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第46話:わたし綺麗?

第46話「わたし綺麗?」



ハイドンの回想は、騎士団寮における最も過酷な試練の一つを鮮明に映し出していた。


---


#### 騎士団寮・静寂の夜


セシリアによる「鬼の可愛がり」という名の地獄を今日も耐え切ったハイドン。


心身ともに限界を迎え、死の淵をさまよっていた彼の前に、この世の救いのように現れたのが聖女シルフィだった。


シルフィ「ハイドン様、今日もお疲れ様です」


最上級の慈愛に満ちた微笑みで、彼女は最上位の回復魔法を詠唱する。光に包まれるたび、ハイドンの肉体は修復され、折れた骨が繋がり、裂けた筋肉が癒えていく。


ハイドン「……シルフィ様、いつもありがとうございます。生き返ります……」


ハイドンが深々と頭を下げて礼を言うと、シルフィはふと、悲しげに影を落としてうつむいた。


シルフィ「いえ……私など。皆さんがあれほど必死に限界を超えて戦っておられるのに、私の魔法は怪我やステータス異常しか治せない。……『肉体の疲労』までは、完全には回復させてあげられないんです」


ハイドン「そ、そんなことを気になさらないでください!! シルフィ様の魔法のおかげで、我々はこうして明日もまた地獄……いえ、訓練に励めるのですから!」


シルフィ「……ハイドン様は、本当にお優しい方ですね。皆さんに慕われる理由がよく分かります。それに引き換え、私は回復魔法しか……」


ハイドン「とんでもない! シルフィ様はこうして、我々の心まで癒やしてくださっている。……もし私でよろしければ、何なりと相談に乗りますぞ」


ハイドンは、憔悴した聖女を少しでも元気づけようと、騎士としての誠実さで言葉を紡いだ。


その瞬間、落ち込んでいたシルフィの顔が、太陽が昇るかのようにぱあっと明るく輝いた。


シルフィ「ハイドン様、本当にいいのですか!?」


ハイドン「(しまった……今の流れは断れない雰囲気だったな……)は、はい、私でよろしければ」


シルフィ「実は……皆さんの肉体疲労を回復するために開発している『特製青汁』の試作品が、こんなに溜まってしまって! ハイドンさん、全部飲んで感想を聞かせてください!」


シルフィはとびきり可愛らしい聖女の笑みを浮かべ、まるで高級なワインでも出すかのように、色とりどりだが確実に毒を含んでいそうなボトルを山のように並べ始めた。


ハイドン「!!!!!!」


ハイドンの脳裏を、昨日自分が飲まされた「深淵の闇」のような青汁の味がよぎる。


「やっぱさっきのナシで」などと言えるはずもない。今のシルフィの期待に満ちたキラキラした瞳は、モーニングスター四個よりも遥かに恐ろしい武器だった。


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#### 魔道研究所・リノの居室


マキ(……南無。ハイドンよ、お前は本当に……。優しさが、お前の最大の弱点だな。シルフィの特製青汁を全試飲するなど、拷問官のセシリアですら思いつかんぞ)


リノ「うふふ、ハイドン様ってば。シルフィ様が開発した青汁、昨日はハイドン様が倒れてから、こっそりシルフィ様が回収してボトルに詰めてたんですよ? つまり、一晩寝かせた『濃縮還元・超絶苦味バージョン』ですね☆」


マキ(……お前、なぜそんなことまで知っている。というか、なぜ止めなかった!!)


リノ「えへへ、見てるだけで面白かったからです。……それよりマキ様、次はエレンさんの『雷魔法』の練習ですよ。雷でびりびりしちゃいましょうねぇ」


マキ(……頼むから、次は誰一人として不幸にならない一日をくれ。私の胃が、騎士団の狂気に耐えられん)


