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第30話:究極の料理vs至高の料理

第30話「究極の料理vs至高の料理」



土産屋通りのベンチでは、ゾイド名物の「自虐銘菓」を囲んで、セシリアと若手隊員たちが和気あいあいと(?)試食会を繰り広げていた。


セシリア「この『ゾイドの雀の涙まんじゅう』、泣いている雀のデザインも風情があるが、皮のしっとり具合もなかなかだぞ」


隊員A「この『赤字まんじゅう』も、皮の白さと中身の赤あんの対比が、企業の苦悩を表していて美味いっすね」


隊員B「『火の車せんべい』も一味が効いてて絶妙だな。……この街、どんだけ苦労してんだ」


セシリア「お前たちは土産屋の風情と、その裏にある切なさを理解できるとは……かなり見どころのある奴らだな! これから伸びるぞ、頑張れ!」


隊員C「あはは!エレン、 お前、なんだかセシリア様みたいな言い方するよな。……っていうか、やっぱ眼鏡かけててもセシリア様に似てるし」


隊員A「セシリア様は俺たちの憧れだからな。お前、似てるって言われるなんて光栄だと思えよ? マジでそっくりなんだから」


隊員B「今度、セシリア様の予備の隊服とか鎧を借りて着てみたらどうだ? コスプレだ!」


セシリア「む、お前たち、私に副長のコスプレをさせたいのか? ……まあ、そこまで言うのならしてやらんこともないが?」


セシリアは少し顔を近づけ、上目遣いでイタズラっぽく笑った。「……ただし、かなり高くつくぞ?」と、猫の手のように手を丸めた「お仕置きポーズ」のおまけ付きだ。


隊員A「お、おう、望むところだぜ……(コスプレしなくても、そのままでも破壊力がヤバいな……)」


セシリア「おっと、もうこんな時間か! 友達と『スーパー銭湯・ゾイドの湯』に行く約束をしておるのだ。すまないが、私はこれでおいとまさせてもらうぞ。お前たち、今日もありがとうな、楽しかったぞ! また遊ぼう!」


「ごめんね」と手を合わせるあざといポーズで微笑み、セシリアは軽やかに駆け出していった。


---


小走りにゾイドの湯へと向かうセシリア。だが、人通りの少なくなった路地の角で、彼女はピタリと足を止めた。


その背中に、先ほどまでの「天然なお嬢ちゃん」の甘さは微塵もない。


セシリア「……ふん。そろそろ出てきたらどうだ? 遠慮はするなと言ったはずだぞ」


背後の影から、観念したようにジェームズが姿を現した。


ジェームズ「……やはり、気づいていましたか。」


(げえええっ! 俺も気づかれているのか!?)


十数メートル後ろのゴミ箱の陰で、ガリクソンは心臓が止まるかと思うほど戦慄していた。元・帝国諜報部隊長のプライドが、音を立てて崩れていく。


セシリア「ジェームズよ。お前も湯に行くか? ……それとも、そこに隠れているお前の『元上司』も誘って、三人で私の『組手』に付き合うか?」


ガリクソン(ヒィッ!? 名前こそ出されていないが、完全にロックオンされているーー!!)


---


その頃、馬車の中。

マキ(セシリアよ……。お前がスーパー銭湯に行くのは勝手だが、ロビーで帝国捕虜の兵士たちと鉢合わせて、無自覚に『聖女スマイル』を振りまくのだけはやめてくれ。ゾイドの街が『セシリア教』の聖地になってしまう……。って、リノ! 寝言で『いい湯だね……』と言いながら、私の服を脱がそうとするな!! 風邪を引く! 私の繊細な体が風邪を引いてしまうぞーー!!)


マキの平和な(?)夜は、まだ遠い。


---


### スーパー銭湯への道中


ジェームズ「……しかし、いつから気づいていたんですか?」


セシリア「最初からだが? それがどうかしたのか?」


さらりと答えるセシリアの横で、ガリクソンはガタガタと震えが止まらなかった。


ガリクソン(戦闘力は桁違いの鬼神級だが、性格は大味で隙がある……そう分析していた俺の目は節穴だったのか!? 帝国の諜報技術を嘲笑うかのような見破り、やはりこの女、底が知れん!)


ジェームズ「はは、やはり私などはまだまだ修行が足りませんね」


セシリア「いや、今回はかなりの隠行力だったぞ? まあ、お前は私の『彼氏』に立候補した男だからな。私が気づかないわけなかろう?」


ガリクソン「(小声)ひぃっ!? ジェームズ……お、お前、そんな羨ま……いや、恐れ多いことをしたのか!?」


ジェームズ「(小声)あんただって、この前のハニトラで『金髪最高!』ってデレデレだったでしょうが!」


しかし、ジェームズの脳裏には、あの日のリノの「呪いの言葉」が鮮明に蘇っていた。


『セシリア様の彼氏候補は今までもたくさんいましたが、その全員が謎の失踪を遂げるか、精神が廃人になって一生病院送りになっていますが……。あ、お墓の準備はリノにお任せくださいね、えへっ☆(ちなみにここまで言っていない)』


