第74話:国民的アイドルと公務員
第74話「国民的アイドルと公務員」
要塞都市カタリス。膠着状態の続く城壁の上で、ラヴェル将軍は焦燥に駆られていた。
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ラヴェル「援軍と挟撃はどうなっている!? ダイロンからの報せはまだか!」
本物のセシリアが現れた方に、背後から挟撃を仕掛けるはずのマーラーの伏兵部隊が一向に現れる気配がないのだ。
セシリア「ラヴェルよ、いつになったら私の一騎打ちを受けるのだ? 城壁の向こうで隠れ込んでばかりでは退屈で死んでしまうぞ!」
高笑いするセシリア。そこへ、土煙を上げながら一人の人影が現れた。
ボロボロになり、もはや原型を留めていないマーラーを引きずりながら、フルーレが虚ろな目で歩いてくる。
フルーレ「セシリア様……。まだ、終わってなかったんすか……?」
ラヴェル「マーラー!? な、何があったのだ! ……そ、それに、お、お前は……フルーティちゃん!?」
フルーレ「(ピキッ)……。黙るっす!!」
ラヴェルが二度見するようにフルーレの顔を確かめる。
ラヴェル「間違いない! コミケと地下アイドルで活躍していたところを、ショパン様がスポンサー契約とプロデュースを手掛け、今や帝国のトップアイドルにまで上り詰めた……フルーレ・コスプレの第一人者、フルーティちゃんではないか!」
フルーレ「……。そうか……。十傑の美麗なるショパンが元凶なんすね。この風評被害の種を撒いたのは、そのナルシスト男なんすね……」
フルーレの背後で、八本の聖剣がどす黒い殺気を放ち始める。
ラヴェル「サインをくれ! と言いたいところだが、なぜフルーティちゃんがマーラーを半殺しにしているのだ!? そいつはお前の熱狂的な『推し』だぞ!? ……俺もだがな!」
フルーレ「……セシリア様。……あの男、わたしに譲ってもらっていいっすか? ……微塵切りにするっす」
振り向きながらセシリアに問いかけるフルーレ、しかし。
セシリア「ギャハハハハハ!! ウケる! この無愛想で気怠いフルーレが……トップアイドル!? ぷっ、ぎゃはは! フ、フルーティちゃん……!! 腹が痛い! 死ぬ!!」
フルーレ「…………。あんたも、後で殺すっす」
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フルーレの怒りが有頂天に達したその時、セシリアの無詠唱魔法すら霞むほどの、天を衝くような爆炎がカタリスの堅牢な城門を直撃した。
**ズガァァァァァン!!!!!**
ラヴェル「なっ!? 伝説の硬度を誇る城門が……粉々に!?」
爆煙の中から、ステッキを軽やかに振り回しながら歩いてくる桃色の影。
リノ「やっほー! フルーレ様~? これで中に入れますよぉ。邪魔な門は片付けておきました! てへっ☆」
マキ「……。リノ、お前……本当に楽しそうだな」
聖女の皮を被った爆破魔と、その横で呆れ果てる赤ん坊(元・騎士団長)。
カタリスの守備兵たちは、フルーレの「静かな殺気」とリノの「明るい狂気」に板挟みとなり、戦う前に戦意を喪失し始めていた。
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カレンの電撃作戦により、鉄壁を誇った二重要塞カタリスとダイロンは、開戦からわずか一時間という空前絶後の速さで陥落した。
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**カタリス城門跡**
ラヴェル「一瞬にして強固な城門が粉々に……。これが壊滅の魔道士リノ……。それに加え、十傑メンデルを倒した鬼神セシリア……。そして、あのトップアイドルのフルーティちゃん……!!!!」
フルーレ「ブッ殺すっす!!!! 死んでもさらにブッ殺すっす!!!!」
リノ「フルーレ様、それ言葉が破綻してますよぉ。てへっ☆」
フルーレの怒りは、もはや文法すら超越していた。
捕縛されたラヴェルとマーラーは、彼女の殺気に当てられ、尋常ではない震えを見せながら連行されていった。
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一方、帝国第二の都市ノルフェア。豪華絢爛な司令本部に、戦慄の報告が届く。
密偵「ショパン様! 急報です!! カタリスとダイロンが陥落しました!! ヴィヴァルディ、ラヴェル、マーラーの三将軍は捕縛された模様です!!」
優雅にワイングラスを傾けながら、アレクサンド騎士団壊滅の報を待っていた美麗なるショパンは、眉をひそめて密偵に聞き返す。
ショパン「……。開戦からまだ一時間だが? 何かの間違いではないのかね?」
その時、ショパン背後から声が響く。
「間違いじゃねえ。作戦はすべてカレンに読まれ、完璧に相性を突く配置をされて無様に落とされたんだよ」
ショパン「……シューベルト。なぜお前がここにいる?」
現れたのは、若くかなりのイケメンだが荒々しい雰囲気を振りまくトップホスト風の男、三英雄の一人にして大陸十傑、「戦場の貴公子」シューベルト。
そしてその背後には、帝国一の大参謀と謳われる帝国の頭脳、「知略の大参謀」モーツァルトが控えていた。
シューベルト「皇帝陛下から、お前だけじゃ心許ねえからってよ。この俺様にもノルフェアを守るよう命令が下ったんだ。……全くだ、ダリィぜ」
