第10話:マキ様の深紅の団服
第10話「マキ様の深紅の団服」
セシリア「それではマキ様!!可愛いらしくなったアソコちゃんを丁寧に拭かせていただきますっ! いざっ!」
マキ(貴様ぁ〜!! いちいち、その名称を連呼するなぁぁぁ!!!!)
脳内でリノが大爆笑しているのが伝わってくる。セシリアは天然なのか、それともマキへの狂信的な愛ゆえの暴走なのか。もはや判別すらつかない。
セシリア「丁寧に、綺麗に、そして優しく、すみずみまで丹念に……」
セシリアの指が、ガーゼ越しに「ちいちゃな場所」のひだの一つ一つを、文字通り丹念に、隅々までなぞり、拭き清めていく。
マキ(んはっ!? むぐっ! おふっ! 私は……あふっ! 騎士団長だ……耐えて……耐えてみせる……っ!)
一分が一時間、いや一日にも感じられる永遠の蹂躙。だが、二十三歳の騎士団長の意地が、絶叫を喉元で堰き止めていた。
そして、ついにガーゼが離れる。
リノの思念『マキ様凄いです! あんなにちいちゃくなったわれめを、あんなに執拗に触られても恥ずかしさに耐え切るなんて! さすがです! やれば出来る子です! おりこうさんです!』
マキ(はあ……はあ……リノ……。お前は、元に戻ったら、絶対に、殺す……)
セシリアは、ドラゴンの首でも討ち取ったかのような達成感に満ちた顔で、自らの手を見つめていた。
セシリア「あのマキ様の可愛らしくなったアソコちゃんを、私の手で綺麗にしたぞ……」
マキはボロボロになり、涙目でぐったりとしていたが、その瞳には
「私は部下の前で理性を守り抜いた」という、凄惨な大戦を終えた後のような誇りが宿っていた。
マキ(勝った……私は、己に勝ったのだ……)
リノの思念『マキ様、本当にお利口さんですよ! よしよししてあげたいくらいです!』
マキ(貴様……)
あとはオムツを履かせるだけ。しかし、沈黙の中でシルフィが、獲物を観察する学者のような目で、再びマキの下半身を覗き込んだ。
シルフィ「時魔法が実在したのも驚きですけど、ここまで大幅に身体を変化させるとは……。特にこのアソコちゃん。一度は生殖機能を備えるまで成熟したはずなのに、ここまで幼く、未発達な状態まで退行させてしまうなんて……」
マキ(……やめろ、シルフィ。学術的な興味で見るな……)
フルーレ「大幅に変化というか、マキ様の元の身体が凄すぎただけな気もするっすね。まあ、あの大人の大事な部分が、こんなに小さくちんまりと逆戻りしたのは確かに魔法の驚異っす」
フルーレが、無造作にマキの「小さな場所」を指差す。
マキ(フルーレ……貴様もだ……。言うな、指を差すな……)
セシリア「どんな屈強な人間でも、必ず無力な幼少期があった。その弱点を突く術が現実にあったとは……。しかし、見てくれ。マキ様には、これほど凄まじいまでに愛らしい時期があったのだ。人を心から魅了させるこの愛くるしさ……。さすがはマキ様、このセシリア、まだまだ貴女には敵いませぬ!」
マキ(もうやめてくれ……! 褒め殺しはやめてくれ! 何も言わないでくれー!!)
称賛されればされるほど、全裸で股を広げている現状の惨めさが際立つ。
リノは特等席で、足を組み、ワインでも飲んでいるかのような優雅さで、この地獄絵図をニヤニヤと楽しんでいた。
だが、マキはまだ気づいていなかった。
オムツを履かせるという作業は、さらなる「接触」を伴うということに。
部下たちの悪気のない「言葉の暴力」という名の刃が、全裸で横たわるマキの「ちんまりとした肉体」を執拗に刻み続ける。羞恥のあまり、マキの未熟な肌は真っ赤に上気し、今にも湯気が立ちそうだ。
高みの見物を決め込んでいたリノが、満足げに声をかける。
リノ「セシリア様、そろそろおむつを。マキ様がお風邪を召されたら大変ですので」
セシリア「あ! そうであった、うっかりしていた。マキ様は可愛らしくなったアソコちゃん丸出しのままであったわ。不覚……!」
シルフィ「セシリア様、医学的には『生殖機能が退行した未発達な生殖器』ですよ」
シルフィが冷静に(残酷な)補足を入れる。
フルーレ「……もう、まどろっこしいっすね。お○ん○んでよくない? 実際そうなんだし」
フルーレが、事も無げに禁断の単語を口にした。
マキ(うわあぁぁ! 連呼するなと言っておるだろうが!!! しかもさっきより名称のバリエーションが増えてないか!? それに『お○ん○ん』とか言うなぁぁ!! 騎士としての私の尊厳がああぁぁ!!)