---


王都のあちこちで、元帝国軍の精鋭たちが「愛」という名の底なし沼に引きずり込まれていた。


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#### 騎士団本庁付近・夕暮れのカフェ


ブキャナンは、鼻歌まじりに「カリン」とのティータイムを満喫していた。


ブキャナン「カリンちゃんって本当にカワイイね! それに戦略の話に興味津々だし、俺たち本当に気が合うよ!」


カリン「ブキャナンさんもすっごくステキだよ〜? ゼッターランド帝国三傑のこと、あんなに詳しく知ってるなんて尊敬しちゃう! カリン、もっともっと知りたいなぁ〜。今日はもう帰らなきゃだけど、また教えてくれる?」


ブキャナン「もちろんだよ! ぜーんぶ教えちゃう! カリンちゃん、また会えるかな?」


カリン「ブキャナンさん、あのカレン様のお仕事をお手伝いしてるんだよねぇ? カレン様をもっといっぱい助けてあげたら、また定時退社できるんでしょ〜? じゃあ明日もいっぱい手伝って〜!!(キャピキャピ)」


ブキャナン「よーし! カリンちゃんに会うためなら、明日も書類の山をマッハで捌ききってやるぜー!!」


……その頃、カレンの脳内メモリには「帝国三傑の弱点・私生活・癖」が、ブキャナンの恋心と引き換えにギガバイト単位で蓄積されていた。


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#### フルーレの剣術道場・深夜の悪夢


一方、道場では物理的なホラーが展開されていた。


昨夜の「お色気担当」宣言を引きずったフルーレが、「子供が親の化粧品をイタズラで使った」ような、左右非対称の激ケバメイクで、無表情に二本の刀を構えて迫ってくる。


フルーレ「……。……私、キレイっすか?」


サンチェス「(小声)‥‥な、何なんだ‥‥メイクが酷すぎて‥‥もはやホラーじゃねえか‥‥」


カムストック「(小声)‥‥ホラーどころじゃねーよ‥‥口紅ははみ出しまくって‥‥あの都市伝説の‥‥‥‥」


フルーレ「‥‥何をごちゃごちゃ言ってるんすかぁぁぁ?‥‥私、キレイっすか‥‥?」


ニタァ‥‥と切っ先を向けて笑う。


カムストック&サンチェス「ひいいいぃぃぃっ!!!(全力疾走)」


逃げても逃げても、世界屈指の剣速を誇るフルーレからは逃げられない。


追い詰められたカムストックが、苦し紛れに古の都市伝説の対処法を叫ぶ。


カムストック「ポマード! ポマード! ポマードォォォ!!」


フルーレ「……? 何それ、新しい整髪料っすか? 斬るっすよ‥‥?」


三回唱えても効果はない。むしろ「何それ馬鹿にしてるの?」と言わんばかりに剣の角度が鋭くなるだけだった。


サンチェス「助けて! 誰か! 呪いの人形より怖いっ!!」


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#### 魔道研究所・リノの居室


マキ(……。……。……もう、何からツッコめばいいのか分からん。カレンは完全にブキャナンを『情報の自動販売機』に改造したし、フルーレはあざとさを履き違えて『口裂け女』の亜種になっている……)


リノ「うふふ、マキ様。カレン様のハニートラップ、順調でちゅね。ブキャナン様、明日も書類の山を見て『カリンちゃんのためぇ!』って叫びながらペンを走らせる姿が目に浮かびますね☆」


マキ(奴の精神が燃え尽きるのが先か、帝国の機密が尽きるのが先か……。……それよりリノ、フルーレを止めろ。あいつ、あのメイクのまま明日からこの部屋に来るつもりじゃないだろうな?)


リノ「あ、それはそれでおもしろそうですねぇ。てへっ☆」


マキ(おもしろくないわっ!!私は怖くて寝られなくなるではないかっ!!!!)


