第90話:鬼神セシリアvs十傑シューベルト
第90話「鬼神セシリアvs十傑シューベルト」
「最強の武」と「最強の一般市民」がぶつかり合う戦場に、第三の「最強(の自由人)」が、あまりにも場違いな姿で乱入した。
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エレン「何勝手に勝ち誇ってんだバーカ! ブッ殺してやるよ!!」
一瞬、驚いた表情をしたシューベルトだったが、フッ、と笑う。
シューベルト「そのしぶとさだけは褒めてやるぜ……いいぜ、お前は認めてやる‥‥この俺様が全力でぶっ潰してやるよ!!!!」
エレン「フッ‥‥このエレン様を本気で怒らせたことを後悔させてやる!!!‥‥くたばりやがれ!!!」
エレンが再起をかけ踏み込もうとした瞬間、ドォーーーン!!!!と、彼女の足元に巨大な火球が着弾。
爆風に煽られ、エレンは本日何度目か分からない城壁への激突を果たす。
「そこまでだ、こいつはわたしの獲物だ!!」
土煙の向こうに立っていたのは、アレクサンド最強の騎士、セシリア。
……だが、その姿は威厳に満ちた騎士とは程遠かった。
両手には「世界のペナント展」のロゴが入った紙袋を十個もぶら下げ、脇には謎のイメージキャラクター「ペナペナくん」のぬいぐるみまで抱えている。
セシリア「ふん、カレンめ! わたしに黙って最終決戦をやるつもりだったのだろうがそうはいかんぞ。このわたしがペナント展ぐらいの策に引っ掛かると思ったか!? 引っ掛かるわけがなかろう!!」
ジェームズ&エリーゼ「(……見事に、全力で、引っ掛かってるじゃん……)」
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シューベルト「テメエがセシリアか?(な、何だこいつは……? 何でこんなに紙袋をぶら下げてるんだ?)」
大陸十傑の脳が、あまりの情報量の多さに処理落ちを起こし始める。
セシリア「そう言う貴様がシューベルトか? 貴様の大陸十傑の称号、このセシリアが貰い受ける!」
エレン「ま、待て……そいつはわたしの……獲物だ……」
フラフラと瓦礫から立ち上がるエレン。それを見たセシリアは、ジャイアニズム全開で言い放った。
セシリア「へっぽこエレンはすっこんでろ! お前の獲物はわたしの獲物!! わたしの獲物はわたしの獲物だ!!!!」
エレン「……。……。う、う、……うわぁあああああん!!!!(号泣)」
ついに、アルコールと疲労と内定取り消しのショックと、上司の破茶滅茶な横暴に対して臨界点に達した。エレンは子供のように激しく泣き崩れた。
セシリア「おい‥‥シューベルトよ、よくもわたしの大切な手下を泣かしてくれたな? その罪は重い‥‥償ってもらうぞ?」
シューベルト「‥‥‥おい……泣かしたのはテメエだろ‥‥‥‥‥」
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カレン本陣。遠眼鏡を置いて、カレンは深く、深くため息をついた。
カレン「呆れた……なんて早さで現れるのよ……」
カレンの計画は完璧だった。情報を遮断し、セシリアが最も抗えない「ペナント」で時間を稼ぐ。その間にシューベルトの心をへし折るつもりだったのだが。
カレン「あの量のグッズを、あの時間で買い占めて戻ってくるなんて。……セシリアの『ペナントマニア』としての能力を甘く見ていたわね」
計画は崩れた。だが、泣きじゃくるエレン、困惑するシューベルト、そしてぬいぐるみを持った最強騎士。
このカオスこそが、カレンが画策していた最も「コントロールしきれない」戦場本来の姿でもあった。
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帝都クレイドの城壁前。そこは今、歴史に刻まれる「頂上決戦」の場でありながら、同時にお土産物屋の店先のような、あるいは駄々をこねる子供の遊び場のような、形容しがたい混沌に包まれていた。
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カレン本陣。遠眼鏡でその様子を見ていたマキは、冷や汗を流しながら呟いた。
マキ「何という……何という恐ろしい光景なのだ……」
リノ(思念)「マキ様、最近空気が薄いと思ってましたが、ようやくツッコミ入れましたね〜。てへっ♡」
マキ「空気が薄いではなく影が薄いだ!!!(※物理的に吸われているからである)」
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セシリア「エリーゼよ、これを大事に持っておくのだぞ?」
エリーゼ「は、はい……(重い……というか、何ですかこの量は)」
渡された十数個の紙袋の中には、限定復刻版のマイナー地方ペナント、謎のペナントイベントキャラクターのペナペナくん(※どこかで見覚えのある、細胞が分裂したような赤いクリーチャー)のキーホルダー、ストラップ、バスタオル、ティーカップ……。
それは、カレンの策に「全力でハマり、全力で楽しんだ」という動かぬ証拠であった。
だが、趣味の時間を終えたセシリアが背中の大剣を抜いた瞬間、空気が凍りついた。
