第二十六話
胸を高鳴らせつつ、俺はステータス画面を表示させる。
荻野代一ogino yoiti
レベル:42(↑19)
スキル:【達人剣術】―〈幻影剣〉
■〈四連斬り〉⇒〈風神斬り〉
■〈大炎陣〉 ⇒〈炎戒波陣〉
■〈心眼〉 ⇒〈心眼・極〉
■〈斬波断〉 ⇒〈王咬閃〉
■〈叢雨突き〉⇒〈叢雨突き・改〉⇒〈乱れる稲妻〉
武器 :【ドラゴンエッジ】
防具 :【闇紅布のクロスアーマー】
装身具:【守護者のアミュレット】
:【知識の指輪】
:【神秘の道具袋】
【達人剣術】はそのままだが、レベルが上がりすぎて全ての技が進化している。
〈叢雨突き・改〉に至ってはまだ一度も使ってないのに、さらにその上の〈乱れる稲妻〉に進化してしまっている始末だ。
【達人剣術】になったことで修得できるようになったという、六つ目の技も習得している。
それから、俺の手に入れたあの剣は【ドラゴンエッジ】と言うらしい。それぞれの技の説明も含めて、説明を表示する。
【ドラゴンエッジ】
□ドラゴン系の魔物に追加ダメージを与える。絶対に壊れない。
〈風神斬り〉
■風を纏わせた刃で合計十二回攻撃する。
〈炎戒陀陣〉
■炎の大蛇を呼び出し、剣に纏わせて振るう。周囲は焦土と化す。
〈心眼・極〉
■敵の攻撃を見切る。だがより自然体でそれを行えるようになり、消費体力が極端に下がった。
〈王咬閃〉
■全能たる王にさえ傷を負わせる漆黒の斬撃を放つ。
〈乱れる稲妻〉
■雷を纏わせた剣で相手を突く。その速度たるや稲妻の如く、無数の突きの前に敵はなすすべをなくす。
〈幻影剣〉
■実体を持つ剣の幻影を作り出すことが出来る。作り出されたそれは、思うままに操ることが出来る。
何だかもう、急激に進化しすぎている気がする。【ドラゴンエッジ】は破壊不可ということだが、戦場においてそれは非常にありがたいことである。
それぞれの技に関しては、何だかスケールが大きすぎて〈風神斬り〉以外現実味を帯びていない。
これなら〈千年樹のスプリガン〉にも負けないんじゃないだろうか。おそらく族長は、〈深獄〉に潜ることで俺が強くなることを予知していたのかもしれない。
驚くべきことはそれだけではなかった。何とステータス画面がもう一つ表示されているのである。
雨笠理乃amagasa rino
レベル:38(↑16)
スキル:【白魔術】⇒【聖魔法】
■〈ヒール〉〈癒す光〉⇒〈パーフェクト・ヒール〉
■〈ディヴァージョン〉⇒〈覚醒〉
■〈ホワイト・エンド〉⇒〈白炎世界〉
■〈ヒーリング・バースト〉⇒〈救済の矢〉
――〈ホーリーエクスプロージョン〉
:【疾風の短剣術】―〈分身〉〈俊足〉〈麻痺斬り〉〈毒斬り〉〈崩突〉
武器 :【上質な鋼のダガー+5】
防具 :
装身具:【魔力の腕輪】
主人 :荻野代一
一目で気づいたが、これは理乃のステータスだ。どうして俺が彼女のステータスを見ることが出来るのか。
それは恐らく、理乃と俺の間に交わされた契約とやらが関係しているのだろう。
主人の横に俺の名前が書かれていた気がするが、きっと何かの見間違いだ。
良い機会なので、理乃のスキルや呪文、技についての説明も見ておく。
【聖魔法】
□白魔術の極致。神の恩恵を受けており、魔力量が倍増、魔力回復量も飛躍的に上昇する。
〈パーフェクト・ヒール〉
■〈ヒール〉と〈癒す光〉が合わさった呪文。全ての傷を癒し、疲労を完全に取り除く。
〈覚醒〉
■対象の身体能力を倍にする。痛みを完全に遮断する効果も併せ持つ。
〈白炎世界〉
■白の炎は終わりと始まりの象徴である。敵を焼き尽くすまで決して消えず、仲間を傷つけることはない。
〈救済の矢〉
■痛み、疲労、傷などを元に、全てを貫く矢を形成し、発射する。
〈ホーリーエクスプロージョン〉
■爆発する光の玉を放つ。
【疾風の短剣術】
□移動速度上昇の効果を持つ。五種の技を覚える。
〈分身〉