リノの思念『――ふふっ、マキ様。大人の立派な生殖器から、ちんまり縮んだお○ん○ん……。部下たち全員に名前を付けられて、とっても可愛らしいですよ?』
マキ(うおぉ〜!!! リノ貴様!!! 末代まで呪ってやる、いや時空を超えて呪ってやる〜!!)
マキが脳内で絶叫していると、リノが「さあ」とおむつを差し出した。
リノ「それでは、こちらのおむつを。さあセシリア様、仕上げです」
セシリア「うむ! いざ、おむつをお着けいたす!!」
マキ(ひいいっ! 誰か助けてくれ!! 誇り高き騎士団員が、団長の股間に群がって何をしているんだ!!)
セシリアはリノの指示通り、マキの小さな両足をひょいと持ち上げた。視界が逆転し、剥き出しの「ちんまりした場所」に朝の冷気が触れる。その直後、ふわふわとした、しかしマキにとっては屈辱の布が、お尻の下に敷かれた。
セシリアの指が、おむつのギャザーを整えるために、マキの柔らかな股ぐりを丁寧に、そしてしっかりと締めていく。
パチン、パチンとテープが留まる音が、処刑終了の合図のように響く。
マキ(……はぁ、はぁ。お、終わったのか? ようやく……隠されたのか……?)
マキは、ようやく股間に戻ってきた「布の感覚」に、かつてない安堵を覚えていた。しかし、地獄のモーニングルーティンは、これで終わりではなかった。
股間に戻ってきた布の感触に、マキは命を拾ったかのような安堵を覚えていた。しかし、その安堵は一瞬で打ち砕かれる。
「隠れた」のではない。マキという存在が、今や「おむつ姿の赤ん坊」という、全裸よりも凄惨な視覚的破壊力を持つ記号に変換されてしまったのだ。
セシリア「さすがはマキ様だ! おむつ姿もサマになっている!! なんと威厳のあるおむつ姿!! 素晴らしい!! 私は貴女の部下であることを誇りに思います!!」
セシリアが、まるでおむつを王者のマントか何かと勘違いしているような熱量で叫び、その場に跪かんばかりの勢いでマキを称えた。
マキ(うぎゃあぁあ! こいつは何を言っているのだあぁ!! 馬鹿か!? 馬鹿なのか!? おむつに威厳などあるわけなかろう!! 目を覚ませセシリア!!)
リノの思念『――ふふっ、マキ様とセシリア様は昔から本当に仲が良いですよね。私、嫉妬してしまいそうですよ。……というか既に嫉妬してますんで、後で私、何するかわかりませんよ?』
マキ(リノ貴様ぁ! サラッと恐ろしいことを言うなぁ!! これが仲が良く見えるか!!?? いじめ抜かれている私を助けろと言っているのだ!!)
フルーレ「昨日は全裸だったから、マキ様のおむつ姿は初めてっすね。こんな可愛らしい姿が拝めるなんて、眼福だよ」
フルーレが、さも名画でも鑑賞するかのように目を細める。
シルフィ「そうですね、あのマキ様がおむつを着けた姿なんて今まで考えたことすらなかったけど。こうして目の前に、とびっきり可愛いマキ様がおむつ姿でちょこんと座っているなんて……」
シルフィも、普段の冷静さはどこへやら、慈愛の目から「オタクの熱狂」に近い光を漏らしている。
マキ(あ、あ、あわわわわ……リノ!!!! 早く服を用意してくれ!!! 今すぐだ!!! は、早くぅ〜〜〜!!)
もはや羞恥のキャパシティを超え、マキは小刻みに震えながらリノに縋った。
リノの思念『マキ様、お顔を真っ赤にされて可愛らしいです! ステキですよマキ様のおむつ姿! 私はいつもすぐ脱がせちゃいますけどね』
マキ(き〜さ〜ま〜〜早くしろっ!!! 殺意が湧く前に早く着せろ!!!)
リノ「セシリア様、このベビー服をマキ様に」
リノはマキの懇願を楽しむように、ゆっくりと一着の服を差し出した。
セシリア「うむ、ありがとう。……うおっ!! これは!?」
セシリアが広げたその服に、一同が息を呑んだ。
それは、騎士団長としてのマキを象徴する「真紅」を基調としながら、リノの歪んだ趣味が炸裂した、とびっきり甘いデザイン。
何重にも重なるフリル、これでもかとあしらわれたレース、そして背中には大きなリボン。
かっこよさの欠片もなく、ただ「可愛い」という暴力だけを形にしたような、お人形さん専用の特注ベビー服だった。
マキ(な……な、な……っ。リノ、貴様……私を、これに着替えさせるというのか……っ!?)