リノ「えへへ。……さあ、マキ様。お話はここまで。次はエレンさんの『雷魔法』の実演ですよ。さあ、ハイドン様の部屋に向かって、びりびりドーン! でちゅ☆」


マキ(……ハイドン。お前、今日はモーニングスターに追われ、青汁を飲まされ、最後には雷が落ちるのか……。本当にお前の死に様、歴史に残してやるからな……)


---


王都ロザーリアの各師団では、昨日を上回る狂気と、それを受け入れるしかない男たちの悲鳴が木霊していた。


---


#### セシリアの地獄の訓練所♡(物理と精神の限界突破)


**ギィィィン!!** 三つの鉄球を剣の腹で受け流し、ハイドンはついにその場に膝をついた。


ハイドン「……や、やった! モーニングスター三個……クリアしたぞ!!!」


セシリア「よくやったハイドン!! やれば出来るではないか!! 偉いぞ!!」


セシリアは、とびっきり可愛らしく瞳をうるうると輝かせ、左手で「やったね!」のポーズを決めながら、空いた右手でハイドンの頭を「よしよし」と撫で回す。


ハイドン(……や、やめろ! 破壊神の癖に可愛い!! 可愛いすぎる!!! そのギャップが、私の精神をモーニングスターより深く抉るのだ……ッ!!)


セシリア「さっき向こうで、エレンとジェームズも五個同時をクリアしたから、たっぷりよしよししてやったぞ?」


ハイドン(あいつら……! 私が三個で死にかけている間に、化け物への階段を二段飛ばしで登りやがったな!?)


---


#### カレンの氷の執務室(ハニートラップの報い)


ブキャナン「……はぁ。やっと、終わった……」


デスクに積み上げられていた「昭和の漫画風」の書類の山が、ついに消滅した。


カレン「あら? 仕事が凄く早くなったじゃない。いったい何があったのかしら?(悪どい笑み)」


ブキャナン「い、いえ、何も! 何もありませんよ!!(カリンちゃんに会うため、ただそれ一点突破の集中力だよ畜生!!)」


カレン「そう? じゃあ定時までまだ二時間あるわね。……そこの『特設・戦略会議室(見た目は完全に昭和の取り調べ室、机上には電気スタンドまである)』で、私と一緒に今後の戦略を詰めましょうか?」


ブキャナン「ひ、ひ、ひいいっ!?(もう一思いに殺してくれ……!)」


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#### フルーレのお色気剣士道場(盛りすぎの境地)


道場では、フルーレが「お色気」の定義を物理的な重量へと変換させていた。


フルーレ「……なんか、胸が重くて肩がこるっすね。このパッド、片方50kg……合計100kgあるんすよ」


サンチェス「……。……そ、そうですか(……。なぜお色気を出すためにトレーニング用の重りを仕込むんだ……。あの人、もう感覚が麻痺してるっす……!)」


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#### 訓練終了後の悪夢


ボロボロになったハイドンの前に、一筋の光(絶望)が差し込む。


シルフィ「来ちゃった♡」


そこには、まるで家出娘のように大量のクーラーバッグを抱えたシルフィが、聖母の微笑みで立っていた。


ハイドン「あわわわわ……(そのバッグの中身、全部試作の青汁ですよね……神よ、私は今日、三度死ぬのですか……)」


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#### ハナの武家屋敷(二刀流製菓術)


ハナ「さあガリクソンさん! 右手でマドレーヌ! 左手でフィナンシェ作りの同時多発テロ攻撃だー!!やっちゃえー!!いえ~い!!」


ガリクソン「うおお! やるよ、やってやるよ!! 隠密がなんだ! 諜報がなんだ!! 俺は、王都一番のパティシエになってやるよぉぉ!!」


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#### 魔道研究所:リノの居室


マキ(……。……。……カレンは取り調べを始め、セシリアは部下を撫で回し、フルーレは100kgの胸(偽)で戦い、ハナは諜報員を菓子職人に改造した……。アレクサンド王国、もう終わりだろこれ)


リノ「うふふ、マキ様。皆さん充実してますねぇ。……あ、ハイドン様がシルフィ様の青汁(緑色の液体)を飲んで白目を剥いて気を失いました☆」


マキ(……。リノ、お前楽しそうだな‥‥‥)

今回もご覧いただいた方がおられましたら、本当にありがとうございます。

個々の登場人物に思い入れが出てくると、いろいろイメージが浮かんでくるものなんですね。

今後とも何卒長くお付き合いくださる事と、もし気に入られられたらブックマークして頂けると嬉しいです。

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