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第99話:ゼッターランドの三英雄

第99話「ゼッターランドの三英雄」




大広場の演説を終え、熱狂の渦に包まれたまま皇居へと引き上げる一団。しかし、そこには戦場以上の「愛の暴風雨」が待ち構えていた。


---


特に地元・クレイド出身である三英雄への声援は、もはや耳を弄するほどの地響きとなっていた。


「メンデル様カッコいい〜♡」


「ショパン様ステキ〜♡」


だが、それを圧倒的な熱量で上回るのがシューベルトである。


手製のウチワ、特大パネル、さらには自作の旗が乱舞する様はトップアイドルの凱旋そのもの。


しかし、そのファン層には「ある偏り」があった。


ショパン「シューベルト、凄い人気だな……?(ただし平均年齢は一桁)」


メンデル「シューベルト君の人気には、流石にかなわないや(苦笑)」


そう、詰めかけた熱狂的な女性ファンは、小学生から幼稚園児までという、驚異の「ヤングすぎる」層に限定されていたのである。


シューベルト「…………(限りなく遠い、虚無の目)」


セシリア「シューベルトよ、手ぐらい振ってやらぬか? 健気なファンたちがかわいそうではないか(ニヤニヤ)」


殺気と覇気を剥き出しにし、般若のような顔で無愛想に手を振るシューベルト。


だが、幼きファンたちはその「魔王感」にすら「キャー! 痺れるー!♡」と絶叫する始末。


---


しかし、その熱狂は一瞬にして「憎悪」へと転換される。


幼き乙女たちの鋭い眼光は、シューベルトの「隣」を歩く「あの女」を逃さなかった。


「……あいつ、さっきシューベルト様と歩いてた奴だ!!」


「私も、オムライスのお店に一緒に入るのを見たわよ!!」


「何よあのブス許せない!」


「なんて女なの! 私たちのシューベルト様をたぶらかして!!」


エレン「ひいいっ!? な、な、何が起こってるんですかー!? 怖い! ランドセル背負った子たちの目が怖い!!」


先ほどまでの「龍神」という英雄扱いはどこへやら。


昼食を共にしたというだけで、エレンは帝都中の幼女から「魔王を誘惑する卑劣な女幹部」という極悪非道なレッテルを貼られてしまった。


---


その「不幸の絶頂」にいるエレンを、最後尾から眺める冷ややかな視線。


シルフィ「ウフフ……エレンさんはこうでなくちゃ……ウフフ」


リノ「やはり不幸なエレン様は輝いて見えますよねっ? てへっ♡」


マキ(アレクサンド騎士団……なんて恐ろしい集団なのだ。……責任者の顔が見てみたいぞ(鏡を見ろ!お前だ!)……)


