第65話:鬼神セシリアvs十傑メンデル
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ついに物語の中核に少し足を踏み入れてきました
第65話「鬼神セシリアvs十傑メンデル」
アレクサンド王国の王城内。ラーズ王の執務室は、かつてないほど奇妙な「戦報」の嵐に包まれていた。
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ハナがバキュラでゼッターランド帝国から接収した伝書鳩や鷹が、次々と窓辺に舞い降りる。
その後を追うように、今度はセシリアが独自に(?)帝国からスカウトした「連絡猫」たちが、尻尾をピンと立ててラーズの足元に現れた。
ラーズ「鳩や鷹は分かるが、猫はいったいどうやってここまで……。しかし、メトロイドを奪取してまだ数日も経っていないというのに、もう第三の都市ツーリアンを陥落させただと……?」
ラーズは届けられた羊皮紙を手に、驚愕で声を震わせた。
大臣A「大都市メトロイドに続いて帝国第三の都市ツーリアンも奪取しただと!?大変じゃないか!?」
大臣B「コルネ王国から帝国軍を追い払う作戦だったのに、帝国の大都市を二つも占領するとは、いったいどうするのだ!?」
大臣C「こんな短期間でゼッターランド帝国の喉元まで攻め込んでしまうとか、もうおしまいだ!?」
朗報だというのに三点セットを繰り出してテンパる大臣ズ。
ラーズ「カレン……。お前が味方で、本当によかった。まさに大陸で指折りの大軍師の名の通りだな……」
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しかし、王を戦慄させたのは軍事的な勝利報告だけではなかった。
机の上に山積みになっているのは、戦況報告書を遥かに凌ぐボリュームの「稟議書」と「チラシ」の束。
* **『ツーリアン支店:青汁カクテルバー「龍の涙」従業員急募!』**
* **『メトロイド中央広場:特製ちょうちん10万個発注に関する予算申請』**
* **『保護猫センター建設に伴う、帝国兵の再雇用プログラム案』**
ラーズ「……カレン、セシリア。お前たちは戦争をしているのか、それともゼッターランド帝国全土を『一大アミューズメントパーク』に作り替えようとしているのか……」
王の溜息と共に、アレクサンド本国の予算局は、かつてない激務の夜を迎えることとなった。
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ツーリアンの執務室。カレンがブラームスとの「念入りな打ち合わせ(尋める側も聞く側も冷汗の止まらない尋問)」を行っている最中、静寂を破る急報が飛び込んできた。
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カレン「……そう。メンデル将軍はブリンスタから三万を率いて、こちらへ動いたのね。メトロイド奪還よりも、我が騎士団の中枢が集まるツーリアンを叩くことを選んだ……。合理的ね、わたしでもそうするわ」
ブラームス(……メンデル様。あなたが「セシリア」だと思って一騎打ちを挑む相手が、もしあの泥酔した影武者だったら……。いや、それ以上に、我々の知らない戦力がまだ潜んでいる。どうか、ご武運を……)
ブラームスは、エレンに裾を掴まれて爆睡された恐怖を思い出し、旧友の身を案じて密かに祈りを捧げた。
カレン「わたしはきっちり仕事をしたわ。……あとはセシリア、あんたの番よ」
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ツーリアンから東、ブリンスタへと続く街道。
そこには、偽物ではなく、「本物」のセシリア・ローランドが率いる直轄部隊と、三万の軍勢が西へと進軍していた。
セシリア「ふん。へっぽこエレンは上手く動いたみたいだな? ジェームズ」
ジェームズ「勘弁してくださいよ……。俺、マジで死ぬかと思ったんですから。少しは休ませてください、死んじゃいますよ」
セシリア「そんな暇などあるか。メンデルという男、城を捨ててこちらに向かっておると言うではないか。……フフフ、楽しみだな」
リノ「セシリア様ぁ、わたしたちの最大目的は『ブリンスタ奪取』ですよぉ? メンデル将軍との戦いも大事ですけど、目的を忘れないでくださいねー?」
マキ「リノよ……メンデルが出撃したとなれば状況は一変している。ハナとフルーレの軍を待ってから合流すべきだろうに。セシリアを止められんのか!?」
リノ(思念)『これでも一生懸命止めたんですよぉ~? 聞くわけないじゃないですかぁ。てへっ☆』
マキ「笑ってる場合か!!」
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一方、東から西へと軍を進めるメンデル。
彼は相変わらずの余裕の笑みを浮かべ、馬上で鼻歌を歌っていた。
メンデル「へぇ~、こちらに向かってセシリアの軍が来てるんだ? やったじゃん! ツーリアンに閉じこもられたら面倒だな~って思ってたけど、野戦ならラクにツーリアンを取り返せる。……フフフ、セシリア。僕と踊ってもらうよ」
メンデルにとっては、この状況すらも「華麗なる舞台」の一部に過ぎない。
しかし、彼が対峙しようとしているのは、バッハやブラームスを絶望させた「絡み酒の影武者」ではなく、戦場そのものを蹂躙する「本物の鬼神」である。
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カレンが信頼を置くブキャナンにメトロイドを託し、エレンがツーリアンの守りを固める中。
街道の真ん中で、ついに大陸最強格同士の激突が始まろうとしていた。
カレン(先の戦略は全てもう出来上がってるけど、この戦いが終わってからね……。セシリア、期待してるわよ)
