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第25話:華やかな争奪戦

第25話「華やかな争奪戦」


セシリア「それでジェームズよ、私に何の用なのだ?」


指を唇にあてて小首を傾げ、あざとさ1000%の「ハテナポーズ」を無意識に繰り出すセシリア。


ジェームズは脳に直接響くその超破壊的可愛さに耐え、決死の覚悟で話を切り出した。


ジェームズ「セシリア……さん。俺の仲間たちの命を助けてくれて、本当にありがとうございます! どうしても、直接お礼が言いたくて……」


セシリア「なんだ、そんなことか。気にするな。我が主マキ様は無駄な殺生を心から嫌う御方。私はただ‥‥その教えに従っているだけだ」


それでも深々と頭を下げるジェームズに、セシリアは「やめんか!」とお馴染みの「お仕置きポーズ」で応える。


ジェームズ「セシリアさんやカレンさん、そんなに凄い人たちが心から崇めるマキ団長……。一体どんなに威厳があって恐ろしい御方なんだろうな」


セシリア「素晴らしい御方だ‥‥。それ以外に言葉はない‥‥」


---


その頃、その「素晴らしい御方」は――。


カレン「マキ様、デザートあげまちゅねー? あーんちてくだちゃいねー? おいちいでちゅか? もう可愛ちゅぎて食べちゃいたいほどでちゅねー!!」


マキ(ひ、ひいいっ! 助けてくれ!! 変態軍師のカマトト言葉攻めによる超破壊攻撃で、私の騎士団長としての精神がズタズタに破壊されてしまうー!!)


リノの思念『ふふふ。言葉攻めの精神攻撃の後は、私の愛の物理攻撃が待ってまちゅよー?』


マキ(地獄だ! ここは地獄の王宮だ!!)


---


一方、セシリアとジェームズ。


セシリア「お前のところの隊長や部下たちは、王宮の収容所にいるとカレンから聞いた。……もう会ったのか?」


ジェームズ「……いえ、まだです」


セシリア「なぜだ? お前の安否くらい早く知らせてやればよいものを‥‥」


ジェームズ「……隊長たちから見たら、俺は大失態をした上に勝手に潜入し、情報を洗いざらい売り飛ばした大逆賊ですよ。ハニートラップにまでかかった大恥晒しだ。隊長なら絶対にしないミスをした俺が、どんな顔して会えばいいんですか……」


セシリア「またそんな小さい事でウジウジと‥‥ええい! 相変わらず煮え切らない奴め!! つべこべ言わずに来い!!」


ジェームズ「うわあ! や、やめてくれ!?」


セシリアはジェームズの右腕を両手でガッシリ掴むと、そのまま収容所へ向けて猛進した。


傍から見れば、彼女が「次、あっち行こ?」と可愛らしく腕を組んで甘えているように見える。


だが、実態は人間離れした怪力で抵抗虚しくズルズルと引きずられていた。


セシリア「着いたぞ!」


ジェームズ「セ、セシリアさん! まだ心の準備が……!!!!」


ジェームズはその光景を見て戦慄した。


そこには、白髪メガネの下っ端隊服を着た可愛いお嬢ちゃん(シルフィ)にお酒を注いでもらって鼻の下を伸ばしている帝国諜報部隊隊長の姿があった。


ハナ「隊長さん、次はボクのお酒も飲んでよねー?」


フルーレ「ちょっと、なんで私のお酒は飲まないんすか? 怒るっすよ?」


エレン(偽セシリア)「あの……お口に合いますでしょうか……」


全員がメガネをかけ、新人隊服を身に纏った「最強のハニートラップ・ドリームチーム」におねだりされ、帝国隊長は「グフフ、どのお嬢ちゃんから飲もうかなー」と完全に骨抜きになっていた。


そこへ引きずり込まれたジェームズ。


隊長「……ん? おお、貴様は大逆賊の裏切り者ジェームズではないか!! チャラい貴様のことだ、おおかた安っぽいハニートラップにでも引っかかっておったのだろうが!! 俺を見ろ! 俺は絶対に――」