セシリア「さて、シューベルトよ、待たせてすまなかったな」
シューベルト「ふざけやがって……。俺様は忙しいんだ。テメエとマキ、カレンをまとめてぶった斬らなきゃならねーんだからな」
セシリア「そう急くな。お前の『武』はよく聞いておる。わたしはお前と戦いたくてウズウズしておったのだ。じっくり楽しもうではないか?」
シューベルト「楽しむだと? 噂通りの戦闘バカみてえだが……最強である俺様の敵じゃねーよ!」
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セシリア「最強か。……ふふ、お前は楽しませてくれそうだ」
**ドンッ!**
直前までの「ペナペナくん愛好家」の顔は消えた。
大地を震わせるほどの圧倒的な覇気を解き放ち、不敵な笑みを浮かべるセシリア。
その姿は、紛れもなく戦場を蹂躙する「鬼神」そのものであった。
シューベルト「……。ふん、さっきの龍神野郎(一般市民)よりはちょっとはマシみてえだな……」
シューベルトもまた、自身のプライドを剣に乗せ、鋭利な殺気を放ちながら剣を構える。
大陸十傑・シューベルト。
そして、既に十傑を二人葬り去った鬼神・セシリア。
ついに、歴史が動く。
……それと同時に、泣き疲れたエレンは、瓦礫の隙間でスヤスヤと平和な寝息を立て始めた。
彼女の夢の中では、きっと公務員として定時退社し、ほかほかのおいしいオムライスが待っていることだろう。
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帝都の城壁前。もはやそこは人間が踏み入ることを許されない、神話の領域へと変貌していた。
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セシリア「アレクサンド騎士団、セシリア・ローランドだ。いざ尋常に勝負!」
シューベルト「シューベルトだ。その首、貰い受ける」
名乗りが終わるか否か、**ギィィィィン!!** という金属音が鼓膜を震わせる。
一撃。ただそれだけで、周囲の地面はひび割れ、大気が悲鳴を上げた。
エリーゼ「は、始まった……!」
ジェームズ「す、凄い覇気だ。空気が重すぎて息ができねえ……」
キィィン、キィィン、キィィン……!!
目にも止まらぬ神速。そして、その一撃一撃が大型魔獣を即死させるほどの質量を伴っている。
セシリア「フハハ! 凄いぞシューベルト!!」
シューベルト「重たい剣だぜ。だが、俺様はパワーでも最強だ!!」
シューベルトが魔剣を強引に押し込み、セシリアを正面から弾き飛ばした。
**ドォーーーン!!**
セシリアは大剣「鬼王」で受けたものの、その威力に抗えず城壁へと叩きつけられる。
セシリアが力負けをして吹き飛ばされるという光景に驚愕するジェームズとエリーゼ、しかし
セシリア「ハ、ハハハ! 凄いぞシューベルト! 次はわたしの番だ!」
笑いながら瓦礫を突き破り、弾丸のような速度で懐へ飛び込むセシリア。
今度は彼女の強烈な薙ぎ払いがシューベルトを捉え、今度は「貴公子」が城壁の藻屑と化した。
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シューベルト「へっ、やりやがったな。この怪力女め!!」
再び立ち上がり、城壁を蹴ってセシリアへと肉薄するシューベルト。剛剣がうなりを上げ、セシリアを再び城壁側へと追い詰めていく。
ジェームズ「……なんて凄まじさだ。人間の戦いじゃねえ……」
エリーゼ「はっ!? そういえば、エレンさんは!?」
二人が戦慄しながら見守る中、ふと一つの事実に気づく。
セシリアとシューベルトが交互に叩きつけられ、粉砕され、瓦礫が降り注いでいるその場所は――先ほどエレンが「定時退社」の夢を見ながら寝落ちした場所だった。
ジェームズ「エレンちゃん、無事か……。……はっ???!!!!」
そこにあったのは、もはや「死体安置所」ですらない。
叩きつけられた二人の英雄が巻き起こした瓦礫が、これでもかと積み上がり、エレンの上には不自然なほど高く、鋭い「瓦礫の塔」が完成していた。
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エリーゼ「そ、そんな……。エレンさん……!!」
ジェームズ「……。エレンちゃん。俺は、キミのことは忘れない。いつまでも、あの内定を取り消されて泣きわめいていた、君の勇姿を……」
夕陽を背に、なぜか「故人」を偲ぶような爽やかな笑顔で、空に浮かぶエレンの幻影を見つめるジェームズ。
回想の中でエレンと過ごした日々や様々なワンショットがスローモーションで流れ、エンドロールまで流れていた。
**ガッシャーーーン!!**
エリーゼ「早くエレンさんを助けてください!!!!!」
ジェームズ「ぶべらっ!?」
エリーゼの魔剣による、愛ある(?)峰打ちがジェームズの後頭部に炸裂した。
最強の二人が戦場を破壊し尽くす中、ジェームズの「エレン救出(掘削)作業」という名の、もう一つの命がけの戦いが幕を開ける。
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