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第101話:龍神のお仕事

第101話「龍神のお仕事」




泣きじゃくるエレンを、仲間たちが(彼女らなりの)優しさで慰める。しかし、その言葉のナイフはエレンの心をさらに細切れにしていった。


---


ハナ「エレン大丈夫だって。ボクの部隊なんか敵陣どころか、敵の本陣にまで入り込んで暗殺とか工作するんだよ? それに比べればマシだよ」


フルーレ「骨は間違いなくわたしが拾ってやるから、安心して逝くっすよ」


リノ「わたしは綺麗に埋葬してあげますねっ。てへっ♡」


シルフィ「ウフフ‥‥わたしはお花を添えてあげますよ‥‥ウフフ」


エレン「みんな、私のこと死ぬ前提で話してませんかーーーっ!?」


---


そんな「へっぽこ」を背景音に、セシリアは真剣な表情(※アルコール入り)で三英雄に向き直る。


セシリア「仕事の話だ。以前も話したが、シューベルト、お前には私の『最大の剣』になってもらう」


シューベルト「意味わかんねーよ。俺様を道具みたいに言うんじゃねえ」


カレンがシャンパンの泡を眺めながら補足する。


カレン「グラド王国は広大よ。アレクサンド騎士団も隊を分散して多面同時侵攻をする必要がある。だから、セシリア単独でも『独立した軍』として機能させなきゃいけないの」


セシリア「私の両脇を固める最強の矛がシューベルト、お前だ。そして、最強の防御力を持つショパン。お前が私の『最強の盾』となれ」


ショパン「……なるほど。貴女という暴走特急を制御しつつ、守りを固めろということですね。承知しました」


---


最後に、セシリアはメンデルを見て、静かに、しかし力強く微笑んだ。


セシリア「そして、これが一番重要だ。私の背中を預けるのはメンデル、お前だ。お前に、私の背中を守ってほしい」


メンデル「…………」


かつて、セシリアとの一騎打ちの際に、不可抗力とはいえ、その背を自らの手で斬ってしまった過去。


その傷跡を知る彼女から「背中を守れ」と全幅の信頼を告げられたのだ。メンデルはいつものチャラい仮面を維持しながらも、目頭が熱くなるのを堪えきれなかった。


メンデル「……セシリアちゃん……OK。任せといて!」


---



感動的な「ファミリー」の絆が完成したその瞬間。セシリアはドヤ顔で、歴史に残るであろう渾身のギャグを放った。


セシリア「メンデルよ、光栄に思えよ? 後衛こうえいだけにっ☆」


渾身の「テヘペロ」が炸裂する。

会場に流れる氷河期のような沈黙。


セシリアは隣のテーブルで絶望しているエレンをギロリと睨み、「面白かったろ?」と無言の覇気で圧をかける。


エレン「(死んだ魚の目で)……ワア、オモシロイデス……ハハ……」


セシリア「よし。……ところで、へっぽこエレン。お前の配置だが……『前衛』はお前だ(※シューベルトより前)」


マキ(……恐ろしい。一瞬で。一瞬にして全ての感動を台無しにしてしまう女だ……。そしてエレンは、もはや盾ですらなく『避雷針』扱いではないか……)


---


皇居内での「感動(笑)の祝宴」が幕を閉じても、クレイド中央広場は未だ熱狂の渦の中にあった。


---


バッハ「床の煉瓦まで全てデッキブラシで磨き上げるとは! ならず者と呼ばれていたはずなのに……素晴らしい仕事ではないか!」


頭領ドワルソン「滅相もございません。ラーズ王に恥をかかせるわけにはいきませぬゆえ」


ならず者たちは、今やカレンの手によって「イベント運営兼、清掃のエキスパート」へとジョブチェンジを遂げていた。


ラヴェル「ドワルソン、お主には福利厚生の素質が満ち溢れておる! 将軍ズ、唱和せよ!」


将軍ズ全員「「福利厚生万歳!! 福利厚生万歳!!」」


ジェームズ(人って、あんなに短期間で変われるものなんだな……)


屋台のたこ焼きやイカ焼きを頬張りながら、平和を噛み締めていた隊長・副師団長たち。だが、その平和を切り裂くように、「それ」は現れた。


---


井戸から這い出てきた上に画面からも這い出てきた幽霊のような足取りで、泣きじゃくりながら歩いてくるエレン。


ブラームス&ヴィヴァルディ「エレンちゃん、何があったんだい!?いったい 誰にやられた!?」


エレン「……セシリア様と……カレン様と……それと、ラーズ王……です」


全員((……相手が悪すぎる。事故どころか、もはや天災に遭ったのと同じだ。南無……))


