夢幻の彼方へ
「久しぶりだねデュラン。会って早々で悪いんだが、この腕時計を少しだけつけてみてくれないかな? 危険な物じゃないから安心してくれたまえ!!」
「――説明なしでつける訳ないだろ!? 全然安心できないからな!!! 取り敢えずそれが何か説明しろ!!!!」
「……う~む、そうだな。では少し面倒だが簡潔に説明すると、これの名前は『アクセルブースター』という。
デュランの魔法である天下無双を使っていられる限界時間を五分から十分に伸ばすことができる腕時計型デバイスだ。
百年前にアリスから依頼されて作った――さあ、説明したからつけろ!!」
「簡潔すぎるだろ!! 一から十まで全部説明しろ!!!」
デュランはアクセルブースターという腕時計型のデバイスを無理矢理取り付けようとするリーベの手を押さえつけながらそう言い争っていたが、アリスから「僕がお願いした物だから危険はないと思うよデュラン、試しに着けてみてよ」と言われてしまった。
アリスにそう言われた以上はもう抵抗できないと悟り、覚悟を決めて左腕に着けたが特に何もなく。むしろ光属性の魔力を取り込むのが楽になったため驚いた。
「な、なんだこれ!? 魔力の流れがなめらかすぎて気持ち悪!!? なんなんだこの機械は!!!!」
「ハハハッ、どうかな私の最高傑作は!! そのデバイスの中にはデュランのありとあらゆるデータが入っている!!! つまり!!!! デュランを徹底的にサポートするための装置というわけだ!!!!!」
リーベはそう叫びながらドヤ顔をしていたが、なんかムカついたのでデュランは全力で張り倒した。
「やかましいわこの変態がッ! 俺が生まれ変わったことを知っていやがったな!! これは前世の俺のデータだけじゃ作れねぇだろ!!! どうやって見てやがった!!!!」
「このテレビは世界中のありとあらゆる場所を映し出せる優れものでね、これでデュランが赤ん坊の頃から観察してた。そう言えば女物のワン――」
「――リィイべェエエエエエエエエエエエッッッッ!!!!!!!」
デュランがアリスに絶対知られたくない秘密をリーベが暴露しようとしたので思いっきり天晴で斬りつけたのだが――その攻撃は|リーベの体をすり抜けた《・・・・・・・・・・・》。
「我が身は剣となりて敵を討つ――天下無双ッ!!」
「――な、何故?」
デュランは前に似た能力の魔王と闘ったことがあったので天下無双を短縮詠唱で使った後、同じ能力だろうと当りをつけて別の位相へ移動していたリーベを捕まえると。
そのまま外に連れ出してからたっぷりとオハナシをしたらキチンと理解してくれたのでリーベを解放したが、その時にはもう短縮詠唱の天下無双を使ってから三十秒が経過していたので。デュランは目を見開いた。
『デュラン様、天下無双の短縮詠唱をしてからもう四十秒です。
アクセルブースターの補助があっても限界を超えてしまう可能性があります、天下無双の解除を推奨します』
「えっ――ハァッ!?? なんだお前!!!!」
リーベの言っていた通りとんでもない発明だと思っていたデュランは、アクセルブースターから投影された少女から天下無双を解除するよう言われ。驚きながらも言われたとおりに解除した。
そのまま謎の人物の登場にどうしようか悩んでいたデュランだったが、アリスが「アイちゃん、お久しぶり~~元気にしてた?」と話しかけたので。急いで確認を取ってみると「汎用サポートAIのアイちゃんだよ、仲良くしてあげてね!!」と告げられた。
「……分かった」
デュランがアリスからのお願いを聞かない訳ないので、全てを飲み込んでそう短く返事をした後。アイにアクセルブースターは何ができるのか質問してみた。
『では、説明します。このアクセルブースターはデュラン様のサポートと天下無双の負担軽減のためリーベ博士が開発したものです。
