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第79話:大参謀の誤算と風神の逆鱗

第79話「大参謀の誤算と風神の逆鱗」




風神降臨――旋律を切り裂くエメラルドの翼


ノルフェアの戦場全域に、凄まじい「圧力」が走った。


それは魔力というよりも、星の息吹そのものが具現化したような、神々しくも暴力的なまでの大気の震え。


---


モーツァルトが手にする宝剣「ストーム」は、主人の意思に反して、まるで捕食者を前にした小動物のようにガタガタと震え続けていた。


目の前に立つシルフィの瞳は、底知れぬエメラルドの輝きを放ち、その全身には不可視の風の鎧が纏われている。


背後には巨大な半透明の翼が広がり、手にした「風王の剣」が周囲の空気を全て支配下においていた。


これこそが、アレクサンド騎士団の「聖域」シルフィが、慈愛を捨てて裁きを下す際に見せる姿――「風神モード」である。


---


その圧倒的なオーラは、離れた戦場で戦う幹部たちの肌をも粟立たせた。


ハナ「珍しいね。シルフィが風王の剣を抜くなんてさ。よっぽどのことだよ」


フルーレ「シルフィの風神モードっすか……。相手、どれだけシルフィを怒らせたんすか。馬鹿っすよね‥‥南無三っす」


エレン「すごい共鳴……。シルフィさんが『風の王』だったんですね……それにしてもフルーレさんの雷神モードの時と同じぐらい共鳴してる‥‥すごい‥‥(怯えまくる)」


セシリア「ふん。私が何回手合わせを頼んでもやってくれないくせに、シルフィのやつめどういう風の吹きまわしだ。……風だけにっ!!」


セシリア渾身のテヘペロが炸裂する。


マキ「……。セシリア、この絶体絶命の戦場(かつ渾身のド真面目シーン)でその駄洒落を出すとは……。師匠の顔が見てみたいわ」


リノ(思念:マキ様、鏡持ってますから貸しましょうかー? てへっ☆)


マキ「わたしはこんな風に育てた覚えはない!!!!」


---


音速を超える裁きの始まり


シルフィ「我が名はシルフィ・ホワイト。……いざ、尋常に」


静かな宣言と共に、シルフィの姿が掻き消えた。


「消えた」のではない。音速を超えた移動に、大参謀の動体視力が追いつかないのだ。


**ガキィィィィンッ!!!!**


モーツァルト「うおっ!? ……な、何だ、この速さは!?」


頭上から叩きつけられた風王の剣を、死に物狂いで受け止めるモーツァルト。だが、衝撃を逃がす間もなく、再びシルフィの姿が霧散する。


モーツァルト「は、速い……っ! 速すぎて捉えきれない……!! どこだ、どこから来る!?」


背後、頭上、死角――あらゆる方向から、大気を切り裂くエメラルドの残光が襲いかかる。


モーツァルトは、戦略眼で勝る「回復魔道士」を狙ったつもりだった。


しかし、彼が引きずり出したのは、相性最悪にしてアレクサンド最強の一角、「絶対に怒らせてはいけない精霊の王」だったのだ。


---


モーツァルトの計算では、今頃フルーティの死と引き換えに弱り果てた聖女を、優雅に仕留めているはずだった。


しかし、目の前の現実は、彼の緻密な論理ロジックを粉砕する「神の怒り」そのものだった。


---


モーツァルト「くっ……!? 何だこれは……! こんなはずでは……っ!!」


前後左右、上下。全方位から叩きつけられるエメラルドの閃光。


時折、風の隙間に見えるシルフィのかおは、もはや慈愛の聖女ではない。刀身と同じく冷たく、鋭く、そして苛烈な怒りに燃える「風の支配者」の瞳。


ゼッターランド帝国でも耳にする古の古文書やおとぎ話、エメラルドに輝く姿はその伝説に出てくる『風神』そのものだった。


大参謀として戦場を支配してきた自負は、一瞬で「捕食される側」の根源的な恐怖へと塗り替えられた。


シルフィ「……。あなただけは、許しませんわ」


エメラルドの光が網膜を焼き、風圧だけで皮膚が裂ける。モーツァルトは、死の予感に震えながら、過去の残像を視ていた。


---


かつての帝国軍。そこには燦々と輝く「三英雄」が君臨していた。


いくら剣技を磨き、戦術を練り直しても、彼らとの差は埋まるどころか、日に日に絶望的なまでに開いていく。


(この私と、あいつらとは何が違うのだ!? 何の差があるというのだ……!)