絶望に染まるマキの前で、セシリアが「いざっ!」と服を広げ、再びマキへと迫る。
かつて王国の象徴として、その背中に何万もの兵士と国民の希望を背負ってきた真紅の隊服。マキがそれを纏い戦場を駆ける姿は、まさに燃え盛る「王国の盾」そのものであった。
だが、今。一歳半の肉体が包まれているのは、同じ真紅でも、あまりにも無力で、あまりにも愛くるしい「人形のドレス」だ。
マキ(な、な、な、何なのだこれは……!? 誰が着ると言うのだ!? 私か? 王国最強の騎士団長であるこの私が、フリルの中に埋もれろと言うのか!?)
リノの思念『何をおっしゃってるんですか、着るのはマキ様に決まってるじゃないですか〜。いつもは部屋用のベビー服ばかりだから、セシリア様たちが来られる時ぐらいはお出掛け用の服にしようと思いまして。ほら、とってもお似合いですよ?』
マキ(き、き、貴様ぁ! 着らんぞ! 絶対に着らんぞー!! 戻ったら真っ先に貴様を真っ二つにしてくれるわ!!!)
マキの必死の抵抗は、言葉を持たない赤ん坊の「あー、うー」という無垢な声に変換され、セシリアの真面目すぎる着付けによって無力化されていく。
マキ「……わ、私は騎士団長……絶対に……屈するもんか!」
セシリア「マキ様、本当に可愛らしい……。なぜこれほどまでに愛くるしいのか……っ!」
最初は鬼の形相で臨んでいたセシリアも、完成した「フリルのお人形・マキ」を前に、完全に頬を緩ませ、にやけ面を隠せなくなっていた。
だが、完成したマキをベッドに座らせた瞬間、セシリアの動きが止まった。
続いて抱っこしようとしたフルーレとシルフィも、何かに気づいたように一瞬、息を呑み、そして悲しげに目を伏せた。
「……マキ様」
フルーレの呟きは、先ほどまでの熱狂とは違う、深い敬意と哀惜を含んでいた。
セシリア「よし……そろそろ出仕の時間だ。我々は鍛錬に集中するぞ。どんな敵が来ても、このマキ様をお守りできるように!」
セシリアの言葉を合図に、三人はどこか引き締まった表情で部屋を後にした。
マキ(た、助かった……。だが、なんだ……あいつらの最後のあの顔は……)
嵐のような時間が去り、ぐったりとするマキに、リノが「お疲れ様」と声をかけることもなく、いつものように覆いかぶさった。
リノ「まあまあマキ様、やっと二人きりになれたのですから。まずはお洋服を全部ぬぎぬぎしましょうねー?」
マキ「うわあ! やめろ! リノ! 貴様あ〜〜っ!」
執拗な「お仕置き」によって再びはだかんぼうにされて横たわっていた時。ふと、傍らに脱ぎ捨てられたベビー服の襟元が目に入った。
マキ(ん……? なんだ、これは……)
そこには、針の穴を通すような緻密な刺繍で、王国騎士団の紋章と、マキの階級章が縫い付けられていた。
マキは悟った。
あの三人が抱っこをためらい、悲しげな顔をした理由を。
ベビー服という屈辱の象徴に、無理やり縫い付けられた「団長の証」。
それを見た彼女たちは、マキがどれほどの辱めに耐え、それでも騎士団長としての誇りを(形だけでも)守ろうとしているか(とリノが演出したか)を感じ取り、不用意に触れることを不敬だと感じたのだ。
マキ(リノ……お前、私の威厳を守るために、わざわざあんな細工を……?)
隣で静かに座っているリノを見つめる。
普段は変態のフリをして自分を弄んでいるが、本当は誰よりも自分の誇りを大切に思っているのではないか。そう問いかけようとした瞬間。
マキ「むぐうっ!?」
リノの唇が、マキの思考を強引に塞いだ。
リノ「だって、マキ様を可愛がるのは私の役目ですからね。他の女になんて、指一本触れさせたくありません。さあ……不完全燃焼だったマキ様を、たっぷり、たっぷり可愛がりまくってあげますよ!」
マキ「うわ、リノやめろ! あふうぅぅ〜!」
(前言撤回だ! 貴様はやっぱり、ただの独占欲の塊のド変態だーー!!)
マキの叫びは、再びリノの甘い吐息と、重なる唇の中に消えていった。




