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第39話:いとしのカリンちゃん

第39話「いとしのカリンちゃん」



### タリムシティの喫茶店


ブキャナンは、目の前で身を乗り出す「カリン」の可愛らしさにすっかり当てられていた。


カリン「すごーい! ブキャナンさんって帝国の参謀さんだったんですねー、尊敬しちゃいます! ……ねぇ、帝国の主だった参謀さんって何人くらいいて、お名前はなんていうんですか?」


ブキャナン「ええっ、そこに食いついてくるんだ?(笑) いやぁ、いくら投降したとはいえ、帝国の機密情報はあまりペラペラ話さないつもりなんだけどなぁ‥‥」


カリン「そんな……。せっかく憧れの参謀さんに会えたのに、教えてくれないんですか……?」


潤んだ瞳で見つめられ、ブキャナンの理性が音を立てて崩れる。


ブキャナン「カリンちゃん、参謀の仕事に興味あるの?」


カリン「はい! すごくあります! 私の目標なんです。だから、帝国の人員配置とか、名前とか、役職とか階級とか……ぜーんぶ知りたいです(暗黒微笑)」


ブキャナン「よし、そこまで熱心なら全部話しちゃおっかな〜!(どうせ素人の女の子が全部覚えられるわけないし、カッコいいところ見せちゃおう)」


ブキャナンは、帝国の極秘情報をこれでもかと披露し始めた。カリンの瞳の奥で、恐ろしい速度の「情報処理ログ」が流れていることにも気づかずに。


---


### 18時・タリム国王主催 夕食会


会場には、昼間の温泉メンバーも正装(あるいは借り物の服)で集結していた。


タリム国王「セシリア殿、カレン殿、この度は……本当になんとお礼を申せばよいか……」


セシリア「礼などいらん。……それより、まともな、具体的には『肉』とかが出ればそれで満足だ」


**ゴン!!**

カレンのヒールが、テーブルの下でセシリアの脛にクリーンヒットした。


タリム国王「我が国のような弱小国に対し、同盟の義理があるとはいえ、ここまで尽力いただけるとは……。しかも死者を出さずに領土を奪還するなど、もはや神の奇跡としか言いようがありませぬ……!」


カレン「それは、この度の帝国将軍がハイドン殿であったことも大きな要因です。彼もまた、無用な被害を避けるべく腐心されていたのですから」


タリム国王「おお、ハイドン殿! ドルネイとゾイドの城主から聞いておりますぞ。占領後も略奪や圧政を一切禁じ、秩序を守っておられたと。心より感謝いたします!」


ハイドン「……タリム王。私は感謝されるような者ではありません。侵略の先鋒に立った身……謝罪して済むものとは思いませんが、誠に、申し訳ございませんでした」


ハイドンが深く頭を下げる。その時、セシリアが大きく身を乗り出した。


セシリア「タリム国王! このセシリアから一つ願いがある。ハイドン、及びその配下の者たちを正式に免罪してもらえないか? 過去を無かったことにはできぬが、戦いが終われば理解し合うチャンスが必要だと私は思う!」


タリム国王「……セシリア殿がそう仰るなら、我が国に異存はございませぬ! 今や我が国の民は、貴殿を『救国の英雄』、あるいは『勝利の女神』と崇めておりますゆえ!」


セシリア「そうか! それなら安心した。……ならば英雄のよしみで頼む、今すぐこの『お新香』を『牛ステーキ』に……」


**ゴン!!!**

本日二度目のストライク。セシリアは悶絶しながら黙り込んだ。


こうして、タリム国王との会食は(物理的な衝撃を除けば)極めて円満に幕を閉じた。


---


### リノの豪華馬車


マキ(セシリアよ……。お前は、無意識のうちに宗教団体でも作るつもりなのか? 小国とはいえ、国家ひとつを丸ごと『セシリア教』に染め上げてしまったではないか)


リノ「うふふ、マキ様。セシリア様のカリスマ性は、ある意味マキ様より『脳に直接くる』タイプですからね。でも安心してください……私はずっと、世界でただ一人の**『マキ教』**敬虔な信者ですから。てへっ☆」


マキ(リノ……お前の信仰心は、時々教祖である私への『監禁欲』に見えるのだが……。おい、その『聖水』という名の得体の知れないハーブティーをこっちに向けるな!)


---


### タリムシティ・ホテルの喫茶スペース


晩餐会が解散し、各自が自由時間を満喫する中、リノの周囲には元帝国軍の面々と、どこか必死な形相のエレンが集まっていた。


ジェームズ「リノ様、せっかくの自由時間にすみません……。どうしても折り入ってお願いしたいことがありまして」


リノ「大丈夫ですよー。私でよければ相談くらい乗りますから。あれ? そういえばブキャナンさんはいないんですね?」


カムストック「なんか知らないけど『めちゃめちゃ可愛い子をナンパして友達になった!』って、鼻の下を伸ばしてどこかへ行きましたよ」


サンチェス「あいつがナンパに成功した時は、大体ロクなことにならないんで、俺たちは関わらないようにしてるんです」


マキ(カレンのやつ……。ブキャナンから徹底的に情報を吸い上げまくる気だな。今頃、帝国の機密が蛇口をひねったみたいに漏れ出しているに違いない……)