まさにかったるい感を全開でかもし出しながらシューベルトが罵る。
モーツァルト「ショパン様、我々が来たからにはご安心を」
ショパン「な……何を言う! この私が、心許ないだと!?」
シューベルト「現に、城塞都市を二つ同時に瞬殺されてんじゃねえかよ?」
ショパン「……帝都に帰れ! さもなくば、この場で私が斬る!!」
ショパンが腰の剣に手をかける、しかしシューベルトは不敵に笑い続ける。
シューベルト「面白い。ちょうど暇で身体がなまってたところだ。相手をしてやるよ」
十傑同士が剣を抜き、室内には凄まじい覇気が渦巻く。周囲の兵士たちは、そのプレッシャーに耐えきれずガタガタと震え、膝をついた。
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モーツァルト「お二人とも、やめてくださいよ。……ここまでもがもはやカレンのシナリオかもしれませんよ?」
ひょうひょうとした笑みを浮かべ、モーツァルトが二人の間に割って入る。
モーツァルト「シューベルト様。確かにノルフェアはショパン様の管轄。貴方に居座られては顔が立ちません。ここは帝都に戻られるのが上策かと。その代わり、このモーツァルトがショパン様の相談役として残ると皇帝陛下にお伝えください。……ショパン様、よろしいですね?」
ショパン「……。ああ。先に言っておくが、ノルフェアの主は私だ。そこを忘れるなよ」
シューベルト「ふん、まあ精々頑張って死なないようにしてくれなよな。じゃあな」
シューベルトは吐き捨てるように言い残すと、配下を連れて帝都へと去っていった。
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陥落したカタリス城の執務室。そこはもはや軍事的な尋問場ではなく、帝国の将軍たちにとって「死より恐ろしい精神的更生施設」と化していた。
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マーラーとラヴェルの両将軍は、瀕死の状態で床に正座させられ、その前には冷徹な笑みを浮かべたフルーレが仁王立ちしていた。
フルーレ「……。まあ、ノルフェアを落とせば、元凶のショパンを切り刻めるっすね。その後、その『フルーティ』とかいう偽物にも死んでもらうっすよ」
ラヴェル&マーラー「お、お待ちください……! フルーティちゃんには何の罪も……!」
フルーレ「黙るっす。わたしのコスプレをして表に出ている時点で、万死に値するっす」
尋問(という名の吊るし上げ)で判明したのは、帝国兵たちの間でのアレクサンド騎士団幹部の異常な人気ぶりだった。
特に「爆乳お色気美女」としてゼッターランド帝国では神格化されている『爆炎の支配者』と呼ばれる深紅の騎士団長マキ・クロフォード。
そして、それに肉薄する人気を誇るのが、同じく「お色気担当」と噂される『長身の爆乳美女フルーレ』であった。
リノ(思念:帝国軍の二大セクシー担当……。まさか本物が、こんなに「可愛い」赤ちゃんとフルーレ様(実物)だなんて、夢にも思わなかったでしょうね。てへっ☆)
マキ「お前が言うな! お前こそ、童顔ロリキャラの筆頭だろうが!!」
リノ(思念:ふふっ、一番のバブバブ童顔は、今のマキ様でちゅよ~?)
マキ「……っ!!(屈辱のあまり震える)」
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怒りの収まらないフルーレの追及は、思わぬ方向へエスカレートしていく。
フルーレ「……だいたい、カタリスのバリアフリー化! 今まで見た中で最悪っすね!? こんな街で、体の不自由な方やお年寄りが住みやすいと思うっすか!!??」
ラヴェル「そ、そんなこと言われましても! ここはノルフェアを守るための軍事防衛都市ですから……!」
フルーレ「黙るっすよ!! お年寄りに優しくない軍事防衛都市なんて、守る価値すらないっすよ!! 段差! スロープのなさ! 手すりの配置! 全部やり直しっす!!」
敵将を「都市設計の甘さ」で詰め寄るフルーレ。もはや建築基準法の鬼である。
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一方、その隣ではヴィヴァルディ将軍が、この世の終わりを詰め合わせたような光景に直面していた。
泥酔したような足取りで、しかし力強く両腕を掴んで離さないエレン。その目からは、滝のような涙が流れている。
エレン「ひっく……。いいですか、ヴィヴァルディさん……。よく、聞いてくださいね……。……『厳正なる審査の結果、貴殿をアレクサンド王立公務員として内定いたします』……。うわぁぁぁん!!」
ヴィヴァルディ「(もう十回は聞いた……。もう勘弁してくれ……)」
エレン「『つきましては、安定した福利厚生と、充実した有給休暇を……』……。ないんだよぉぉ!! 私の有給休暇ぁぁ!! 全部ショパンのせいだぁぁぁ!!」
泣きながら内定通知を音読し、その度に「ショパンへの殺意」を蓄積させていくエレン。
ヴィヴァルディは、物理的な拷問よりも深く、エレンの「人生設計の破綻」という重い話を聞かされ続け、精神が摩耗しきっていた。
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きちんと水分補給してたはずなのに
熱中症になりかけてました‥‥
皆さんも熱中症には気をつけてくださいね




