一条刹那
『――地球は我々星の箱船の新たな母星に選ばれました。原住民の皆様方には安らかな死をお送りしますのでご安心ください。
……あぁ、それと一応言っておきますが。人類には万に一つも勝ち目はないので闘うのはオススメしません。
個人的には大切な人と最期の一時を過ごすべきだと思いますよ? それではよい終末を!!』
一条刹那。
後に我が輩の世界へと招くことになる彼をその平行世界で見つけたのはただの偶然だった。
我が輩の創り出した世界で暮らす人類のアイディアを得るために覗いていた様々な世界、その一つの世界の住人でしかなかった彼はとてつもなく強い――英雄だった。
人類の可能性を信仰している我が輩をして不可能と断じるしかないスターアークを破壊するという偉業。
主要な国家の軍隊や戦闘兵器を単独で蹂躙したスターアークを相手に、魔法も進んだ科学の力もない世界のただの人間でしかなかった彼は成しとけたのだ! たった五人の仲間と共に!!
結果的に世界を救った救世主となった彼だが、高尚な理由で闘ったわけではない。
全ては光咲という名の妻と子供の未来をなんとか守ってやりたい、彼が死ぬ寸前まで闘ったのはそんな平凡な理由だった。
そんな彼が左手を失いながらも最後の敵を倒し、スターアークの中枢を破壊し終わって倒れ伏した時――我が輩はもう我慢できなかった。
──我が輩の世界へと招くのはあくまでもその人物のコピーに限る──
人類の輝きを薄汚い我が輩の手で汚さないため立てた誓い、絶対に破ってはいけない不文律。
だが、我が輩は彼の終わりを受け入れられなかった。
一条刹那の誇り高く、美しい人生という名の物語の終わりへ泥を塗る行為と分かっていても彼――一条刹那に生きていて欲しかった。
だからこそ怪我を治療した後、彼をすぐに元の世界へ送り届けようとした。
けど家族の無事とスターアークの終焉を我が輩から聞いた彼は、それだけ知れれば十分だとただ笑うのだ。
そして死んでいたはずの人間だからと家族との再会を断った彼の姿を目にし、我が輩はこの世界の全てを彼に渡す決意をした。
故に今日も我が輩はこの世界を支配し続けるのだ、悪神として――彼に倒される日を夢見て。
「つまり――俺がかつてこの世界を救った剣神一条刹那の生まれ変わりで、この世界そのものをゲーム盤としか考えてない頭のおかしい神のカオスが全ての黒幕だと言いたいんだなヴィンデは」
「えぇ、そして私の本当の名前は起源神ワールド。
刹那からたくさんの物をもらっておきながら世界を救えというあなたの最期の言葉を裏切り、カオスへ一条刹那の命乞いをした恥知らずよ。
煮るなり焼くなり好きにしなさい、あなたにはそうするだけの理由がある」
デュランはそう言った前世の母親であるヴィンデの顔を少しの間困った顔で見つめていたが、やがて考えをまとめると「別にそんなことはしない、俺は特に何もされてないからな」そう軽く言い返した。
「なっ、私の話を聞いてなかったの!! 私はあなたを裏切ったのよ!!」
「……いや、裏切ったってもな。一条刹那――二つ前の俺がカオスに負けたのが悪いだけだろ、気にすんなっ!」
「そ、そんな簡単な話じゃない! あなたも含めてたくさんの人を不幸にしてしまったのよ!! わたしが許されていいはずがない!!!」
「――だったら俺が許すよ、母さん」
目から涙を流しながら自身の罪を語り、許されていいはずがないと叫ぶヴィンデの頭を撫でながらデュランは彼女の全てを許した。
そしてずっと苦しみ続けていたヴィンデの重りをとってやるために笑いながら「カオスは俺が必ず倒すから大丈夫だ、だから安心しろ」そう言った。
「お母様、デュランもこう言ってるし。もう自分を許してあげてもいいんじゃないんですか?
お母様はもう十分すぎるくらいに頑張りましたよ、だから後は僕達に任せてください」
「そういうこと、だいたいさっきも言ったけど負けた俺が悪いだけだからな。
母さんは初めから罪を犯してなんかないんだぜ、気にしすぎだ」
「――ッ」
そうして全てを許されたヴィンデは言葉にならない叫び声を上げながら止めどなく涙を流し続けた。
――こうして死んだ相棒のため走り続けてきた少女は、この日デュランに全てを許されて救われた。
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前作変革の剣神の数字の羅列はポケベル語というものでネタバレ防止で使っていました。ポケベル語の表を見ながら日本語にすると読むことができます。
実際にこの方法を実行するのは相当面倒くさいのでこの下に前作の数字の翻訳をのせておきます。
カクヨムへの次話投稿は8月1日18時01分に予定しています。
いつもご愛読ありがとうございます! 次話以降ももしよかったら読んでいって下さい。
「何のようだカオス まさかまた彼に何かしようとしてるの? 許さないわよ!!」
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「我が輩は物見遊山でこちらにきただけでござるよw 好きな男をとられたあわれな女をかんさつするだけでも面白いですがなww」
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「誰のせいだと!! 何かをしにきたわけではないならべつにいいわ」
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「おやおや我が輩とはなしたくないと そうでござるな我が輩は刹那を殺した憎い敵でござるからなw」
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「貴様の思い通りにはさせない 彼は私が守るんだ」
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「出来るといいでござるなw」
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起源神ワールド
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地獄へお帰り 歓迎するよ カオスより