セシリア「……どうしたジェームズ? 急に青白い顔になってるぞ。風呂に入る前から湯あたりか?」


青ざめ、ガクガクと膝を笑わせるジェームズ。それとは対照的に、セシリアは少し照れたように頬を赤らめ、首を傾げて「ハテナポーズ」を決めている。


ジェームズ「あ……あわわ、あわわわわわ……(死ぬ、これ確実に消される……!)」


---


### リノの馬車


その頃、馬車の中でようやくリノの腕から脱出したマキが、窓の外を眺めながら深く溜息をついていた。


マキ(ジェームズよ……。世の女性が考える『理想の彼氏像』と、セシリアが抱くそれは、大陸の端から端ほども食い違っている。おそらくセシリアの彼氏像とは――自分より強い男。喧嘩しても物理的に死なない男。そして、毎日朝から日が暮れるまで組手の相手をしてくれる男。……要するに、『壊れないスパーリングパートナー』だ。まあ、頑張れよ。私は供花くらいは送ってやる)


リノ「……むにゃむにゃ……マキ様ぁ、次はサウナで我慢比べしましょう……。負けたら……結婚ですよ……」


マキ(地獄か。サウナの中にリノと二人きりなど、精神が蒸発してしまうわ!!)


---


### スーパー銭湯・ゾイドの湯


一行が到着すると、そこは市民や帝国捕虜の兵士たちでごった返していた。


セシリア「おー! 賑わっておるな! ジェームズ、ガリクソン、お前たちも男湯で疲れを癒してこい! ……ただし、風呂場での組手は禁止だぞ?」


ガリクソン「(しませんよ!! 誰が全裸のセシリア様と組手を……あ、いや、しません!!)」


セシリアは新人の隊服を脱ぎ捨て(まだ脱衣所ではない)、意気揚々と暖簾をくぐる。その先には、すでに湯船でくつろぐカレン、フルーレ、ハナの姿があった。


カレン「あら、遅かったじゃない。園芸師団長」


セシリア「その呼び方はよせ!!」


---


### スーパー銭湯・ゾイドの湯(露天風呂)


湯気に包まれた露天風呂。カレンは縁に腕をかけ、師団長たちを見渡した。


カレン「いい? 18時からは夕食会だから時間厳守よ。あと2時間はあるから、それまではゆっくりしていいけれど」


ハナ「うえ〜……。またあの城主様や評議会の方たちとの会合? あの湿っぽい空気、のぼせそうだよ」


フルーレ「ハナ、あからさまにめんどくさそうな顔をしたらダメっすよ……(と言いつつ、自分も死んだ魚のような目をしている)」


シルフィ「フルーレが一番めんどくさそうな顔してるわよ? 隠しきれてないわ」


セシリア「ふふん、お前たちと違って、この私だけには『逃げ道』があるのだ! なあ、エレン?」


エレン(偽セシリア)「えええっ!? セ、セシリア様、どうか勘弁してください……! もう演説でお腹いっぱいです……」


カレン「ちょっとセシリア!! マキ様の代理とはいえ、あんたは一応私たちの総大将なのよ!? 少しは自覚を持ちなさい!」


エレンの疲労困憊ぶりを見かねて、カレンの叱咤が飛ぶ。


セシリア「そ、それは分かっておる! だが、しかしだな!! あの倒産寸前の町工場みたいなオッサン達との夕食会だぞ!? 悲壮感溢れる赤字トークが延々と続く上に、夕食だってほうれん草のおひたしとか、メザシの塩焼きとか、納豆とか、梅干しとか、味噌汁とかしか出んぞ! 断言してもいい!!」


カレン「黙れ!! そんなわけあるかっ!! 相手は王族の末席なのよ、最低限の贅沢は……」


**ゴンッ!!**

露天風呂の底で、カレンの容赦ない蹴りがセシリアのスネを捉えた。


---


### ゾイド城・夕食会


二時間後。カレンたちは、かつてない衝撃の中にいた。


ゾイド城主「えー……皆様、お食事をしながら聞いてください。我がゾイドの経営状況について説明しております。物価高と帝国の経済制裁の影響により、我がゾイドの累積赤字は……(以降2時間)」


重苦しい空気。城主の語る数字は、もはや戦記物ではなく会計監査報告書である。


ゾイド城専属料理長「本日のメニューをご説明させていただきます。前菜は『ほうれん草のボイル』。続きまして『味噌のスープ』。メインディッシュは『メザシのソルトグリル』、口直しに『梅のピクルス』、そして『ファーム・ドゥ・ソイビーンズ(納豆)』でございます」


カレン「………………」


カレンは箸を持ったまま固まった。隣では、セシリアが「見たか! 私の直感に狂いはなかったのだ!」と言わんばかりに、鼻の穴を膨らませてドヤ顔をしている。


ハナ「……ねえ、これ本当に『メインディッシュ』がメザシなの?」


フルーレ「横文字にしてオシャレにしてるけど、これ完全にお寺の朝ごはんっすよ……」


シルフィ「……逆に、この戦時状況でよく納豆なんて発酵食品を用意できたわね、すごいですわ、ウフフ」


リノ「うふふ、質素で健康に良さそうでちゅねー。あ、マキ様には豆を潰して食べさせてあげないと」


マキ(カレンよ……。お前の蹴りは無駄だったようだな。そして城主よ、せめてメインはアジの開きくらいにしてくれ。王国の重鎮たちが、メザシ一匹でドルネイ進軍の士気を保てると思っているのか……!?)


静まり返る食卓に、城主の「キャッシュフローが……」という呟きだけが虚しく響く。


今回もご覧いただいた方がおられましたら、本当にありがとうございます。

個々の登場人物に思い入れが出てくると、いろいろイメージが浮かんでくるものなんですね。

今後とも何卒長くお付き合いくださる事と、もし気に入られられたらブックマークして頂けると嬉しいです。

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