子供たちからはヒーロー、幼女たちからは白馬の王子様。対して、ただ一緒にランチしただけで「帝都の幼女連合」を敵に回したエレン。


この不条理すぎる格差こそが、アレクサンド騎士団の平常運転であった。


--


皇居へと向かう帰路。そこには、数時間前までは影も形もなかった「異様な光景」が広がっていた。


---


大広場から少し離れた公園。そこでは、あの「ボコボコにされて改心した」はずの山賊やならず者たちが、軍隊顔負けの統率力でテキパキと働いていた。


長机とパイプ椅子が並べられ、馬車からは次々と荷物が降ろされる。簡易テントや屋台があっという間に立ち並ぶ様は、まさに戦国時代の「一夜城」のようであった。


カレン「ウフフ……用意は順調に進んでるかしら?」


山賊の頭領「はい! カレン様のご指示通り、完璧にこなしております! おい野郎共! 将軍ズの方々に手を煩わさせるんじゃねえぞ!!」


ならず者たちは、今やカレンの手先として、設営と運営のプロ集団へと変貌を遂げていた。


---


カレン「シューベルトさん、ショパンさん、メンデルさん。早くそれぞれの長机の椅子に座って! はい、グズグズしない!」


ショパン「な、ま、まさか……!?」


カレンは、彼らの人気をただの「汚名返上」で終わらせるつもりなど毛頭なかった。


引き換え所の看板には、無慈悲なシステムが記されている。


【三英雄・特設物販ブース】

グッズを3,000ゼッター以上購入につき、レシートと引き換えに『三英雄との握手券』1枚を進呈。


メンデル「カレンちゃんには、本当に驚かされてばかりだよね……(苦笑)」


シューベルト「ふざけるな! 俺様はこんなもの引き受けんぞ!!」


---


だが、拒絶しようとするシューベルトの横で、信じられない光景が繰り広げられていた。


シャルロット「さあ、次の方! アレクサンドとの同盟記念グッズ、ありがとうございます!」


なんと、ゼッターランド帝国の皇帝シャルロット自らが、特設テントでファンたちと笑顔で握手を交わしているではないか。


「シャルロット様のグッズ購入しました!」「頑張ってください!!」「めちゃめちゃ可愛いです!!」


シャルロット「シューベルト! 民を裏切るような真似は、わたくしが許しませんよ!!」


元・上司である皇帝にまで「プロ意識」を見せつけられ、シューベルトは逃げ場を完全に失った。


---


そして、この「イベント会場」に到着した瞬間、エレンの不幸は加速する。


グッズのラインナップには、なぜかシューベルトと並んで映るエレンの「隠し撮り風・嫉妬誘発ブロマイド」が紛れ込んでおり、それを目ざとく見つけた幼女ファンたちの殺気は限界突破。