■残像を作り出し、敵の攻撃をかわす。
〈俊足〉
■三倍の速度で移動できる。
〈麻痺斬り〉
■斬った敵を麻痺させる。
〈毒斬り〉
■斬った敵に毒を喰らわせる。
〈崩突〉
■最高速度で敵を穿つ高威力技。過ぎたる破壊力は自らの崩壊をももたらす。
俺が言えた事ではないが、理乃の能力はかなり強力である。何より【白魔術】より派生した【聖魔法】はとにかく使い勝手がよさそうだ。
クリスタルを破壊したのは〈ホーリーエクスプロージョン〉なのだろうが、かなり強力な呪文だった。
〈覚醒〉何て、サポート役としては最高レベルの呪文である。さらに理乃は【疾風の短剣術】で接近戦もこなせるようになっていて、それらのサポート呪文を活用すれば一人でも強敵と渡り合えそうだ。
一貫して攻撃一筋の技しか持たない俺からすれば、うらやましい限りである。
だが彼女は俺の仲間で、俺と共に戦ってくれる頼もしい仲間である。同時に守るべき対象であるのだが、今の理乃だとよほどのことが無い限り苦戦をすることはないだろう。
ステータスには〈聖霊〉に関する情報は一切載せられていないが、今の彼女の存在はそれそのものであり、それを含めて見ると彼女の戦闘力は恐ろしい限りである。
ステータス確認を終えた俺は、覚えていた技やレベルのことなどを理乃に話し、そして彼女のステータスを見られるようになっていたということを彼女に告げた。
すると理乃は、嬉しそうに微笑んだ。
「……私は私の全てを代一に捧げたい……だからそれでいい」
とは彼女の言葉である。
何だか〈聖霊〉となってからの彼女は俺に対する好意も一回り大きくなっているようで、その言葉の節々から俺への思いを感じ取ることが出来る。
だが少し積極的過ぎる気もする。こっちから迫るのはいいのだが、向こうから迫られると少し萎縮してしまうのが俺なのである。
中間地点までの道中、魔物はいっさい襲ってこなかった。最初のときのように俺たちの隙をうかがっているのではない。
文字通り、圧倒的な実力差があるために、戦う前から自らの敗北を悟っているのである。
知能の低い魔物なら構わず襲ってくるのだろうが、〈深獄〉最下層の魔物たちはかなり賢いらしく、まあそのおかげで無駄な戦闘をすることなく中間地点に到達することが出来た。
デルマが待っているかと思ったのだが、そこに彼の姿は無かった。仕方が無いので少し待つことにする。
ここまでは岩につけた傷を頼りに戻ってくることが出来たが、ここからは明かりが無いし、道順を知っているのはデルマだけなので進むことは出来ない。
「……遅いね」
理乃が呟く。
「うん。何かあったのかもしれない」
俺たち二人はじっとしていることに不安を感じ始めていた。ここで立ち止まっている間、もしかしたらデルマの身に何かが起きているかもしれない。
その時だった。思わずバランスを崩してしまうほどの激しい揺れが起こり、あちこちで岩の崩れる音がした。
「上で何かあったんだ……」
俺は直感的にそう確信した。俺の勘はかなりの確立で当たる。だから、これ以上立ち止まっているわけにはいかなかった。
「理乃、絶対に俺から離れないで」
「うん、わかった」
幾ら理乃が強くなったとは言え、〈深獄〉で迷子になれば簡単には出てくることが出来ないだろう。
それは俺だって同じで、正しい道順を記憶しているとはそういうわけですらないのだが、俺には類まれなる幸運が備わっている。
適当に選んだ道が、実は正しい道だった。そんなことは俺にとって日常茶飯事である。
ゆえに俺は地図要らず。己の直感だけで前へと進むことが出来る。
はぐれないよう、理乃の手をしっかりと握る。そして急ぎ足で先へと歩き出す。
――一時間後、俺たちは無事ノームの村に到着した。だがそこにあったのは、静けさと優雅さをたたえた石の町ではなくて、いたるところに巨大な木の根が張り巡らされた、以前とは似ても似つかない殺伐とした光景だった。