普段の魔力の流れを操りやすくしたり、天下無双の限界時間を短縮詠唱なら十秒から一分に。完全詠唱なら五分から十分まで伸ばすことができますし、その反動も十分の一ほどにできます。
後はスペースファルコン、スペースドラゴン、(仮称)空中戦艦の三つのメカを管制する機能もあります。
それから何らかの緊急事態で詠唱が使えない場合でもアクセルブースター側面のボタンを押せば三十秒間だけ詠唱なしで天下無双を使うことができます。エネルギー量の関係上、一日一回だけですが。
――何か質問はありますか?』
「まてまて! 一気に喋るな!! 三つのメカ以外は大体理解したけど、普通の人はそのマシンガントークについてこれねぇからな!!! もう少し小分けにしたほうがいいぞ!!!!」
『AIの私にも気を遣ってくれるデュラン様、好き♡♡♡』
「うん? ――リーベ、テメェ!! アイが俺に対して愛情を持つようプログラムしやがったな!!! こんなん人格破壊だろ!!!! 今すぐ元に戻せ!!!!!」
デュランはアイの話があまりにも長かったので注意したのだが、なんでかアイが初対面の自分のことを好きだと言ったのでプログラムが弄られていると判断してそう叫んだが。リーベは首を振りながら「そんなことはしていない」とその疑いを退けた。
そして多少は好意を持つようにプログラムを組んだが、あくまでもデュランのことをリーベと一緒に観察する内に恋心が芽生えたらしいと伝えた後。「いい意味で想定外だ、興味深い」と喋りながら研究に戻ってしまった
「……まあ、そういうことなら別にいいか。これからよろしくな! アイ!!」
『よろしくお願いします、デュラン様♡♡♡』
デュランはそうしてアイのことを受け入れると、アクセルブースターを撫でてからアリスの方を向いた。
……そしてアイは絶頂した。
「それじゃあアリス、三つのメカがどんなもんか。外で見ようぜ!!!」
「そうだねデュラン!! 僕も初めて見るからとても楽しみだよ!!!」
「……子供か」
「微笑ましいじゃないですか、ナハト様」
「……メカ??」
デュランはアリス達と共に秘密基地の外まで出ると早速三つのメカを全部呼び出した。
そして天から舞い降りた二つのメカに――全員が度肝を抜かれた。
「キュァァァァッッッッ!!」
天を裂いて現れた片割れであるスペースファルコンは空中で少しの間ホバリングしてから着地すると、デュラン達の前でうやうやしく頭を下げた。
もう片割れであるスペースドラゴンは特に挨拶などをすることなく、その場へ座り込んだ。
最後にリーベの秘密基地の中から出て来た超巨大戦艦は空中で今の状態のまま待機を選択した。
『スペースファルコン! バイクモード!!』
デュラン達がポカンと口を開けて驚いているとアイがそう声を上げた。
するとスペースファルコンが巨大な体を圧縮しながら変形し、変形が終わると車体の側面をデュランに向けてきた。
「……乗れってことか、分かった」
「デュランデュラン! 僕も僕も!!」
「あぁ、一緒に乗ろう」
すぐにその意図を読み取ったデュランはハンドルを握った。
しかしバイクと車の免許は少し前にウィンクルム連合王国で取ったが、目の前の未知の乗り物を操れるか不安だったのでアイへ訊いてみると。運転が原付よりも簡単だったので、拍子抜けしながら最高速度まで一気に加速した。
「アハハハッ、すごいすごい!! 景色がすごい速さで流れてく!!!」
「アリス! 空も飛べるみたいだぜ!! いくか!!!」
「そうだね行こう! 夢幻の彼方に!! そしてそのさらに先へ!!!」
デュランとアリスがそう会話した後、バイクはその勢いのまま空の上へ飛び出し。夜になるまで二人は大空の中、ドライブデートを楽しんだのでした。
……色々と濃くて草。