エレン「ひいいいっ!? なんで私の写り込んだブロマイドが出回ってるんですか!? それにシャルロット陛下までアイドル活動してるーーーっ!?」


「平和」という名の「集金」と「嫉妬」の嵐。


カレンのプロデュースにより、帝都の夜は祝宴の前に「伝説のファンミーティング」の場へと変わり果てていた。


---


平和への祝祭が始まるはずの広場は、カレンの恐るべきプロデュースにより、欲望と憎悪が渦巻く「戦場」へと塗り替えられていた。


---


特設物販ブースの目玉商品は、ファンたちの心理を巧みに突いたものだった。


『シューベルトグッズ1点購入につき、秘蔵私生活ブロマイドを1枚プレゼント』


小遣いを握りしめたJS(女子小学生)やJC(女子中学生)がこぞって購入するが、袋を開けた彼女たちの悲鳴は、歓喜ではなく「怒号」に変わる。


なぜなら、どの写真にも「例のエレン」が絶妙な距離感で写り込んでいたからだ。


* 缶コーヒーを飲む背後で、ぼーっと立っているエレン。

* 朝ごはんを食べる横で、寝ぼけ眼でパンを齧るエレン。

* ホルモン屋で一生懸命肉を焼くエレン。

* そして、決定打となった「喫茶店で微笑むツーショット」。


実際には喫茶店のツーショットはセシリアなのだが、嫉妬に狂った幼女たちの目に「セシリアとエレンの個体差」など映らない。


「セシリア様がこんなにあざといわけがない! つまりこれはエレンの変装か、新手の誘惑術よ!!」

根拠のない断定により、全ての罪がエレンへと収束していく。


---


さらに、カレンの魔の手は止まらない。


* ブロマイド20枚:* シューベルト様と30分喫茶店コース

* ブロマイド50枚:* シューベルト様と60分オムライスコース

* ブロマイド70枚:* シューベルト様が90分ホルモンを焼いてくれるコース


「略奪愛」の心理を煽られた少女たちは、親を泣きつかせ、あるいは貯金を叩いてブロマイド収集に走り出す。


その横には、全く同じ条件で「エレングッズ高額購入によるエレン同伴コース」が並び、鼻息を荒くした大人男子や中二男子が列をなし始めていた。


---


シューベルト「……おい、龍神野郎! なんとか俺様を助けろ!!」


極限の精神状態に達したシューベルトが、助けを求めて隣のエレンに声をかける。


エレン「ひいいっ!! ひ、人前で私に話しかけてこないでくださいっ!! ほ、ほら!? また小学生達から刺すような視線で見られたじゃないですかっ!!」


シューベルト「テメエ、何冷たいこと言ってやがるんだ!?」


怒りでエレンの肩をガシッと掴むシューベルト。


「キャーーーッ!! 手を! シューベルト様が汚らわしい女の肩に手を置いたわ!!」


「追加購入よ!! 50枚追加してオムライスで奪い返すわよ!!」


レジの計算機が火を吹くほどの勢いで、グッズの売り上げが再加速する。


---


マキ(……まさに冷酷非情、鬼悪魔軍師ではないか。……上司の顔が見てみたいわ(※二回目)……)


マキは確信した。この軍師カレンこそが、ある意味で自分よりも、そしてセシリアよりも恐ろしい「怪物」であることを。


平和を維持するための軍資金は、今、帝都の幼女たちの涙と、男たちの下心、そして一人の犠牲者エレンの尊厳によって着々と積み上げられていくのであった。


---


カレンの恐るべき先読みと商才は、ついに「玩具業界」までも支配下に置いた。


ショパンずラボに徹底した市場調査を行わせ、ターゲット層に合わせた「神器」を市場に投下したのだ。


---


#### DX魔剣シリーズ、完売御礼


広場の特設ショップでは、カレンが事前に玩具メーカーへ発注していた「DXシリーズ」が飛ぶように売れていた。


* DX魔剣フレイム(電池別売り):小学生男子のバイブル。即完売。

* DX魔剣アクア / DX魔剣テスラ:*属性マニアに刺さり、こちらも完売。


最後まで残っていたのは、風の属性を持つ「DX魔剣ストーム」であった。しかし、ここで大人の「機転」が光る。


ブキャナン「君たち、シューベルトごっこをするなら、倒されるべき『悪役』も必要だと思わないかい? それにはこのストームが最適だよ」


数分後――。

子供「お前、ジャンケン負けたからモーツァルト役な!」


子供「えー、モーツァルト役なんか嫌だよー!」


子供「問答無用! 悪者モーツァルトめ、俺様の魔剣フレイムの威力をくらえーっ!」


その光景を物陰で見つめていたモーツァルト(本物)。


「……フッ、子供たちが僕の名を呼んでいる……」


微笑みながらも、頬を伝う一筋の涙。彼は不幸キャラランキング第4位。絶対王者エレンという「不幸の深淵」に挑むには、まだ自分の悲劇が「綺麗すぎる」ことを痛感していた。


---


三者三様の「ファン層」解剖


一方、握手会会場では、三英雄の人気が「ノルフェアの悲劇(フルーレ大敗)」のような偏りを見せることなく、奇跡的なバランスで三等分されていた。


しかし、その「質」はあまりにも極端だった。



*メンデル→ 女子高生・女子大生・20代前半 | 派手めなギャル層。メンデルの「優しさ」を「癒やし」として消費。


*ショパン→20代〜40代 | おしとやか系・セレブ系。「高貴な知性」に酔いしれる婦人層。


*シューベルト→5歳〜15歳(推定)幼稚園・小学生女子。もはや「初恋の相手」兼「ヒーロー」。


カレン(プロデューサー)からすれば、これほど全方位のターゲットをカバーできるユニットは他にない。


アレクサンドの軍資金は、今この瞬間も凄まじい勢いで積み上がっていた。


---


しかし、この「全世代のファン」が集結した状況は、エレンにとっては地獄以外の何物でもなかった。


女子高生ギャル「えー、何あのレジの女、メンデル様に近すぎない? ウケるんですけどー(殺意)」


セレブ夫人「……ショパン様の隣に座るには、あまりに品性も知性も足りませんわね(冷徹な眼光)」


幼女連合「シューベルト様とオムライス食べた泥棒猫ーーー!!(絶叫)」


エレン「ひいいいっ!! どの列を見ても、私の味方が一人もいないんですけど!? 誰か、誰か助けてくださーい!!」


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