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第十四話


 見覚えのある魔物の姿を発見した。

 歪な球状の体がゼリーのようにふるふると震えている。


「あの魔物は森でも見たことがあるよ」

「ああ、ありゃ〈スライム〉だ。気を抜かなきゃ簡単に勝てる相手だが……」

「何かあるの……?」

「滅多にないことだがな、あいつらは『合体』するんだ。たまにいるんだよ、二体以上で合体し、より強い固体へと進化する魔物がな」


 その時、俺は枝と絡ませあい、一つの木へと進化したスプリガンのことを思い出した。


「スプリガンと同じか。あんまり大きくなられると厄介だね」

「知ってんのか」

「村で一度倒したからね」

「おいおいマジかよ、あれは俺でも苦戦するぞ……」

「思うに、愛の力だよ」

「なんだそりゃ……」


 あの時は理乃を助けようと必死だったからな。そのおかげで急激なレベルアップを果たすことが出来たんだけど、もし理乃が危険に晒されている状況でなければ俺は負けていたかもしれない。


「……増える前に倒す」

 

 理乃言葉に俺とデルマは頷く。彼女の【白魔術】があれば疲労は回復できるし、怪我を治すこともできる。

 だが魔法系のスキルと言うのは、それを扱うのに魔力を消費するらしく、魔力が低下すると精神力も激減してしまい、意識を保つことさえ難しくなるのだと言う。

 それでも気力に任せて魔力を使おうとすれば、今度は生命力などのエネルギーが魔力に変換されるらしい。理乃にはそんな危険なことさせたくないから、彼女の回復は奥の手として取っておくつもりだった。

 そのことは事前に理乃にも話してある。もとより、無駄に怪我をするつもりなどは毛頭ないが。


「ならさくっと殺しちまうか」


 デルマがいい、前へである。

 彼のたいまつの光がスライムを照らす。そしてその背後に蠢く図う十対のスライムの姿も……。


「ねえデルマ、これって……」

「ああ、とんでもなく不味いな」


 やれやれだと言わんばかりにデルマはそうはき落として、たいまつをその場に突き刺した。


「戦闘だ……来るぞ」


 俺と理乃はそれぞれ武器を構える。


 スライムはぴょんぴょんと飛び跳ねてこちらに向かってくる。その途中で、二匹のスライムが合体した。また別のスライムが合体し、それが複数回連鎖した。より巨大になったスライムが俺たちの前に現れる。その大きさたるや、以前に見た合体スプリガン以上である。


 デルマなどは、それと比べると本当に小さく見える。俺の二倍以上の大きさなのだから、それも当然だろう。

 それにしても、スライムは剣だと倒しにくいかもしれない。あのゼリー状の身体は物理攻撃を吸収してしまうのだから。


「……代一……!」

「どうした理乃?」

「新しい呪文を覚えた……っ」

 

 ステータスを確認したらしい理乃が俺に言う。

 どうやらさきほどのグリルスとの戦いでレベルアップしていたらしい。となると俺のレベルも上昇しているのだろう。


 スライムは巨大になった分のろのろとした動きでこちらに向かってくる。まだ余裕はありそうだ。

 俺は即座にステータスを表示させる。


 荻野代一ogino yoiti

 レベル:15(↑2)

 スキル:【見習い剣術】―〈二連斬り〉〈回転斬り〉〈見切り〉〈大岩斬り〉〈叢雨突き〉

 武器 :【上質な鋼のロングソード+5】

 防具 :【闇紅布のクロスアーマー】

    :【黒鉄のカイトシールド】

 装身具:【守護者のアミュレット】

    :【知識の指輪】


 レベルが二つ上昇し、新たな技〈叢雨突き〉を覚えている。一体どんな技なのだろう。これまでの斬る技とは違い、突く技であることは名前からわかるのだが。


 〈叢雨突き〉

  ■無数の突きを繰り出す単純な攻撃。

  

 説明にはそうとだけ書かれている。無数の突きか……。それがどれくらいの量なのかは、実際に使ってみないとわからないだろうな。

 だが残念ながら、スライムとは相性が悪そうな技である。スライムのゼリー状の身体は剣で突いても何らダメージを受けない。


「代一……!」

「理乃。レベルが二つ上がってたけど、覚えてる技は物理技……。スライムには余り効果がなさそうだよ」

「安心して……。あのスライムは私が倒すから……っ!」

「理乃、まさか……」

「うん、やっと攻撃呪文を覚えたの……!!」


 目を輝かせて言う理乃。彼女は前々から攻撃系の呪文を覚えいたいといっていた。だがそれは、回復系の呪文がほとんどである【白魔術】が彼女のスキルであるがため、難しいようにも思えたのだが。


「そうか。理乃、頼りにしてるよ!」

「うん……!! だ、だけどこの呪文は発動までに少し時間が掛かるみたい。だから、それまであのスライムを食い止めておいてくれる?」

「ああ任せろ! 理乃には指一本触れさせないよ」


 スライムに指があるかどうかは不明だが、俺は絶対の自信を持って彼女にそう言った。

 レベルアップのおかげか体が軽い。物理技は確かに効果が薄いだろうが、それでもスライムの進行を食い止めるくらいは出来るだろう。


「デルマ、止めは理乃がさすから。それまで二人でスライムの動きを食い止めるぞ!!」

「へっ、任せろ! こんなデカぶつに好きになんてさせるかよ!」


 俺とデルマはそれぞれ武器を構えてスライムに肉薄する。こうして〈合体スライム〉戦が始まったのだった。

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