ジェームズ「……(どの口が言ってるんだ、このおっさん……)」


帝国諜報部隊、全滅の危機は脱したが、プライドの方は再起不能なレベルで全滅していた。


---


帝国軍諜報部隊第24隊隊長、ガリクソン(26歳)。彼はジェームズの顔を見るなり、ここぞとばかりに威厳を示そうと声を張り上げた。


ガリクソン「ジェームズ! だいたい貴様は昔から可愛い女の子を見るなりナンパばかりしてどうしようもない奴だった! その不真面目さが今回の失態を招いたのだ!!」


フルーレ「……ちょっと隊長さん。説教なんていいから、何で私が注いだお酒は飲まないんすか? そんなに私は嫌いなんすか?」


フルーレがメガネをクイッと上げ、少し潤んだ瞳(演技)でガリクソンを見つめる。


ガリクソン「おお、グレーのお嬢ちゃん! すまんすまん、全然嫌いじゃないよ!? 実はさ、今日戦場で、お嬢ちゃんみたいなグレーの髪の恐ろしい師団長に半殺しにされちゃってさ……ついついそれを思い出して震えちゃっただけなんだ。お嬢ちゃんはこんなに可愛いし、全然別物だからね!」


ジェームズ(隊長……。目の前のその「可愛いお嬢ちゃん」が、貴方を半殺しにした八刀流のフルーレ本人なんですが……。メガネの破壊力すげえな……)


ハナ「ずるいよ! ねえねえ隊長さん! ボクは? ボクのことは可愛くないの!?」


ハナが身を乗り出して、あざといポーズでガリクソンの袖を引く。


ガリクソン「もちろん赤髪のお嬢ちゃんも最高に可愛らしいよ! よしよし、いい子だ、頭ナデナデしてあげよう!」


ジェームズ(隊長……。おそらくその人は、これから貴方の直属の上司になる「闇の女王」ハナ様だと思うんですけど……。命知らずにも程がある……)


周りを見渡せば、他の捕虜たちも同様だった。シルフィやエレン、さらにはハナの部下たちが総出で酒を振る舞い、まるで親睦会のようになっている。


皆、過酷な捕虜生活を覚悟していただけに、この「天国」のような状況に完全に魂を抜かれていた。


だが、ジェームズは気づいた。彼女たちの会話の節々に、鋭い「トゲ」が混ざっていることに。


ハナ「ねえねえ、隊長さんはやっぱり諜報のお仕事が大好きなんだよね?」


ガリクソン「まあ、それしかやってきてないからねぇ。天職だと思ってるよ」


フルーレ「そうかな? 貴方の剣術、受け流しがかなり筋よかったと思うけど。本当は剣士の方が好きなんじゃないすか? 剣士師団、福利厚生いいっすよ?」


ガリクソン「そりゃまあ、剣術も学んだし不得意じゃないけどさ……お嬢ちゃんに褒められると照れるなぁ」


ハナ「やっぱ諜報だよ! ボク、諜報を極めてる男の人、すっごく好きだなぁ……?(上目遣い)」


フルーレ「……いや、男は剣術でしょ。隊長さん、剣術の道に来る気……あるんすよね?(不敵な笑み)」


ジェームズは戦慄した。

これは気遣いなどではない。王国が誇る二大師団長による、帝国トップエージェントの「引き抜き(強制)」という名の壮絶な縄張り争いだった。


そして、その背後。


セシリア「ふむ……。あっちの隊長は人気だな。ジェームズよ、安心しろ。お前は私がおんぶしてでも私の部隊に連れて行ってやるからな!」


ジェームズ「……俺の希望を聞いてくれる人は、この軍団にはいないんですか!?」


マキ(ジェームズよ、諦めろ。我が騎士団の「欲しいものリスト」に載った時点で、お前の人権は消滅したのだ……。それよりリノ、寝る前のおむつ交換に一時間かけるのはやめてくれ……)