エレン「そ、そんなことより早く相談を! 私の生死に関わるんです!」


ジェームズ「あ、ああ、そうだった。リノ様にお願いしたいことというのは、以前お話しいただいた『魔道施設(研究所)』に住まわせていただけるという件です」


ハイドン「……私らも、一緒に住ませてもらえないだろうかという、非常に厚かましい相談なのだが……。やはり将軍だった身として、王都でどう過ごすべきか不安でな」


リノ「あ、なるほど。確かにそうですね。騎士団の正規宿舎や寮だと、お互いに気を遣うでしょうし。かといって、一般兵の方々みたいに普通のアパートでは、有名な『隊長ズ』の皆さんは顔が割れていて危険かもしれませんしね。了解しました、いいですよ! 私の研究所の居住区を貸し出しましょう」


エレン「あ、あの……わ、私も……私もそこへ行ってもよろしいでしょうか……!?」


リノ「え? エレンさんはセシリア様と同じ宿舎でしたよね? ……あ、でもそうか。王都に帰ってからは、セシリア様の『お世話(暴走の巻き添え)』がさらに激しくなりますもんね。かなり危険ですね。よし、私からセシリア様に話してみます!」


エレン「ありがとうございます……ありがとうございます……! うぅ……ぐすん……(ようやく地獄から解放される……!)」


マキ(……エレン、お前。そんなにセシリアが怖いのか。同じ屋根の下にいるだけで命の危険を感じるなんて、本当にかわいそうになってきたぞ……)


---


### タリムシティ・夜の喫茶店


一方、そんな平和(?)な相談とは対極の、恐ろしい「尋問デート」が続いていた。


ブキャナン「カリンちゃんは、本当に聞き上手で可愛いね〜。こんなに話が合う子は初めてだよ」


カレン「ブキャナンさん、すごーい! まだ帝国のお友達で連絡が取り合える人っています? いたら、ますます素敵っ。紹介してほしいなー?」


ブキャナン「アハハ、そうだね。特に親しいやつに後で連絡してみるよ。カリンちゃんのためなら、なんでもしちゃうよ!」


カレン(フフフ……。ブキャナンは帝国の参謀の中でも、情報網がかなり上のクラスだというのが分かったわね。ハイドン配下にいたのは、単に個人の忠誠心ゆえ。本来は大参謀の地位にいてもおかしくない器だわ。……まだまだ喋ってもらうわよ、ウフフ)


カレンの瞳に宿る冷徹な光を、酔いしれたブキャナンは「恋の炎」だと盛大に勘違いしていた。


マキ(……カレンよ。本当にお前は死神だな。ブキャナン、お前が明日、カレンの隣で真っ白に燃え尽きている姿が容易に想像できるぞ……)


---


### 王都帰還への進軍路・カレンの馬車


馬車の窓から、遠くにアレクサンド王国の王都の尖塔が見え始めてきた。


ブキャナン「いやぁ、カリンちゃんは本当に素敵な子だった。連絡先……じゃなかった、魔法通信の周波数を交換できなかったのが一生の不覚だよ」


昨夜の「デート」を思い出し、だらしなく頬を緩めているブキャナンを、隣でカレンが冷ややかに見つめている。現在の彼女はバッチリメイクに軍服姿。ブキャナンの中では「カリン」と「カレン」はまだ完全に別個体だ。


カレン「……そう。そんなに楽しい事があったのなら良かったわね」


ブキャナン「えっ、あ、いや、それはその……。あ、ところでカレン殿、騎士団長のマキ様は、やはりまだ特殊任務中なのですか?」


カレン「ええ、国家機密の最優先事項に当たっているわ。彼女が動くときは、大陸の地図が書き換わる時。今はまだ表に出る段階ではないのよ」


ハイドン(やはり、マキ・クロフォードは別格か。彼女がいない今が、我々が恩を返すための修行期間なのかもしれん……)


---


### リノの豪華馬車・個室


リノ「ほーら、マッキーちゃん。もうすぐ王都ですよー。お外見てみますか?」


マキ(「マッキーちゃん」か……。ハイドンたちの前ではその名で通すことになったが、最強の騎士団長としてのプライドが、このピンクのフリル付きの服を着るたびに削られていくぞ……)


リノ「うふふ、マキ様。そんなに難しい顔をしないの。ハイドン様たちには、『親戚の子供を預かっている』って言えば、彼らお人好しだから信じきってますから。さ、王都に着いたら私の研究所へ直行ですよ。あそこなら誰にも邪魔されずに、マキ様の……いえ、マッキーちゃんの英才教育ができますね!」


マキ(英才教育という名の、変態行為のおままごとだろうが! ……だが、今は力を蓄える時。いつか私が元の姿に戻った時、リノやセシリアたちがどれだけ私に近づいているか、それだけは楽しみだ)


---


### 王都・騎士団正門前


「「「「セシリア様、お帰りなさいませ!!」」」」


門をくぐるなり、待機していた若手隊員たちが一斉に敬礼する。その中心には、巨大な木箱を抱えた郵便配達員が立っていた。


配達員「セシリア・ローランド様ですね! 各地の土産物屋から届いている『限定ペナント』の不在連絡票が142枚と、代引きの荷物が30箱届いております! サインをお願いします!」


セシリア「おおお! ついに届いたか! 待っていたぞ! エレン、すぐに運ぶのを手伝うのだ!」


エレン「……。リノ様、すみません。さっそくですが、例の『魔道研究所』への引っ越し……今すぐ、今すぐにお願いできませんでしょうか(血涙)」


マキ(エレンよ……。お前の修行の第一歩は、セシリアからの物理的な逃走から始まるようだな)


---


今回もご覧いただいた方がおられましたら、本当にありがとうございます。

個々の登場人物に思い入れが出てくると、いろいろイメージが浮かんでくるものなんですね。

今後とも何卒長くお付き合いくださる事と、もし気に入られられたらブックマークして頂けると嬉しいです。

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