劣等感に焼かれたモーツァルトが辿り着いたのは、「効率」という名の非情さだった。


情を捨て、確実に、最短で、冷酷に勝利を積み上げる。いつしか彼は「帝国一の大参謀」と呼ばれるようになったが、その心は一つのミスも許されない針のむしろでもあった。


---

**モーツァルトの追憶**


モーツァルト「貴様! なぜ私の指示通りにしなかった!? 敵の戦意を挫くため、故郷の街を焼き払う……。そんな簡単な仕事さえできないのか!?」


若き日のブキャナンは、静かに答えた。


ブキャナン「……そこまでの事をせずとも、モーツァルト様の勝利は揺るぎないものでした」


ハイドン「お待ちください。それは彼の独断ではなく、私の指示です。モーツァルト殿、占領後の民は我々の味方となる民……。その街を焼く必要など微塵もございません」


モーツァルト「!!! ハイドン、貴様……!! この無能めが!! 貴様など左遷だ!! ブキャナン、貴様も期待していたが、とんだ無能だったな!!」


正論を吐く「無能(と自分が定義した者)」たちを切り捨て、彼は孤独な高みへと登り詰めた。


だが、その果てに待っていたのは、かつて切り捨てた者たちが守ろうとした「温かな絆」を蹂躙した報い――。


---


シルフィ「……。わたくし、怒ると……残酷ですわよ?」


シルフィが風王の剣を正眼に構える。 


その言葉は、癒やしの奇跡ではなく、魂の細胞一つ一つを風の刃で刻む「永遠の治療」の始まりを告げる合図だった。


---


カレンの本陣を包囲した一万の偽装兵。


その中央へ、悠然と馬を進めたショパンは、簡素な天幕の前で椅子に深く腰掛ける軍師カレンと対峙していた。


---


ショパン「……。キミがカレンかい? これはいったい、何の冗談だね?」


百の護衛しかいないはずの本陣。しかし、そこには濃密な「死」の気配が漂っている。カレンは手元の紅茶を一口啜り、冷徹な瞳を上げた。


カレン「あら、知らないのかしら? わたしは冗談が嫌いな性格なのよ。まあ、わざわざここまで来ていただいたのだから、退屈はさせるつもりはないわよ?」


ショパン「……。僅かな供のみ残していると聞いたが、その供はやはりキミかい?」


「ふん。退屈で死にそうだったぞ」


天幕の影から、地響きのような威圧感と共に一人の女が歩み出る。

燃えるような金色の双眸。背負った大剣。アレクサンド騎士団最強の象徴――セシリア・ローランド。


「中央軍にいるはず」というショパンの前提を、カレンは「空陣」と「影武者」の使い分けで完璧に覆していた。


---


すぐ近く、シルフィの陣からは、天を衝くような嵐の轟音が響いてくる。風神と化した聖女の怒りが、大気を震わせていた。


セシリア「フルーティとやらが死んだらしいな。モーツァルトという男、風神の逆鱗に触れたようだ。あいつ、もう助からんぞ?」


ショパン「……。フルーティなどどうでもいい。コミケで細々と自作同人誌を売る、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけた地味な陰キャ……。借金まみれの貧乏暮らしをしていたマイナー地下アイドルを、一から育ててやった恩を忘れおって。……捨て駒にすらならんとは笑えるな。最後まで、美しくない奴だった」


吐き捨てるような言葉。だが、その指先が僅かに震えているのを、セシリアは見逃さなかった。


セシリア「ふん。それが貴様の最期の台詞か? 私を怒らせたいのだろうが……まあ良い。貴様の持つ『大陸十傑』の称号、このセシリアが戴く!!」


ショパン「フフフ……。無駄だよ。美しく勝つのは、この私だ」


---


#### 激突のプレリュード


一万の兵を背負うショパン。だが、目の前に立つのは、一軍に匹敵する武威を誇る「鬼神」。


ショパンが愛刀を抜き放つ。その身のこなしは、戦場を舞台に変える舞踏のよう。


対するセシリアは、一切の虚飾を排した闘気を放ち、大地を爆ぜさせて踏み込んだ。


カレン「……。さあ、最高の『協奏曲』を聴かせてちょうだい」


アレクサンドが誇る武の極致・セシリア。


ゼッターランドが誇る美の結晶・ショパン。


大陸の歴史を塗り替える、十傑同士の「死闘」が、ついに幕を開けた。


---



すみません、体調不良でおやすみしてました‥‥

皆さんも体調管理には気をつけてくださいね

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