---


ガリクソン「それにしてもジェームズ!相も変わらず女連れで現れるとは、裏切りの極み!!そんな金髪の可愛いお嬢ちゃんを連れて歩くとは、羨ま……って、んん? さっきの真面目そうなお嬢ちゃんと同じ顔……双子ちゃん???」


セシリア「ああ、双子だ。あれは妹だな。酒くらいなら私も注いでやってもいいぞ? ほれ?」


セシリアは新人の隊服を少し着崩し、上目遣いでグラスを差し出す。その仕草は、百戦錬磨の帝国軍人をも惑わす「天然の魔力」に満ちていた。


ガリクソン「おお、お嬢ちゃんは可愛らしいから安心して飲める! 妹の方は、なんというかお堅いというか威厳がありすぎてね。……まあ、いろいろ思い出して酔いが醒めかけてたところなんだ」


セシリア「何をいろいろ思い出したのだ?元カノか何かか?」


ガリクソン「俺、昼間にさ、バケモンと戦ったんだよ。おたくらの総大将ね。金髪で鋭い目つきでさ、強さはそりゃもうこの世のものとは思えない程のバケモンで……。さっきの双子の妹は、その人の目つきに似てたんだよな」


セシリア「ワッハハッハ! それは酔いが醒めるな! 私は大丈夫だから、安心して飲むとよいぞ」


頬を朱く染めながら、イタズラっぽくクスクスと笑うセシリア。


ガリクソン「そうだな! お嬢ちゃんは可愛らしいし、すごく面白い!! あのバケモンとのことも綺麗さっぱり忘れられる可愛さだ!! お近づきに頭をナデナデしてやろう!」


ジェームズ(隊長……あんた、諜報員としての危険予知能力はどうしたんだ!? そのバケモン本人を「可愛い」で上書きして、あまつさえ頭を撫でようとするなんて……。明日、俺と隊長の死体が並んでないことを祈るばかりだ……)


「案の定、みんなここにいたのね?」


そこへ、温泉から上がって浴衣姿ですっぴんのカレンと、同じく浴衣姿でマキを抱いたリノが立っていた。


カレンは眼鏡を外しており、いつもの「氷の軍師」の威圧感は鳴りを潜め、どこか儚げな美しさを漂わせている。


ガリクソン「おお! 銀髪の可愛いお嬢ちゃんと、茶髪の子持ちのお嬢ちゃんまで追加とは!! 王国騎士団の接待って凄すぎない??? 天国かよここは!!」


ジェームズ(……もう見てられん!! さらば隊長!! 来世があったらまた逢いましょう!!)


ジェームズがこっそりその場を逃げ出そうと後退りした、その時。


セシリア「ジェームズ。コソコソと、どこに行こうとしているのだ?」


ガシッ、とジェームズの首根っこを掴むセシリア。笑顔だが、その指先には「逃がさんぞ」という鉄の意志(と怪力)が宿っていた。


ジェームズ「ひいいっ!!」


カレン「ふふ、賑やかでいいわね。ガリクソン隊長さん、でしたっけ? 貴方の部下たちの配置転換について、ゆっくりお話ししましょうか。……お酒の力を借りてね?」


マキ(……最悪のタイミングで最凶の布陣が揃ってしまったな。ガリクソンよ、お前が今「天国」だと思っているその場所は、カレンという名の魔王が支配する「生殺与奪の実験場」だ。ジェームズ……お前はもう諦めて、私と一緒にこの混沌を見届けるがいい……)


リノの思念『うふふ、マキ様。浴衣姿の私に見とれてまちゅね? 今夜は寝かせてあげまちぇんよー?』


マキ(誰か……誰かこの変態魔道士を捕らえてくれーーー!!)


こうして、タリム王宮の収容所は、帝国の諜報エリートたちが王国の魔女たちに魂を刈り取られる「魅惑の魔窟」と化したのであった。


今回もご覧いただいた方がおられましたら、本当にありがとうございます。

個々の登場人物に思い入れが出てくると、いろいろイメージが浮かんでくるものなんですね。

今後とも何卒長くお付き合いくださる事と、もし気に入られられたらブックマークして頂けると嬉しいです。

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