震える手でエレンが差し出した一枚の紙。ジェームズがそれを受け取り、内容を確認する。


それはエレンが正式に特攻師団長に任命された辞令の紙だった。


ジェームズ「……ま、まあ、エレンちゃん。一応これ出世だから。泣かないで喜びなよ(事務員から師団長って何階級特進なんだ!?)。ん? なんだこれ、二枚目があるぞ?」


---


二枚目の紙を見た瞬間、ジェームズの絶叫が広場に響き渡った。


**『人事異動(エレン・アルコット特攻師団長配下への異動)』**


相談役:ハイドン

副師団長:ジェームズ

副師団長:エリーゼ


ジェームズ「うぎゃあ!? な、な、なんじゃこりゃあ!! 俺まで特攻師団かよ!?」


そこへ、魂が抜けた蝋人形のような形相でハイドンが現れる。


ハイドン「……ジェームズよ。……エリーゼちゃんよ。シャルロット陛下がお呼びだ。皇帝の間へ向かえ……。……死出の旅路の……打ち合わせだ……」


エリーゼ「ジェームズさん、楽しみですねっ!(アオジリアスを煽りながら)」


ジェームズ「(白目)……短い人生だった……。俺、実家に帰ったら、たこ焼き屋を継ぐつもりだったのに……」


---


事務員から「特攻隊長」へ昇格したエレンを筆頭に、苦労人のハイドン、巻き込まれたジェームズ、そして戦慄の歌姫エリーゼ。


アレクサンド騎士団史上、最も「不協和音」が大きく、そして最も「生存率が低そう」な師団が、ここに爆誕してしまった。


マキ(……これでエレンを前線に投げ込む体制が、盤石のものとなったな。カレン、お前の人選は常に合理的すぎて恐ろしいわ……)


---


皇帝の間。そこには、祝祭の喧騒から切り離された重厚な空気が流れていた。


シャルロット皇帝、ラーズ王、そして軍師カレン。三人の視線が、新たに「特攻師団」を支えることになった三名に注がれる。


---


シャルロット「三名は、基本的にはセシリアの弟子という立場は変わりません。ですが、龍神エレンを支えてあげてほしいのです」


ゼッターランドに伝わる古の文献によれば、龍王の役割は大陸の命運を左右するほど重要だという。


しかし、現状のエレンは「オムライスに泣き、タッパに食料を詰めるへっぽこな事務員」でしかない。


ジェームズ「それなら、もっと経験豊富な他の師団長を付けた方が良いのでは……」


カレン「あの子のメンタルが、自分より偉い人に囲まれて持つと思う?」


ハイドン「……(即答で)……確かに」


カレンの冷徹かつ正確な分析に、一同は沈黙する。エレンを支えられるのは、彼女の「不幸」を間近で見てきた気心の知れた者たちだけなのだ。


シャルロット「ハイドン、ジェームズ。貴方たちにはこれを授けます」


差し出されたのは、ゼッターランド帝国の国宝たる二振りの大剣グレートソード


漆黒の光を放つ「魔剣ブラック」がジェームズへ。


そして、焼きたて煉瓦のような赤熱の輝きを放つ「魔剣グラン」がハイドンへと手渡された。


シャルロット「既に渡してあるエリーゼの『魔剣ディセイブ』と共に、アレクサンド騎士団のために役立ててください。貴方たちだからこそ、頼めるのです」


皇帝自らの手を取り、満面の笑みで託された重責。三人はその重みに身を引き締めるが、それは同時に「エレンの不幸に一生付き合う」という呪いの契約でもあった。


---


一方、感動の授与式が行われている頃、大広場ではエレンが人生最大級のピンチに陥っていた。


小学生「あ、こいつエレンだ!!」


小学生「シューベルト様をたぶらかす泥棒猫!! 離れなさいよ!!」


エレン「うわぁあああん!! 私はただのレジ係ですーーーっ!!」


泣き叫ぶエレンを見かねて、新・上司となったシューベルトが助け舟を出す。


シューベルト「お、おい、テメエら……い、いや、君たち。あまり龍神野郎を、い、いじめないでやって……くれ(冷や汗)」


小学生連合「「キーッ!! あの女を庇うなんて! どんだけたぶらかしたのよ!! 増産よ! ブロマイド追加購入してオムライスコースで略奪よ!!」」


逆効果であった。シューベルトの不器用な優しさが、幼女たちの嫉妬の火に油を注ぎ、物販の売上だけがさらに爆伸びしていく。


---


その光景を、テーブルで頬杖をついて優雅に眺めていたセシリアが、深い憐れみの色を浮かべて呟いた。


セシリア「シューベルトよ。……ロリコンはロリコンで大変なんだな(慈悲の微笑み)」


シューベルト「だからロリコンじゃねえっつってんだろ!!!」


マキ(……恐ろしい。どんな感動的な辞令も、どんな過酷な修羅場も、必ず最後の一言で台無しにする。……この女の師匠の顔が見てみたいわ!!(※お前だ))


---


ジェームズの実家は貴族でありながら、たこ焼き屋だったという衝撃の事実、近いうちにジェームズ外伝で20話程度にまとめます(嘘)

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