↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染を守りたくてダークプリーストを選んだのに、彼女はもう寝取られていた  作者: 工程能力1.33


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/38

第35話 無属性の魔導書

「――これ、無属性の魔導書ね」


 あの洞窟から持ち帰った戦利品の中に、優花はそれを見つけていた。革張りの古びた本には、見慣れない魔法陣が描かれている。

 ページをめくると、その内容は自然と頭に入ってきた。転移の際に与えられた言語読解能力の賜物。あるいは、魔法使いスキルのおかげ。

 そのどちらかなのかはわからなかったが、内容を理解できるということだけははっきりとわかった。


「で、この魔導書の所有権は、私たちに有るわけだけど――」

「倒した側に所有権がある、ってやつか。売るのか?」


 魔導書は高価なものである。

 印刷技術の無いこの世界では、書籍は全て高価なものである。

 さらに、そこに専門性が加わった魔導書となれば、庶民が手を出せるような価格ではない。

 売れれば、当面の生活には困らなくなる。しかし、優花は売るという選択をしない。


「そう。せっかくだから、二人で覚えましょう」


 馨は頷いた。ちょうど、二人とも新しい属性を身につけたいと思っていたところだった。

 が、すぐに馨の表情が曇る。


「あー」

「どうしたの?」

「いやー、人を殺したのって二回目なんだけど、所有物を自分のものにしても罪悪感がないなーって思って」

「郷に入っては郷に従え。この世界の価値観に慣れたってことでしょ。日本の感覚を持ったままだと疲弊するだけよ」

「あー、それはわかる。法律とかがあんまりなくて、強ければいいみたいな感じ。だから、倒した相手のものは自分のものなんだよね」


 と陽菜。


「ガルドヴェインの強い奴が正しいってのも、あながち間違いじゃないってことか」

「まあ、それだけだと社会が成り立たないから、法律ではなく、宗教的価値観で縛りましょうってことなんでしょうけど。もっとも、この世界には、本当に神様がいるんだけどね」


 お前のものは俺のもの。俺のものも俺のものという、どこかのガキ大将みたいな理論が、そこそこまかり通ることに、若干の違和感のあった馨であったが、優花に言われた通り、そういうものだと納得することにした。


「こいつを俺たちのものにするのは納得した。これから無属性の取得のため、練習するんだけど、魔法使いのレベルも上がるといいな」

「どうかしらね。私も馨もこの前レベルが上がったばかりでしょ。陽菜がスキルを取得する方が早かったりしてね」


 実は、この時すでに、優花はモンスターとしての総合レベルが、7にまで達していた。前回の依頼で、高レベルのダークエルフを倒したことで、経験値が貯まったのである。これで、人間に擬態した状態でも、戦士レベル5、魔法使いレベル4相当の力を発揮できるようになっている。

 しかし、優花には不満があった。


「――でも、プリーストのレベルは、全然上がらないのよね」


 優花が、口吻を尖らせて言った。


「陽菜や馨に、そっちは任せきりだから、かしら」


 実際、パーティーの中で回復や支援の役割は、専ら陽菜が担うようになっていた。優花自身は、前衛としての戦闘に力を注いでいる。役割分担が進んだ結果、彼女のプリーストとしての成長だけが、緩やかに足踏みしているようだった。


「――それより、無属性の練習をしよう」


 馨が話を戻すと、優花も頷いた。


 二人は、西の森の外れで、魔道書を片手に、地道な特訓を始めた。


        *


「――ロック、アンロック、この辺は簡単ね」


 優花が、手近な木箱に施錠と解錠を繰り返しながら言った。馨も、マジックシールドやディスペルといった基礎を、順調に習得していく。


「――ちょっと、驚いたんだけど」


 優花が、ふと呟いた。


「新しく覚えた属性でも、ちゃんと自分の魔法使いレベル分の呪文が、最初から使えるのね」

「言われてみれば、そうだな」


 馨も、少し複雑な気分になった。属性を新しく覚えても、一から積み上げ直す必要はなく、既に到達している魔法使いレベルに応じた呪文が、すぐさま使用可能になる。


「――なんか、ちょっとチートっぽいな、これ」


 馨が苦笑すると、優花もくすりと笑った。


「まあ、これくらいの役得は、許してもらいましょ」


        *


 特訓を続けていたその時、不意に、羽音のような音が響いてきた。

 サーチを使っていなかったことで、羽音が聞こえる距離までの接近を許してしまっていた。


「――来る」


 木々の合間から、巨大な蜂の群れ――ジャイアントホーネットが、次々と姿を現した。一体一体の巣穴を刺激してしまったのか、群れをなして、こちらへと殺到してくる。


「数が多いな」

「ちょうどいい、無属性を試してみるわ」


 優花は、覚えたばかりの呪文を意識に呼び起こした。


【マジックストーム】


 無属性のエネルギーが、蜂の群れを飲み込むように広がっていく。

 次々と、ジャイアントホーネットが力なく地面へと落ちていった。単体のレベルは4程度、群れとはいえ、既にレベルを重ねた馨たちの敵ではなかった。

 マジックストームで討ちもらしたジャイアントホーネットを、馨と陽菜のゴッドフィストで撃ち落とす。


「――やった、な」


 馨が息をついた。


「新しい魔法、いきなり実戦投入できたわね」


 優花が、満足げに微笑んだ。

 だが、この森での平穏は、ここまでだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。