第72話:大幹部エレン
第72話「大幹部エレン」
ツーリアンの執務室。セシリアの復活を受け、カレンは即座に主要メンバーを招集した。
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ハナ「セシリア様、本当にもう大丈夫なの? 昨日まで死にかけてたのに」
セシリア「ハッハッハ! わたしを誰だと思っている? 今すぐにでもハナと手合わせしてやってもいいぞ!」
フルーレ「……誰かこの人に『危篤』って言葉の意味を教えてあげてほしいっす」
リノ「『奇特』というのは『変わった人』という意味なので、セシリア様にはぴったり合ってますよ~てへっ☆」
シルフィ「リノさん、それはフォローになってませんわ。ウフフ♡」
和やかな(?)やり取りの中、カレンがパンと手を叩き、場の空気を引き締める。
カレン「幹部、全員揃ったわね。……エレン、あんたもよ」
エレン「あ、あの……。なんで、わたしがここに呼ばれてるんでしょうか……?」
セシリア「うむ。エレンよ、それはお前が『へっぽこ』だからだ」
カレン「……バカの戯言は置いておいて。エレン、あなたを今日から正式に『アレクサンド騎士団幹部』として採用したわ」
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エレン「……。……なんだ、そういうことなら安心しました。てっきり何か失敗して怒られるのかと。……って、ええぇぇっ!? じ、冗談はやめてくださいよぉ!!」
カレン「冗談じゃないわ。本気よ」
エレン「な、な、なんでわたしなんかが!? 無理ですよぉ! 副師団長ズの方々にお願いしてくださいー!」
フルーレ「もう無理っすよ。幹部全員、満場一致で決まったっすから」
セシリア「ラーズも認めている。諦めろ」
エレン「ひぃぃっ!?」
八王の剣に選ばれ、実力(龍神モード)も実績も、そして何よりその「人徳」を全員が認めている。
カレンは畳みかけるように、幹部のみに共有される「トップシークレット(マキの現状)」をエレンに明かした。
エレン「……にわかに信じられない話ですが、わかりました。で、でも、わたしなんかに話して大丈夫なんですか……?」
ハナ「大丈夫だって。エレンは信用できる、ってセシリア様もお墨付きなんだから」
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エレン「ええっ!? も、もしわたしがポロッと喋ったり、公務員試験に合格して騎士団を退職するって言ったらどうするつもりなんですかっ!?」
すると、リノがエレンの肩にそっと手を置き、聖母のような慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
リノ「エレンさんにかぎって、そんなことありえないですよぉ。……まあ、もし喋ってしまったり、幹部を抜けるなんて言い出したりしたら……死刑になるだけですから、安心してくださいね。てへっ☆」
ハナ「どこに逃げても、ボクのくノ一部隊からは絶対に逃げられないから。安心していいよー!」
フルーレ「痛みを感じる暇もなく切り刻んであげるから、安心していいっすよ?」
エレン「あ……あわわわわ……(白目)」
会議が終わった後、廊下には、まるで人生の全てを失った失恋OLのようにフラフラと、そして激しく泣きじゃくりながら自室へと帰っていくエレンの姿があった。
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タイミングが良いのか悪いのか、会議が終わった時に、アレクサンド本国、王都ロザーリア市役所から速達の鷹便が届いた。
宛先はエレン宛、それも公務員内定通知だった‥‥。
マキ「凄まじいタイミングで内定通知がくるとは‥‥へっぽこよ、お前は本当に哀れなやつだな‥‥わたしより不幸キャラとかそうそう居ないぞ‥‥」
リノの思念「マキ様は既にわたしの結婚相手に内定してますからね〜?一生逃がしませんよ?てへっ☆」
マキ「だーかーらー!!わたしは変態と結婚する気はないと言っとるだろーが!!」
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エレン「私の公務員内定……安定した老後の設計図……全部消えた」
土砂降りの雨。雷鳴が轟く中、傘もささずにずぶ濡れで歩くその姿は、まさに10年付き合った彼氏に浮気されてフラれた深夜の失恋OLそのものだった。
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買い出し帰りのバッハとブラームスが、城の廊下でその「怪異」に遭遇する。
バッハ「エ、エレンちゃん!? どうしたのその格好! 誰にやられたんだ!?」
ブラームス「落ち着いて! 誰に泣かされたんだい!? 僕が……いや、バッハ将軍がガツンと言ってきてくれるから!」
エレン「ぐすん……ひっく……。幹部の皆さんに……わたしの夢……安定した公務員になる夢……消えちゃったぁぁ!! うわぁぁぁん!!」
バッハ「(……あ、それ。実力行使でどうにかなる相手じゃないわ……)」
ブラームス「……。……。事故か天災だと思って、諦めるしかないのかな……。話を聞いてあげることしかできなくて、ごめんね……(震え)」
龍神モードの暴走を恐れつつも、あまりに不憫な「元・一般職志望」の背中を、二人は遠巻きに見守るしかなかった。
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その後、腫れぼったい目のエレンを含む幹部・将軍・隊長ズが招集され、カレンによる「二連要塞」攻略会議が幕を開けた。
