュランの親友の国であるスミス王国を目指してホスピタル王国を旅立つのだった。
……世界中の三十代女性に喧嘩売ってて草。




