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虚空

「う、あ、あああああッ!」




 爆発的な青白い光が、春人の視界を真っ白に染め上げた。


 全身の細胞が、じいちゃんの家のあの石鹸の香りで満たされていく。それは温かく、同時に体の芯から圧倒的な霊力が湧き上がるような、未知の感覚だった。




『我があるじよ、その力を解け!』




 燐の鋭い声が響くと同時に、僕は無意識に右手を前に突き出していた。


 掌から放たれた青白い光の障壁が、引き戸を突き破って侵入してきた「どす黒い影」を激しく弾き飛ばす。ジュウ、と肉を焼くような悍ましい音がして、影は悲鳴を上げながら霧のように霧散した。




「はぁ、はぁ……っ、いま、のは……」


「やった、の……?  春人、今の光……!」




 さきが腰を抜かしながらも、スマホのライトで春人を照らす。


 春人の身体からは、まだ微かに青白いオーラが湯気のように立ち上っていた。




「……いや、まだ終わっておらん」




 筆をくわえ直した燐が、油断のない目で開いたままの門(木箱)の奥を見つめていた。その瞳には、青色のオーラが宿ってる。




「今のは、門の隙間から漏れ出た端切れに過ぎぬ。本当に恐ろしいのは、この門の先――あの世の最果てにあるアジト、『虚空の白の大草原』に蠢く者たちだ」




「虚空の白の大草原……?」




 僕がその奇妙な名前を反芻すると、燐は静かに首を振った。




「生者の感情も記憶もすべて吸い尽くされる大草原。覚えておくが良い。あの世界ではな、夜中の三時に鐘が鳴る」




 燐の声が、一段と低くなった。




「鐘が鳴り響く間、あの世の住人どもは、どれほど怖くとも絶対に外へ出てはならん。なぜなら、その大草原の真ん中で、人食いの猛獣や、人間の命など羽虫とも思わぬ危険な神様どもが、優雅に『茶会』を開くからだ」




「茶会、だって……?」


 さきが喉を鳴らす。




「左様。奴らにとって、生人間の肉や魂など、茶請けの菓子に過ぎぬ。もしその時間に対峙すれば、福田の力を継いだお主とて、一瞬で喰い殺されるだろう」




 そのアジトに行けるものはかなり少ない。


 まず霊力の修行をしなければならない。


 「うん、わかったよ」

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