カレン「出陣は明日。これでも遅いくらいよ。ノルフェアが万全の構えを整える前に、カタリスとダイロンを同時に抑えなければ、こちらの進軍は詰むわ」
地図を指し示すカレンの瞳には、一切の迷いがない。各自、明日の進撃に備えて解散する中、メンデルとブキャナンがその場に残った。
メンデル「……カレンちゃん。相談があるんだ。こんなチャラい僕だけど、一応帝国への恩義はあってね。……だから、身内への直接的な攻撃は控えさせてもらいたいんだ。あ、もちろん、みんながピンチの時はすぐに矢面に立つよ?」
カレン「……。何かと思えば、そんなこと? あなたがチャラいフリをして、中身は義理堅い男だってことくらい知ってるわ……わたしの目は節穴じゃないわよ。気にしなくて大丈夫」
メンデル「……。ありがとう、カレンちゃん。気を遣わせてごめんね」
深々と一礼し、憑き物が落ちたような顔で退室するメンデル。彼の中にある「騎士の矜持」をカレンは見抜いていた。
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一人残ったカレンが、椅子に深く腰掛けて溜息をつく。
ブキャナン「紅茶を用意しています。……少しだけ、休憩しませんか?」
カレン「ありがとう。でも大丈夫よ、これくらい。まだやる事が山ほどあるんだから」
ブキャナン「そう言わずに。紅茶を飲みながら、少し世間話でもしましょう。……お願いしますよ?」
カレン「……。はいはい、しつこいわね。……少しだけよ?」
差し出されたカップを口にし、カレンはふっと表情を緩めた。
カレン「……なかなか美味しいわね。これ」
ブキャナン「フフ……。私の目も、節穴ではありませんので。軍師殿がどれだけ無理をしているかくらい、分かりますよ」
明日から始まる地獄の連戦。その直前の、静かで贅沢なティータイム。
カレンは温かい湯気の向こうに、勝利の譜面を静かに描き直すのだった。
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ゼッターランド帝国の防衛網「二連要塞」カタリスとダイロン。
鉄壁を誇る両城の将軍たちは、アレクサンド騎士団を迎え撃つ準備を整え、不敵な笑みを浮かべていた。
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**要塞都市カタリス:将軍ラヴェル**
ラヴェル「どちらから攻めて来ても必ず挟撃できる準備はバッチリだ。アレクサンド騎士団、首を洗って待っていろ!」
**要塞都市ダイロン:将軍ヴィヴァルディ**
ヴィヴァルディ「フフフ、二箇所同時攻撃など小細工に過ぎない。戦力を二分すれば、どちらも落とせぬ。カレン、君はどう動くのかな?」
**帝国第二の都市ノルフェア:大陸十傑・ショパン**
ショパンはラメ入りのマントをパサリと翻し、優雅にワインを傾けていた。
ショパン「策は授けてある。セシリアがいる方が本軍。あえて戦力を分ける愚策を、美しく葬ってあげよう」
そこへ、血相を変えた偵察兵が飛び込んでくる。
偵察「報告! アレクサンド騎士団、カタリスとダイロン、両城の前に現れました!」
ショパン「予定通りだね。で、どちらにセシリアがいるんだい?」
偵察「……そ、それが……両方にいます!!」
ショパン「……はあ?????」
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【カタリス城門前】
「フッフッフ! 我こそはセシリア・ローランドなり! ラヴェルよ、このセシリアの一騎打ちを受けよ!!」
荒々しく剣を掲げ、戦場に轟く咆哮。
ラヴェル「(あの立ち振る舞い、情報通りの鬼神……。こちらが本軍か!)」
【ダイロン城門前】
「我こそはアレクサンド王国騎士団副長、セシリア・ローランドなり! ヴィヴァルディ、わたしの一騎打ちを受けよ!!」
凛々しく、そして傲慢に言い放つその姿。
ヴィヴァルディ「(あれこそがセシリア……。こちらが本軍か、かかったな!)」
カレンが仕掛けた「不協和音」の第一楽章。それは、敵を混乱の極致へ叩き込む「ダブル・セシリア作戦」であった。
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一方、ダイロン攻略軍三万の陣。そこには、兜を深々と被り、ガタガタと震える「総大将」の姿があった。
エレン「わ、わ、わたしが総大将なんて……や、やっぱり無理ですよぉー!! 公務員試験受かったのにぃぃ!!」
ジェームズ「エレンちゃん落ち着いて! まずはハナ様とシルフィ様の部隊が動くから、その後一緒に突撃だよ!?」
ブラームス「後でお話は全部聞くから! 100時間でも聞くから、今は前を向いて! ね? ね!?(必死)」
絶望と恐怖で龍神モードが「泣上戸バージョン」で発動しそうなエレンを、必死で支える護衛陣。
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カタリス攻略軍、リノの陣。マキは遠くダイロンの空を見上げ、深く十字を切った。
マキ「憐れなり、へっぽこよ……。公務員の内定を握りしめたまま、一生逃げられない『終身雇用(幹部)』にされた挙句、ついには総大将までやらされるとは。……アーメン」
リノ(……。マキ様も、わたしから一生逃げられない『終身雇用』ですから、同じですね~? てへっ☆)
マキ「……むぐうっ!?(思念の圧に押される)」
勝利の女神(と死神)に愛されたエレンの、不本意極まりない初陣。
カレンの「二身合体」ならぬ「二身分離」の計略に、帝国の将軍たちはどう踊らされるのか!?
いつも読んでくださってる方々、本当にありがとうございます、ちょうど物語の四分の一に到達していく感じです。キャラの個性を最大限に活かしていきたいと思います。
どうか今後ともあたたく見守ってください




