精霊魔法と始源魔法
精霊魔法。それは精霊の声を聞くことができる長い耳を持つエルフ族だけが使える魔法である。
人族を含めてこの世界には十四種類の人型種族が存在し、特殊な魔人族以外の種族は全て魔法を使うことができるのだが。
エルフ族の精霊魔法は精霊と思念で直接会話することで魔法を使うため、精霊へ意思を伝えるための呪文の詠唱を必要としない。
そのためデュランが世界を変えるまではエルフ族は恐れからか、他の多種族以上の迫害を受けていたが。今は関係ないので置いておく。
アリスの開発した始源魔法はデュランの天下無双を見本として完成したものであり、魔力を体外で光属性と闇属性へ分けてからもう一度合成することで魔法のレベルを天下無双状態のデュランが踏み込んでいる神の領域に届かせたものだ。
そのため本来ならば雷・炎・風・水・土の五つの属性の内どれか一つに適合し、適合した属性の魔法しか使えないというルールを破り。属性に縛られない魔法を使うことができる。
それ故に始源魔法は空間へ干渉したり自然現象の再現などができるため、アリスは自然災害級の攻撃を使い放題というバグじみた存在である。
とはいえ。今回はあくまでもドラゴン牧場でデュランが今の状態に慣れるための修行をするだけ、そこまで大規模な魔法を使う必要はない。
なのでアリスはデュランの魔力の鎧でちょうど壊れるくらいの石ころを始原魔法で大量に出そうと決め、即興で技名を考えた。
……ちなみにアリスは詠唱はロマンだもん!! が口癖であり、言う必要のない技名をいつも叫んでいる。
「手加減はいらないからな、アリス! 来い!!」
「分かった! 行くよデュラン!! 始原魔法――ライトストーンレインッ!!」
デュランは四方八方から襲いかかる石の雨を迎撃することなく駆け出し、最低限の動きで石の雨を切り抜けようとしたが。
少し力を入れただけで前の倍以上動いてしまうため、完全に避けきることができず。何度も地面に叩きつけられてしまう。
それでも少しずつ攻撃を避けられるようになっていくのが楽しいのか、デュランは笑顔で修行し続け。三日目にはほとんど今の状態へ慣れかけていた。
「始原魔法――ストーンチェイサーレインッ!!」
「アハハッ、楽しくなってきたァッ!!!」
しかしデュランは前と同じ水準まで戻すだけではダメだと考え、石の雨へ追尾機能をつけるよう頼み。修行の難易度を更に上げるのでした。
そして五日目には追尾する石と石がちょうどぶつかって壊れるように石の軌道を上手く誘導したり、 回天剣舞の要領で石が体にぶつかった瞬間――回転しながら石の勢いを受け流して別の石達へぶつけたりできるようになり。
上がった身体能力と魔力の流れを前以上の精度で操ることができましたが、それで満足することなく。デュランはアリスと次の修行へついて考えるのでした。
……ドMかな。
「すごいよデュラン! 五日でもう完全に慣れちゃうなんて!! 次の修行はどうする!!!」
「う~ん、そうだなぁ。じゃあ次は実践形式の模擬戦にするか! 現し身を五体出して闘うからアリスはさっきの石で時たま妨害してくれ!」
「分かった! デュラン頑張って!!」
「あぁ、がんば――ッ!? 誰だ!!!」
デュランはそうして次の修行の内容が決めると修行を再開しようとしたが、一瞬何者かの気配を感じ取り。冷や汗を流しながら天晴を抜いた。
「……見つかった」
「えっ、剣!!? お前いつからそこにいた!!!?」
「……最初から」
「――マジで!!?」
デュランは感じ取った気配の正体が剣だったことに驚愕し、最初からいたという剣の言葉からもしも剣が敵なら不意打ちで殺されていたと考えて肝が冷えたが。同時にその底知れない才能がどこまで伸びるのか想像してワクワクした。
「……よし! 一緒に修行しようぜ剣!! アリス、現し身じゃなくて剣を相手に修行する!!! だからさっき言った通りにしてくれ!!!!」
「分かったよ! 二人とも頑張って!!」
「……嬉しい」
なのでデュランは自分の修行をしながら剣へ稽古をつけることにしたのですが、元々格上の剣に技術を与えてしまったことで七日目の昼には完全敗北しました。
負けたことが悔しくてデュランは一時間ほど大泣きしましたが「この敗北が俺をもっと先まで連れて行ってくれる!! 泣いてる場合じゃねぇ!!!」と叫んでから修行を再開するのでした。
……やっぱりドMだったわ。
「ナハト! 迎えに来たぞ!! カッコイイの作ってもらったか!!!」
「カッコイイかは分からないがいい物を作ってもらえたと思うよ、デザインが気に入った。
……デュラン、それはそれとして風呂に入った方がいいよ。臭いから」
「アハハッ、悪い悪い。そういやさっきまで修行してたんだった。
リーベ!! 風呂借りるぞ!!!」
「ハァッ、勝手に使いたまえ。というか、そんなことで一々話しかけてきてほしくないね」
デュランはリーベの小言を完全に無視して風呂場へ向かって走って行った。
その光景を目にしたリーベは頭を抑えながら「可能ならあのバカを実験体にしたい……」と呟いてから研究室へ向かって歩いて行った。
それから全員でリーベの秘密基地へ一晩泊まり、出発前にリーベへ対しても事情を説明して協力をお願いしたが「研究で忙しい、他を当たりたまえ」と素気無く断られてしまった。
デュランはその場の全員と話し合い。もうギガント王国への用事がないことを確認し、何でか顔が紅いステラと共にギガント王国を旅立った。
それを見届けたリーベはデュラン達の闘いをサポートをするための研究を再開するのでした。
……ツンデレで草。