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ツーリアンから西に二十里。遮るもののない広大な平原にて、ついに「時代」を象徴する二つの巨大な武威が正面から衝突した。
片や、アレクサンド王国騎士団の象徴にして、戦場を蹂躙する「鬼神」セシリア・ローランド。
片や、ゼッターランド帝国が誇る三大英雄の一人にして、大陸十傑の称号を冠する「華麗なる」メンデル・スゾーン。
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メンデル「おーい! セシリアちゃんいるかーい!?」
軍勢の最前列、ひときわ優雅に馬を操るメンデルが、まるで旧友を呼ぶかのような軽い調子で声を張り上げた。
セシリア「ふん。お前がメンデルか。今まで見てきた二流ホストどもと大して変わらんではないか!」
セシリアは大剣の重みを肩で受け、不敵な眼光を投げ返す。その覇気は、周囲の空気をピリつかせるほどに鋭い。
メンデル「言うね~? ていうかさ、まさかこの地点まで来ているとは思わなかったよ。本当はね、ツーリアンの十里以内まで押し込んてからかち合う予定で飛ばしてきたんだけどな~」
リノ(思念)『セシリア様、ツーリアン近辺での戦闘は地形で不利になると直感で悟っていたっぽいんですよね~。だから、わたしも無理には止められなかったんですよぉ。てへっ☆』
リノの補足通り、セシリアの野生的な直感は、帝国の庭であるツーリアン周辺を避け、この平原を「狩場」に選んでいた。
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セシリア「ていうか、本当にこのチャラ男が大陸十傑なのか? 大陸の基準も甘いもんだな。……まあ良い、こいつを倒せばわたしが大陸十傑だ」
メンデル「セシリアちゃんがカワイイってのは帝国でも噂だったけど……」
セシリア「……けど何だ?」
メンデル「噂以上にカワイイじゃん! どうだい? 僕と踊ってみない?」
メンデルの口元には、余裕を崩さない笑みが浮かんでいる。だが、その瞳の奥には、獲物を定める冷徹な剣士の光が宿っていた。
セシリア「貴様なんぞと踊る気などさらさらないわ。それに私が可愛いのは当然のこと……まあ、それはいい、いらん血を流したくないからな。一騎打ちなら受けてやってもいいぞ?」
メンデル「僕もそう考えていたところなんだよね~。なんか僕たち、気が合うじゃん?」
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セシリアは愛用の大剣『鬼王』を無造作に、しかし完璧な予備動作で構えた。大地がそのプレッシャーに震える。
セシリア「我が名はセシリア・ローランド。……いざ尋常に!」
対するメンデルも、細身ながらも凄まじい魔力を帯びた魔剣を抜き放ち、優雅に一回転させて正眼に構える。
メンデル「ゼッターランド帝国三大将軍、メンデル・スゾーン。……最高のステップを期待してるよ、セシリアちゃん」
両軍の兵たちが固唾を呑んで見守る中、歴史に刻まれる「一騎打ち」の火蓋が、いま切って落とされた。
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平原のど真ん中、二つの影が視認不可能な速度で交錯する。
セシリア「いくぞ!!!」
咆哮とともに振り下ろされたセシリアの剛剣。大気を引き裂く一撃だったが、メンデルは重力を無視したかのような軽やかなステップで、紙一重の距離をすり抜ける。
メンデル「うっわ! 何でそんな大剣でそんな速いわけ???」
セシリア「ふん、逃げてばかりのやつがよく言う!」
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後方で見守る直轄部隊の面々は、その次元の違う動きに言葉を失っていた。
ジェームズ「な、何だあのスピード……。セシリア様の本気って、あんなに速いのかよ!?」
セシリアの振るう大剣は、その重量を感じさせないほどの鋭い残像を残す。
しかし、それを上回るのがメンデルの驚異的なフットワークだった。
笑顔を絶やさず、戦場を舞台に変えるその軽快な舞いは、まさに「華麗なるメンデル」の名に恥じぬもの。
メンデル「じゃあ次は僕の番だよ~。いえ~い☆」
メンデルの細剣が閃く。上下左右、あらゆる死角から放たれる超高速の刺突。
セシリアが防戦一方に回る姿など、部下たちは一度も見たことがなかった。
リノ「……わたしも、最近はあまり見たことないですね。でも――」
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メンデルの剣先がセシリアの喉元を捉えた、と誰もが確信した瞬間。
そこにいたはずの金色の影が、陽炎のようにかき消えた。
メンデル「え? マジ?」
左側から迫る、空気を圧縮したかのような剛剣の圧力。メンデルは直感に従い、右へと華麗な反転ステップで回避する。しかし――。
そこにいたのは、先回りしていたセシリアだった。
メンデル「ちょっ! ヤバくね!?」
逃げ場を塞ぐように唸る剛剣。メンデルは空中で身体を捻り、まるで重力に逆らうように後方へと飛び退いた。
着地したメンデルの視線の先には、自分に引けを取らない、無駄のない「華麗なステップ」を刻むセシリアの姿があった。
メンデル「なに? なに? 僕ちゃん、マジで楽しいんだけどー!?」
予期せぬ強敵との「ダンス」に、メンデルの口角が吊り上がる。本物の強者だけが共有できる、高揚感。
セシリア「十傑とはその程度か? つまらん。……もっと本気で踊れ、二流ホスト」
冷徹なセシリアの言葉が、平原に冷たく響く。
大陸十傑の座をかけた、超次元の死闘はまだ序奏に過ぎなかった。
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