放送と旅立ち
「――初めまして、いやお久しぶりですが正しいのか? まあいいか、俺の名前はデュラン・クラインハルト。デュラン・ライオットの生まれ変わりだ。
今日は伝えたいことが二つほどあってテレビ局にお邪魔させてもらっている、少し俺の話を聞いてほしい」
剣との殺し合いから三日後。
デュランはウィンクルム連合王国の上層部やヘルト達との会議の結果、デュランの存在を公表した上で各国の協力を募るべきだという結論が出たのでデュランは嫌々ながらも朝のニュース番組に出演していた。
そのため世界各地のお茶の間の3Dホログラム投影装置やテレビには髪と目の色が黄色なのにも関わらず、宇宙服のような機械を着けていない少年が映ったかと思えば。剣神デュラン・ライオットの生まれ変わりを名乗り、世界中の人々は本当なのかと混乱していたが。
話があると少年が言ったので、固唾を呑んで次の言葉を待った。
「一つは前世の俺の妻であるアリス・リーフグリーンともう一度結婚するってこと! もう一つは世界中の人々を招待する盛大な結婚式を執り行うってことだ!!
まあ流石に本当に全人類を1カ所に集めることなんて不可能だから各国である程度人数はまとめてもらうことになると思うが、抽選に外れた人も楽しめるように結婚式当日は24時間分テレビの放送時間をもう既に買ってあるから安心してほしい」
デュランはそう言った後、結婚式の招待状を手に持ってから続きを話した。
「全ての国へ招待状を二年かけて配った後で四年の準備期間を経て俺が11歳になってから結婚式を開催する。ちなみに10歳のタイミングで結婚式をしないのは俺が夢幻大戦争に参加したいから以外の理由はない。
それじゃあ言いたいことはこれで全部だ! 六年後にまた会おう!! じゃあな!!!」
生放送だったのでのデュランも少し緊張していたが、それをおくびにも出さないで撮影を終わらせた後。
本当の五歳児のようにアリスへ甘えてめいいっぱい甘やかされてからヘルト達と作戦会議を開始した。
……デュラン、前の会議の時に猫耳と尻尾を見られたからって吹っ切れすぎだろ。しんのすけか、お前は。
「……というわけで俺とアリスの結婚式の招待状を渡すのを口実に各国の協力を募るのはもう決まってるけどさ。
俺はそれと並行して世界各地で強いやつを誘って少数精鋭の特殊部隊を編成しようと思ってる。
何せ相手は神だからな、まず間違いなく俺達は不意を打たれて後手に回る――その時即座に動ける戦力が必要だ」
「分かりました父上、表向きの設立理由を緊急時の災害救助として予算をいくらか取っておきますね。
――それはそうと本当にいいのですか、結婚式の費用を父上が母上に残した遺産で全額払ってしまって。少しは国から出すこともできますし、他の国もお二人の結婚式の費用ならば喜んで出資するとおもいますよ?」
「いいんだよ、金は天下の回り物だからな。死蔵しとくのはもったいねぇだろ?
それにあれは前世の俺の物だからな、金がいるのならまた一から自分で稼ぐさ」
デュランがそう言うとヘルトから驚きのあまり目を丸くしていたが、アリスは目を細めながら「……デュランらしいね」とだけ呟いてからデュランを抱きしめた。
デュランは気恥ずかしさから頬を紅く染め上げていたが、何度か咳払いをしてから作戦会議に戻った。
「招待状を届けるメンバーは俺とアリスに剣、それからステラとナハトの五人で行こうと思う。
あまり人数を多くしてもしょうがないからな、反対意見はあるか?」
「父上! 護衛が少なすぎます!! もう一度考え直してください!!!」
「……ヘルト、ぶっちゃけアリスとステラは俺の弟子だからそこらの護衛よりもよっぽど強いぞ? 剣なんか前世の俺の倍くらい強いしな。護衛は足りてるだろ、どう考えても」
デュランがそう言うとヘルトは「父上は世界を一度救った救世主なんですよ!! 自分の命を軽く考えすぎです!!!」と反論したが、一度死んでるからノーカンと言って話を打ち切られた。
デュランはそれからしばらくヘルトに色々と言われたが無視して会議を進め、ある程度話がまとまってくると「後のことはヘルトへ全部任した!!」と叫びながらアリスと会議室を飛び出し。アリスと二人でデートをしに行くのでした。
……ひでぇ。
「――父上!! 色々な方々に迷惑がかかるのでさっきのようなことは止めてください!!!」
「アハハッ、悪い悪い! だけど俺は前世のことを覚えてるだけの五歳児だぞ、そう考えたらあれくらいよくね? と思うんだが」
「……それをいわれると弱いですね、もう今回のことはいいので。次からは気をつけてください」
「分かった!! 次からは気をつける!!」
ウィンクルム連合王国の様々な観光名所をアリスと二人で堪能した後、会議室に戻ってくきたデュランは会議を抜け出したことをヘルトから怒られたのでまだ子供であると主張し。それ以上怒られるのを回避した。
……いい笑顔で返事してるがまたやるなコイツ。五歳児だけど、この狡賢さは大人級だわ。
「ヘルト。俺はスミス王国へ行ってルイスとノアの墓参りをしてからあいつらの孫を特殊部隊に誘おうと思ってるんだが。どこに住んでいるか分かるか?
後はリーベとクラインの居場所も教えてくれ。」
「そうですね、スミス王国のこの住所を尋ねれば二人と会えると思います。この写真の少女の名前がルイズ、少年の名前がメディスンです。
リーベさんは巨人族の国であるギガント王国の山の中にある巨大な秘密基地の中で空中戦艦? というのを創っています、クラウンさんはフォレスト王国で王様をしているので招待状を渡す時に会えると思います」
「分かった! ありがとうなヘルト!!
……取りあえず、この国から一番近いギガント王国へ行ってリーベに協力をお願いするか。あいつは変態だが、科学者しては一流だからな」
デュランは渡された二枚の写真に目を通した後、聞いたリーベとクラウンの居場所からリーベの方が近かったので少し嫌そうな顔をしていたが。気を取り直して一番最初の目的地をギガント王国に決めた。
「――失礼します」
そうしているとステラが扉を三回ノックして許可を得てから会議室に入ってきた。告白してくるかとデュランは少し身構えていたが、今日も告白してこなかった。
丸三日間も告白してこないし、もう父親である己に対する未練を断ち切ったのだろうと納得したデュランは紅茶を受け取って呑んでから「もう寝る」と言って会議室を出た。
そして一晩が経ち。
博物館から前世の頃使っていた荷車を回収してから荷物を荷台へ積んだデュランは、見送りに来てくれたヘルトへ片手を上げて挨拶した後。ニヤリと笑った。
「それじゃあ行ってくる。色々と根回しとか、結婚式の準備とかをよろしく頼んだぜ、ヘルト」
「……父上、私は納得してませんからね。もし死んだら冥界へ乗り込んでからもう一度私が殺しますからね――覚悟しておいてください」
「怖いねえ……怖いから、俺もう行くわ。またな」
デュランはそう言ってからアリス達が乗っている荷車の取っ手を掴み、ヘルトへ向けて片手をヒラヒラと振ってからウィンクルム連合王国を旅立つのでした。
……またデュラン達と旅に出れてよかったな、荷車。




