筋肉祭りと恫喝
「そう言えばナハトは今の状態に慣れる修行をしなくていいのか、大分感覚違うだろ?
俺みたいに一週間くらい修行で使ってもいいんだぞ、別に急ぐ旅じゃないしな!!」
「……いや、別にいい。私はあくまでも同行者だからね、デュランが気にする必要はない。地道に慣れることにするよ。
それに次の夢幻大戦争まで後二年だ。世界最強の剣士を決める大会なのだから、当然デュランは出場するのだろう? ならば寄り道してる時間はないと思うが」
「う~ん、まあそうだけどよ。ナハトが強くなってくれた方が俺的には嬉しいんだよ、何かいい方法はないかな?」
デュランはナハトの言い分はもっともだと思ったが、自分だけが修行するのも申し訳なかったので少しの間考えてから「あ、そうだ! 俺へナハトが百倍くらいの重力をかければいいじゃないか!! そうすれば二人同時に修行ができて一石二鳥だぞ!!!」と叫んだ。
「なるほどその手があったか!! では十倍からいくぞ!!! デュラン、これくらいで潰れるなよ!!!!」
「俺の筋肉をよく見てみろ! これが十倍程度の重力に負けると思うか!! 筋肉は裏切らない!!!」
「……参加したい」
「デュラン頑張れ~♡♡♡」
ナハトと口論をしながら上着を脱いだデュランはそれを荷台のアリスへと投げ渡し、荷車を引っ張ったまま重力をかけるようナハトに言った。
そして剣も飛び入り参加したことで、暑苦しい筋肉祭りが始まりました。
「――クソッ、だったらこれでどうだ!! お望みの百倍だァッ!!!」
「まだまだ行けるな!! 二百倍でもいいぞ!!!」
「なんだとォッ!! だったら三百倍だァァッッッ!!!!」
「アハハッ、やっと修行らしくなってきたァッ!!! 俺はまだまだ行けるぞォォッッッ!!!!」
そうしてデュランとナハトはお互いに煽り合いながら重力の倍率をどんどん上げていき、最終的に両者の限界倍率である千倍の重力を維持した上で気合いを相手へぶつけて妨害しようとしていますね。
どちらも目や鼻から血を垂れ流しながら限界をあっという間に超えていくこの危なすぎる修行はホスピタル王国へ到着するまで続きましたが、結果は引き分けでした。
「「――ガアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!」」
「……楽しい」
強いて言うのならばこの修行を最後まで楽しめた剣の勝ちかなと思いましたが、二人も一応楽しんでいたのでやっぱり引き分けで。そもそも勝利条件がないため勝者を決められませんからね。
……脳味噌まで筋肉でできてんのかコイツら、バカすぎて草。
「……で、何があったの。正直に喋ったら何もしないから嘘は吐かないでね?
あぁ、デュラン達には聞こえないよう結界を張ってあるから逃げ場はないよ――よかったねステラ」
「は、はい、正直に言います! なのでもう恋情は奪わないでください!! お願いします!!!」
「う~ん、それはステラの態度次第かな? 素直に僕の言うことを聞いてくれれば何もしないよ??
もしも交渉が決裂したら、ナハトくんが洗脳を解けちゃうから――ステラの頭を直接ぶっ壊すけどね」
ステラは目に光のないアリスへ対して顔が引きつるほどの恐怖を感じていたが、自業自得だからしょうがないと開き直り。今までの愚行について誠心誠意謝って許してもらった。
それからナハトへステラが向けている恋情を見透かしていたアリスから「本気なの?」と質問されたので、ステラは恥ずかしさで頬を紅く染め上げながら首を縦に振った。
「……ふ~ん、そうなんだ。じゃあこれからはナハトくんも僕達の家族だね! 結婚式はどこにする!!」
「結婚式はなしでいいかなと思っています、あの人の妻になれるだけで幸せですから」
「そんなのもったいないよ! せっかくのステラの晴れ舞台なんだからさ!! なんなら僕がお金を出すよ!!!」
「あははっ、ありがとうございます……」
ステラは先程までとは打って変わって笑顔で話しかけてくるアリスのことが本当に怖かったが、顔へ出さないよう必死に頑張った。
そしてもう二度とアリスを敵へ回さないと心に決めた後、二人でデュラン達の修行を応援をしながら見守っていましたが。
ホスピタル王国の近くまで辿り着いてデュラン達の修行が終わった時にはもう暗くなっていたので、荷車から天幕を取り出して全員で野営の準備を始めました。
その後デュランとアリスの二人でイチャイチャしながら作った晩飯のミネストローネを全員で美味しくいただき、お腹一杯になったデュランはアリスの手を引いて同じ天幕の中へ消えていった。
それを目にしたナハトとステラも二人で同じ天幕へ話ながら歩き出し、眠る必要のない剣は修行の続きをするのでした。
……リア充爆発しろ。




